MACDのオススメパラメーターってある?
MACDに限らず多くのテクニカル指標の最適パラメーター探しはバカバカしいからやめておきなさい!
テクニカル指標(インジケーター)の最適パラメーター探しのバカらしさについて解説します。
FX取引を始めて様々なテクニカル指標を使い始めると、その次の段階としてパラメーターを変更したくなります。これはFX中級者〜のあるあるの一つです。
今回は、そんな「最適パラメーター探し」が不毛であることの意味を解説します。
MACDのパラメーター(初期設定値)
ご存知の通り、MACDのパラメーター初期値は以下の通り。
MACDのパラメーター初期値
- ①短期EMA:12
- ②長期EMA:26
- ③シグナル:9
- ④適用価格:Close(終値)
先に結論から言えば、MACDはこの初期値で使用することが最も有効性が高いです。
なぜ初期値が最も有効性が高いといえるのか?
実需と仮需
大前提として、FX相場の本質は「実需」が作り「仮需(=投機)」がそれを増幅させています。
FX相場の本質は「実需」が作り「仮需(=投機)」がそれを増幅させる
まず、IMM通貨先物ポジションについて知らない人向けに、ざっくりと解説しますね。
そもそもFX相場は実需と仮需(=投機)の2つから構成されています。
実需と仮需のバランス
- 「実需」…貿易・両替 →20%
- 「仮需」…投機 →80%
為替相場を形成するのは「実需」ではなく「投機=仮需」です。実需によって生み出された相場を投機取引が増幅させているのがFX相場の本質。つまり、投機筋(機関投資家やヘッジファンド)の動向を知ることで、ざっくりとした為替動向を捉えることが可能になります。そのための指標の一つとしてIMM通貨先物ポジションがあります。
「仮需(投機)」の原動力は「人=投資家」です。つまり大多数の投資家の思惑によって為替レートの動きが増幅されるということ。
為替相場の動きを増大させているのは大衆心理(マーケット参加者)であるからこそ、大衆心理がどのように相場を捉えているかが極めて重要になるわけです(大衆心理に同調して勝てるかどうかは別の話)。
ここから言えることは、多くの人が見ているテクニカル指標のポイントや、意識している節目に、相場がそれなりに影響を受けるということ。
例えば…
- 200日移動平均線へのタッチやクロス
- ボリンジャーバンドのσタッチ
- 一目均衡表の三役好転・三役逆転
- 三尊天井・逆三尊
- ダイバージェンス(RSI・MACD)
- フィボナッチ
- サポートライン・レジスタンスライン付近
- 00(ダブルオー)や000(トリプルオー)ライン等のキリ番付近
これらの節目やポイントは多くの投資家(機関投資家・個人投資家)が意識しており、そのポイントを抜けるのか反発するのかなどで相場が動くことがあります。
重要な点は、上に挙げたテクニカル指標のパラメーターは最もオーソドックスな数値で設定されているということ。なぜなら自分だけ別の数値(パラメーター)を設定してしまうと「大衆」が意識するポイントとずれてしまうから。
つまり大衆(マーケット参加者)の心理を知るためには『大衆に右へ倣(なら)え』することが欠かせないのですね。
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MACDの最適パラメーター探しは、なぜバカらしいのか?
話をMACDに戻します。
MACDが示唆する相場転換ポイントはいくつかありますよね。
- 交差(クロスオーバー)戦略
- ヒストグラム反転戦略
- ゼロクロス戦略
これらの明確な注目点は多くのトレーダーが意識するポイントです。多くのトレーダーが同じパラメーターを設定しているからこそ意味を持ちます。
もしもあなただけ別のパラメーター設定をしていたら、大衆とことなるポイントが表示されることになりますよね。
それで勝てるならば良いですが、まずは大衆と同調し同じポイントを意識することから始めるべきだと思いませんか?
その上で大衆心理に便乗するのか、それとも大衆心理を逆手にとってポジションの刈り取りを狙うのか(機関投資家がよく使う戦略)を戦略として考えればよいのです。
そのためには、まず大衆心理(マーケット参加者)を把握する必要があります。
つまり、多くの投資家と同じパラメーター設定でテクニカル指標を使うということ。
自分だけの最適パラメーターを探すことは、大衆心理(マーケット参加者)を無視することを意味します。それでも良い、と思うのであればそれは個人の自由です。
ただ、トレードは多くのマーケット参加者(大衆心理)が相手です。それらを無視して戦えると本気で思えますか?
MACDの最適パラメーター探しがバカらしいと言える理由はここにあります。
MACDの最適パラメーターを探すことは、大衆心理(マーケット参加者)を無視した行為じゃよ。
その点をわかった上で最適解を探すのであればそれは自由じゃ。
しかしそれで勝てるほど相場は甘くないぞ。
カーブフィッティングにご注意
最適パラメーター探しにはもう一つ落とし穴があります。
検証ツールやEA(自動売買)などでありがちですが、パラメーターをいじっていると検証成績が良くなるケースが往々にしてあります。
これがカーブフィッティングと呼ばれるものです。
EA製作者が陥る「カーブフィッティングの罠」とは?
EAを自作する場合、大抵は以下の手順(いわゆるPDCA)でおこないます。
- ロジックを考える(Plan=計画)
- ロジックをシステム化する(Do=実行)
- バックテストをしてみる(Check=評価)
- パラメーターを修正する(Action=改善)
- 再度バックテストをする(Check=評価)
- 以下PDCAの繰り返し…
ロジックを考案し、EAを組み上げたら、バックテストをおこないます。その際にヒストリカルデータ(過去の相場の4本値)を用意します。何年分を用意するか?については製作者の考え次第です。各EAの特徴によっても必要とされるヒストリカルデータの量は異なります。
初回のバックテストでいきなり素晴らしい成績が出ることは稀です(但しナンピン系EAは容易に右肩上がりの成績を出すことができます)。ドローダウンが大きかったり、左肩下がりのグラフになってしまうなど成績が振るわなければ、EAのパラメーターを調整します。そして再度バックテスト。その結果を見て、パラメーターを調整し、バックテスト。また結果を見てパラメーターを修正し…
この繰り返しです。そうこうしているうちに素晴らしい成績が出るときがあります。これが過剰最適化と呼ばれるカーブフィッティング。
10年以上のヒストリカルデータを使って右肩上がりのEAを完成させたときは、「俺って天才?ついに聖杯を完成させたかも!?」などと勘違いしてしまいます。これがEA自作を始めたばかりのユーザーが陥る「カーブフィッティングの罠」です。
EA販売者の「ジレンマ」
さて、EA販売者が「カーブフィッティングの罠」に陥ってしまう原因は、EA制作におけるジレンマにあると考えています。
「長期のバックテストに耐えうるEAや、突出したバックテスト結果を出すEAは、過度にカーブフィッティングされてしまい実践でほとんど使えない」とわかっているのに、「バックテスト期間の短いEAや平凡な成績のEAは消費者に受け入れられにくい=売れない」という現実に板挟みされること、これがEA販売者の抱えるジレンマです。
ユーザーは、長期的に機能する(と思われる)EAや、派手な成績(「数年で1億円達成!」など)を求めがちです。過去1年(これからの1年)で利益を出せるEAよりも過去10年(≒今後10年)で利益を出し続けているEAのほうが優れていると考える傾向にあります(極めて浅はかですが)。販売者はそのニーズに応えようと5年〜10年のバックテストに耐えうる(耐えているように見える)EAを作ろうとします。
過去1年のデータで利益を出すEAを作るよりも、過去10年のデータで利益を出すEAを作るほうが大変です。10年間の相場変動に対応するロジックを組む必要があるからです。
10年前の相場と1年前の相場(さらには未来の相場)は、全く別物です。それらすべての相場に対応できるロジックを組んで”利益を出そう”とすれば、EAはどんどん複雑化します(パラメーターの多重化)。複雑化したEAはカーブフィッティングの罠に陥りやすくなります。
一方、直近の相場(過去半年〜1年程度)に最適化したEAは、フォワードにおいても比較的機能しやすい傾向にあります。しかし5年〜10年のヒストリカルデータで走らせてみると破綻してしまう可能性が高くなります。5年前、10年前の相場と今の相場は全く異なるからです。
直近の相場(過去半年〜1年程度)に最適化したEAは、ユーザーからすれば賞味期限も短く感じられてしまい、受け入れられにくくなります。
同様に、売るために”突出した成績”を見せなければ消費者にアピールできない…というプレッシャーから、パラメーターをいじって直近(過去1〜2年)や通年(5年〜10年)のバックテスト結果を派手に改ざんすることも行われます。もちろん、フォワードで通用するかどうかは不明です(というか、フォワードなどどうでもいいと考えている)。むしろ通用しない可能性のほうが高いわけです。
これがEA販売者のジレンマです。結局、消費者のニーズに応えるべくバックテストで右肩上がりの成績や突出した成績を出す(カーブフィッティングした)EAを製品としてリリースせざるを得ないのです。たとえフォワード成績がボロボロでも、です。
なかには意図的にカーブフィッティングさせたEAを販売する悪質な業者も存在します。ドローダウンに陥る箇所のヒストリカルデータを部分的に削除することで、バックテストデータ(Strategy Tester Report)を優秀に見せるという悪質手口もよく使われます。
これまでに多くの市販EAが、フォワード(実践)において右肩下がりの資産目減りや壊滅的なドローダウンによってゴミ箱行きする様を見てきました。その多くは輝かしいバックテストデータを持つものばかりでした。
結局、固定化したパラメーターでEAを長期的に機能させることは難しいのです(ナンピン系は別です)。常にそのときの相場に最適化させたパラメーターの調整が求められます。しかしそれをできるのはEA製作者だけです。
誰もが過剰なカーブフィッティングに陥る可能性を持っている
変化する相場に応じてパラメーターを調整する。直近の相場に最適化することで、今の相場で勝てるようにパラメターを調整する。実はこれも「直近相場にカーブフィッティングさせている」ことになります。
つまり長期のカーブフィッティングよりも短期のカーブフィッティングのほうが効果が認められる、ということです。レンジ相場が続くならば、レンジ相場に対応したEA(ロジック)を使い続けることで利益を出すことができます。上昇トレンドが続くならば、押し目を拾うようなロジックを使い続けることで、誰でも簡単に利益を積み上げられます。これらも広義ではカーブフィッティングといえなくもありません。
過去は無視できません。過去を無視すれば何を根拠にトレードすればよいのかその指標を失うことになります。過去から一定の傾向を分析して、仕掛けの根拠を導き出すことはトレードに不可欠です。それが優位性に繋がります。しかし過去データを元にした優位性(エッジ)を求めすぎるとカーブフィッティングの罠に陥ってしまいます。
硬直したトレードでは長期的に生き残ることは困難です。相場は常に変化しています。その変化応じて柔軟にトレードを変化させる適応能力が求められているのです。
カーブフィッティングはなにもEAだけの問題ではありません。テクニカル指標においても十分に起こりうる罠です。
MACDのパラメーターは初期値で使おう!
まずはMACDのパラメーターは初期値のまま使うことをおすすめします。
MACDのパラメーター初期値
- ①短期EMA:12
- ②長期EMA:26
- ③シグナル:9
- ④適用価格:Close(終値)
その上で、時間足や通貨ペアによって独自のパラメーターを設定したいならば、それは個人の自由です。あなたが相場の天才ならばそれもありでしょう。
MACDに限らず、すべてのテクニカル指標はまず初期値で使い、多くのトレーダーが意識するポイントに合わせることから始めるのがベターです。
奇をてらったパラメーター値にする意味があるのかどうか、今一度考えてみてください。
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