ボリンジャーバンド|MACD|先行指標と遅行指標
ボリンジャーバンドは、FXトレーダーにとって極めて重要なシグナルを提供してくれます。とはいえボリバンは「遅行指標」です。シグナルがやや遅れてしまうデメリットがあります。
そこで「先行指標」であるMACDと組み合わせることで、市場の変動(ボラティリティ)と勢い(トレンド)の両方をより精度高く洞察することを可能にします。
先行指標
先行指標は、将来の値動きにに対して先行して動くよう設計されたテクニカル指標です。トレンド転換が発生する際に、実際のそれよりも早めにシグナルを発する点が特徴的です。先行指標の代表的なものはRSIやストキャスティクスなどのオシレーター系です。
遅行指標
一方、遅行指標はレートの動きに追随するように変化するテクニカル指標です。何かが発生した後にしかシグナルを発しないため先行指標に比べて正確ですが、往々にして乗り遅れが生じてしまいます。トレンド系テクニカル指標の多くが遅行指標です。
ボリンジャーバンド|MACD|組み合わせ|メリット
ボリンジャーバンドはボラティリティの周期的な変動を観察することを可能にします。MACDはトレンドとモメンタム(=レートの勢い)を示す指標です。
この2つの指標を組み合わせることで、トレンドの方向性と強さ、そしてボラティリティの3つを同時に測定可能になります。
ボリンジャーバンドとMACDを組み合わせることで得られる3つの情報
- ボラティリティ
- トレンドの方向
- レートの強さ・勢い
トレンドが勢いを増しているのか?それとも減速しているのか?ブレイクアウトの可能性はどれほどあるのか?などを分析できます。
ボリンジャーバンドにMACDを組み合わせた代表的な手法は2つあります。
ボリンジャーバンド|MACD|2つの手法
- ブレイクアウト戦略(反転戦略)
- 押し目買い・戻り売り戦略
どちらもデイトレードですね。
ボリンジャーバンド|MACD|ブレイクアウト戦略
まずはブレイクアウト手法を解説します。手順は以下の通り。
- MACDヒストグラムのダイバージェンス出現を待つ
- MACDとSignalラインの交差を確認
- ボリバン20SMAのブレイクまたはトレンドラインのブレイクでENTRY
トレンドが終焉しそこから反転ブレイクするタイミングを狙い撃ちする手法です。
それぞれのパラメーターはデフォルトでOK。
- ボリンジャーバンド(期間20:偏差2)
- MACD(12:26:9)
MACDはMT4標準のものではなく、『Good_Macd.mq4』を使います。『Good_Macd.mq4』はMACDとSignalの「差」をヒストグラム化して表示してくれる便利なインジケーターです。
実際のMT4チャートで解説します。
サブウィンドウに表示されているインジケーターが『Good_Macd.mq4』。
最初に確認するのはMACDヒストグラムのダイバージェンスです。上のチャート図ではレートは切り下がっているのに、MACDのヒストグラムが切り上がっている箇所があります。これがダイバージェンス。
次に、MACDとSignalラインの交差を確認します。ちょうどダイバージェンス後に交差が確認できました。
これで買いENTRYの準備完了です。
実際の買いENTRYタイミングは以下の2つ。
- ボリバン20SMAのブレイクでENTRY
- トレンドラインのブレイクでENTRY
まずはボリバンのセンターラインである20SMA(20単純移動平均線)をレートがブレイクしたタイミングで買いENTRYパターン(↑)。
次にトレンドラインをブレイクしたタイミングでの買いENTRYパターンがこちら(↑)。
買いENTRYパターンはどちらでもOKですが、両方のサインが出ればより強力な反転示唆となり、精度が高まります。
MACDヒストグラムのダイバージェンスによって下落モメンタムの減速を確認し、その後の反転ブレイクで仕掛けるというシンプルな手法です。
今度は売りのパターンをチェックしてみます。
まず、MACDのダイバージェンスとラインの交差を確認します。これで売りの準備が整いました。次にボリバンの20SMAのブレイクでENTRYです。上のチャート図ではMACDのライン交差より先に20SMAブレイクしていますが、その場合はライン交差で即ENTRYとなります。
下のチャート図ではトレンドラインブレイクで仕掛けています。
トレンドラインブレイクと20SMAブレイク、そしてMACDのライン交差がほぼ同じタイミングで発生していますね。非常に強い反転シグナルと捉えることができます。
この手法のカギはMACDヒストグラムのダイバージェンスじゃよ。
必ずダイバージェンスを確認することが成功のポイントじゃ。
ボリンジャーバンド|MACD|押し目・戻り戦略
次に解説するのは、ボリバンとMACDを使った押し目買い・戻り売り手法です。手順は以下の通り。
買いENTRY
- MACDラインとシグナルラインの両方がゼロレベルより上に位置する
- MACDラインとシグナルラインがゴールデンクロス(GC)を確認
- ボリバン20SMA付近からの反発で買いENTRY
売りENTRY
- MACDラインとシグナルラインの両方がゼロレベルより下に位置する
- MACDラインとシグナルラインがデッドクロス(DC)を確認
- ボリバン20SMA付近からの反発で売りENTRY
MT4チャートで確認します。まずは「買いENTRY」。
上のチャート図ではMACDラインとシグナルラインの両方がゼロレベルより上に位置しています。MACDのゴールデンクロスを確認し、レートが20SMA近くから反発するタイミングで買いENTRYとなります。
次は「売りENTRY」です。
上のチャート図ではMACDラインとシグナルラインの両方がゼロレベルより下に位置していますね。MACDのデッドクロス(=DC)を確認し、レートが20SMA近くから反発するタイミングで売りENTRYです。
2回目の売りはすぐに戻されてしまいましたが、それ以外は比較的成功しています。
下限バンド(-2σ)近くでのENTRYは避けることじゃ。
できるだけ20SMA近くからの反発(反転)であることが利幅確保のポイントじゃよ。
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ボリンジャーバンド|MACD|書籍
最後に、ボリンジャーバンドとMACDを組み合わせた手法に特化した書籍を紹介します。
『ボリンジャーバンドとMACDによるデイトレード ──世界一シンプルな売買戦略』
『ボリンジャーバンドとMACDによるデイトレード ──世界一シンプルな売買戦略』です。
残念ながら日本における本書のレビューは思ったほど芳しくありませんが、おそらく翻訳の拙(まず)さが原因ではないかと考えます。
原書のレビューは高評価
著者はIBM出身の投資家、Markus Heitkoetter(マルクス・ヘイトコッター)です。日本では全く馴染みのないトレーダーですね。
本書の邦題は『ボリンジャーバンドとMACDによるデイトレード ──世界一シンプルな売買戦略』とありますが、原題(英語版)は全く異なります。
原題は『The Simple Strategy 2016: A Powerful Day Trading Strategy for Trading Futures, Stocks, ETFs and Forex』です。
原題を直訳すると…『シンプル・ストラテジー2016:先物、株式、ETF、FX取引のための強力なデイトレード戦略』となります。原題にはボリンジャーバンドやMACDというワードは一切含まれていません。
そして英語版のレビューはまずまずの高評価(レビュー数も多い)。
ボリンジャーバンドとMACDの組み合わせによるシンプル戦略とは?
書籍(原書)で解説されているFX取引ルールはこちら。
The same rules discussed in Chapter 5 apply when trading the Simple Strategy with Forex.
- Determine the underlying direction of the market using MACD.
- Look for buy & sell signals when price is tagging the Upper & Lower Bollinger Bands,using the Bollinger Band as an entry signal.
- Determine the Average Daily Range and place your stop loss at 10% of the ADR and profit target at 15% of the ADR
ざっくり直訳します。
- MACDでマーケットの基本的な方向を決める(買いか、売りか)
- ボリンジャーバンドをエントリーシグナルとして使用する(価格がアッパーバンドorローワーバンドにタッチしたタイミングが売買シグナル)
- ADR(=Average Daily Range)の10%でSL(ストップロス)、ADRの15%でTP(利益目標)を設定する
補足的に以下の記述もあります。「買いルール」からの引用です。
MACO must be ABOVE the signal line and ABOVE the zero line.If you are coloring your bars as suggested in the previous chapter, you want to see GREEN bars on the chart.
AND Bollinger Bands indicate an uptrend:The Upper Bollinger Band needs to point up.
RSI above 70 (OPTIONAL)*A 7 period RSI reading above 70 helps confirm the strength of the trend.
- MACOはシグナルラインの上にあり、ゼロラインの上であること
- ボリンジャーバンドは上昇トレンドを示していること(ボリバンの上部が上を向いていること)
- RSI(期間7)が70以上超えていること
上の3つの条件をクリアしたときにEntry(買い)となります。売りルールはこの逆です。
ご覧の通り、ボリバンとMACDにRSIを加えたシンプルな手法ですね。SLやTPはADR(Average Daily Range)によってルール化しています。ADRはATRと似ていますがやや異なります。ここでは割愛します。
和訳本は2,200円(Kindle版)、英語版(ペーパーバック)は5,609円とどちらも高額ですが、英語が得意な人はぜひ原書(英語版)で読むことをオススメします。