FX自動売買ソフト「不知火(しらぬい)」のフォワードテストは皆無
「不知火(しらぬい)」という名のEA(自動売買ソフト)をレビューします。
タイトル:FX自動売買ソフト「不知火(しらぬい)」 販売:山口一生 メディア:EA(自動売買ソフト) 発売日:2017年02月02日 FX自動売買ソフト「不知火(しらぬい)」【公式サイト】 |
年利100%を謳うEAがたったの39,800円です。バックテストは過去11年間分のヒストリカルデータにて検証されています。
ごらんの通り、きれいな右肩上がりです。
- 勝率:81.46%
- PF(プロフィットファクター):1.41
- 最大ドローダウン:12%
データを見る限りにおいては優秀なEAといえますね。
「100万円を0.7lotで11年間運用すれば1090万円」=年利100%。あなたはこのEAを買いますか?
カーブフィッティングである可能性を否定できない
FX自動売買ソフト「不知火(しらぬい)」は、一般的な片張りでありナンピンを一切使用していないEAです。再度バックテストグラフをご覧ください。
ナンピンを使用しないEAであるにもかかわらず、きれいな右肩上がりを描いています。局所的にはドローダウンや資産の伸び悩みも見られますが、全体を通して見れば順調に資産を増やしていることがわかります。
EAを自作したことのあるユーザーであれば、「…カーブフィッティング?」と勘ぐってしまうようなグラフです。
カーブフィッティングとは、理想的な利益が出るように過去の相場に対して過剰に最適化することです。投資の専門用語と思いがちですが、本来はデータ解析における用語です。別名「曲線あてはめ」とも呼ばれています。
曲線あてはめ(きょくせんあてはめ)またはカーブフィッティング(英: curve fitting)は、実験的に得られたデータまたは制約条件に最もよく当てはまるような曲線を求めること。最良あてはめ、曲線回帰とも。
引用”:Wikipedia
EA製作者が陥る「カーブフィッティングの罠」とは?
EAを自作する場合、大抵は以下の手順でおこないます。
- ロジックアイデアを考える
- ロジックをシステム化する
- バックテストをしてみる
- パラメーターを修正する
- 再度バックテストをする
- 以下繰り返し…
ロジックを考案し、EAを組み上げたら、バックテストをおこないます。その際にヒストリカルデータ(過去の相場の4本値)を用意します。何年分を用意するか?については製作者の考え次第です。EAの性質によってもヒストリカルデータの量は異なります。
バックテストをおこなって、いきなり素晴らしい成績が出ることは稀です(但しナンピン系EAは簡単に右肩上がりの成績を出すことができます)。
ドローダウンが大きかったり、左肩下がりのグラフになってしまうなど成績が振るわなければ、EAのパラメーターを調整します。そして再度バックテスト。その結果を見て、パラメーターを調整し、バックテスト。また結果を見てパラメーターを修正し…
この繰り返しです。そうこうしているうちに素晴らしい成績が出るときがあります。これが過剰最適化と呼ばれるカーブフィッティングです。
10年以上のヒストリカルデータを使って右肩上がりのEAを完成させたときは、「俺って天才?聖杯を完成させたかも!?」などと勘違いしてしまいます。これがEA自作を始めたばかりのユーザーが陥る「カーブフィッティングの罠」です。
EA販売者の「ジレンマ」
EA販売者が「カーブフィッティングの罠」に陥ってしまう原因は、商用EA制作におけるジレンマにあると考えています。
EA販売者のジレンマとは「長期のバックテストに耐えうるEAや、突出したバックテスト結果を出すEAは、過度にカーブフィッティングされてしまい実践で使えない」とわかっているのに、「バックテスト期間の短いEAや平凡な成績のEAは消費者に受け入れられにくい=売れない」という事実に板挟みされることです。
一般ユーザーは、長期的に機能するEAを求めがちです。過去1年(これからの1年)で利益を出せるEAよりも過去10年(今後10年)で利益を出せるEAのほうが優れていると思っているからです。販売者はそのニーズに応えようと5年〜10年のバックテストに耐えうる(耐えているように見える)EAを作ろうとします。
過去1年のデータで利益を出すEAを作るよりも、過去10年のデータで利益を出すEAを作るほうが大変です。10年間の相場変動に対応するロジックを組む必要があるからです。
10年前の相場と1年前の相場(さらには未来の相場)は、全く別物です。それらすべての相場に対応できるロジックを組み「利益を出そうとすれば」、EAはどんどん複雑化(パラメーターの多重化)します。複雑化したEAはカーブフィッティングの罠に陥りやすくなります。
一方、直近の相場(過去半年〜1年程度)に最適化したEAは、フォワードにおいても比較的機能しやすい傾向にあります。しかし5年〜10年のヒストリカルデータで走らせてみると破綻してしまう可能性が高くなります。5年前、10年前の相場と今の相場は全く異なるからです。
直近の相場(過去半年〜1年程度)に最適化したEAは、ユーザーからすれば賞味期限も短く感じられてしまい、受け入れられにくくなります。
同様に、売るために”突出した成績”を見せなければ消費者にアピールできない…というプレッシャーから、パラメーターをいじって直近のバックテスト成績(過去1〜2年)を派手に改ざん(?)することも行われます。もちろん、フォワードで通用するかどうかは不明です(というかどうでもいいと考えている)。むしろ通用しない可能性のほうが高いわけです。
EA販売者のジレンマです。結局、消費者のニーズに応えるべくバックテストで右肩上がりの成績や突出した成績を出す(カーブフィッティングした)EAを製品としてリリースせざるを得ないのです。たとえフォワードに自信がなくても、です。
中には意図的にカーブフィッティングさせたEAを販売する悪質な業者も存在します。ドローダウンに陥る箇所のヒストリカルデータを部分的に削除することで、バックテストデータ(Strategy Tester Report)を優秀に見せるという手口もよく使われます。
これまでに多くの市販EAが、フォワード(実践)において右肩下がりの資産目減りや壊滅的なドローダウンによってゴミ箱行きする様を見てきました。その多くは輝かしいバックテストデータを持つものばかりでした。
結局、固定化したパラメーターでEAを長期的に機能させることは難しいのです(ナンピン系は別です)。常に相場に応じたパラの調整が求められます。しかしそれをできるのはEA製作者だけです。
誰もがカーブフィッティングに陥る可能性を持っている
変化する相場に応じてパラメーターを調整する。直近の相場に最適化することで、今の相場で勝てるようにパラメターを調整する。実はこれも「直近相場にカーブフィッティングさせている」ことになります。
つまり長期のカーブフィッティングよりも短期のカーブフィッティングのほうが効果が認められる、ということです。レンジ相場が続くならば、レンジ相場に対応したEA(ロジック)を使い続けることで利益を出すことができます。上昇トレンドが続くならば、押し目を拾うようなロジックを使い続けることで、誰でも簡単に利益を積み上げられます。これらも広義ではカーブフィッティングといえなくもありません。
過去は無視できません。過去を無視すれば何を根拠にトレードすればよいのかその指標を失うことになります。過去から一定の傾向を分析して、仕掛けの根拠を導き出すことはトレードに不可欠です。それが優位性に繋がります。しかし過去データを元にした優位性(エッジ)を求めすぎるとカーブフィッティングの罠に陥ってしまいます。
硬直したトレードでは長期的に生き残ることは困難です。相場は常に変化しています。その変化応じて柔軟にトレードを変化させる適応能力が求められているように感じます。
FX自動売買ソフト「不知火(しらぬい)」の課題
FX自動売買ソフト「不知火(しらぬい)」のバックテストは確かに優秀です。しかしそれが未来も続くかどうかは誰にもわかりません。
フォワードデータが公開されていない意味を考えてみましょう。本当にEAに自信があるならば、販売者の「ポケットマネー100万円」を使ってEA運用をすればよいと思いませんか?
「不知火(しらぬい)」は年利100%を謳うEAです。100万円を運用すれば、1年後には倍の200万円になるということです。100万円が大金ならば、10万円で運用しても良いでしょう。負けても10万円を失うだけです。
たかだか10万円のリスクにすぎないのに、フォワード成績を公開しない理由をよく考えてみてください。EAに自信を持っていれば公開すべきでしょう。フォワード成績が右肩上がりならば、多くのユーザーがこぞって「不知火(しらぬい)」を買い求めるでしょう。
「不知火(しらぬい)」を実践で使うことによるリスクを販売者ではなく”あなた”が負うということ
フォワード成績を公開しないEAを使う意味とは、すなわち購入者であるあなたが「人柱(ひとばしら)」にされるということです。FX自動売買ソフト「不知火(しらぬい)」を実践で使うことによるリスクを、販売者ではなく、あなたが負うということです。
販売者のリスクはゼロです。一方、あなたの最大のリスクは資産を失うことです。なぜ販売者ではなくあなたがリスクを負わなければいけないのでしょうか?
このことをよく考えるべきです。
FX自動売買ソフト「不知火(しらぬい)」総合評価
【結論】フォワードテストデータを提示しないEAはまさに名前のごとく不知火(=蜃気楼)だ 目の前のオアシス(年利100%)を求めてたどり着いたらそこには何もなかった…というオチにならなければ良いけど
バックテストデータがどれほど優れていても、机上にすぎません。むしろ優れたバックテストはカーブフィッティングを疑ってかかるくらいがちょうど良いくのです。
実践においてどれほどのフォワード成績を叩き出せるか?EA(自動売買ソフト)は、その一点にしか評価基準はありません。
海外の市販EAは必ずフォワード成績を公開しています。なぜならフォワード成績のみが唯一そのEAの評価に直結するからです。バックテストデータは飾りにすぎないのです。
フォワードデータを公開しないEAを購入する行為は、あなたが自ら人柱になることを意味します。
それでもあなたはフォワードデータ非公開のEAを買いたいですか?
タイトル:FX自動売買ソフト「不知火(しらぬい)」 販売:山口一生 メディア:EA(自動売買ソフト) 発売日:2017年02月02日 FX自動売買ソフト「不知火(しらぬい)」【公式サイト】 |