1200億円集めた無登録業者スカイプレミアムに対し、証券取引等監視委員会が業務差し止め申し立て
先日の日本経済新聞WEB版に、スカイプレミアム(SKY PREMIUM)に関する記事が掲載されていたので紹介します。
無登録でFX取引への出資募る 監視委が業務差し止め申し立て
2021年9月17日 18時43分
日本国内の投資家から無登録でFX取引への出資を募り、およそ2万人から1200億円を集めていたシンガポールの会社について、証券取引等監視委員会は、裁判所に業務の差し止めを申し立てました。集めた額は、監視委員会から差し止めを申し立てられた無登録業者の中で過去最大だということです。
証券取引等監視委員会によりますと、シンガポールの会社「SKY PREMIUM INTERNATIONAL」とM最高営業責任者は、日本国内で金融商品取引業の登録がないのに、およそ2万2000人の投資家から1200億円を集め、チェコスロバキア貿易銀行の口座に送金したうえで、FX取引で運用するなどと説明していたということです。
しかし、実際には海外の法人名義の別の口座に送金されるなどしていて、この会社は監視委員会に対し「1200億円のうち500億円は投資家に返金したが、預かった資産の残高は不明だ」などと説明しているということです。
このため、監視委員会は17日、金融商品取引法に基づいて、東京地方裁判所に業務の差し止めを申し立てました。
集めた額は、監視委員会から差し止めを申し立てられた無登録業者の中で過去最大だということです。
引用:日本経済新聞WEB版
証券取引等監視委員会による裁判所への禁止及び停止命令発出の申立ての内容がこちら。
証券取引等監視委員会が、会員制組織事業を主たる事業とするとしているSKY PREMIUM INTERNATIONAL PTE. LTD.(シンガポール共和国、金融商品取引業の登録等はない。以下「当社」という。)に対して金融商品取引法(以下「金商法」という。)第187条第1項に基づく調査を行った結果、下記2.の事実が認められたことから、本日、証券取引等監視委員会は、金商法第192条第1項に基づき、東京地方裁判所に対し、当社及び当社のCSO(最高営業責任者)であり日本における営業活動の統括責任者であるM(当社及びMを併せて、以下「当社ら」という。)を被申立人として、金商法違反行為(無登録で、投資一任契約の締結の媒介を業として行うこと)の禁止及び停止を命ずるよう申立てを行った。
引用:SKY PREMIUM INTERNATIONAL PTE. LTD.及びその役員1名による金融商品取引法違反行為に係る裁判所への禁止及び停止命令発出の申立てについて
裁判所への禁止及び停止命令発出の申立てとは何か?
証券取引等監視委員会がおこなった裁判所への禁止及び停止命令発出の申立てとは何でしょうか?
公益や投資者保護のために緊急を要する事案に認められている裁判所への申立であり、証券取引委員会が直接おこなうことで違反行為に迅速に対応するための仕組みです。
(裁判所の禁止又は停止命令)第192条 裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、内閣総理大臣又は内閣総理大臣及び財務大臣の申立てにより、当該各号に定める行為を行い、又は行おうとする者に対し、その行為の禁止又は停止を命ずることができる。一 緊急の必要があり、かつ、公益及び投資者保護のため必要かつ適当であるとき この法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為二 第2条第2項第5号若しくは第6号に掲げる権利又は同項第7号に掲げる権利(同項第5号又は第6号に掲げる権利と同様の経済的性質を有するものとして政令で定める権利に限る。)に関し出資され、又は拠出された金銭(これに類するものとして政令で定めるものを含む。)を充てて行われる事業に係る業務執行が著しく適正を欠き、かつ、現に投資者の利益が著しく害されており、又は害されることが明白である場合において、投資者の損害の拡大を防止する緊急の必要があるとき これらの権利に係る同条第8項第7号から第9号までに掲げる行為引用:金融商品取引法
つまりこの事案は、事業者による資金流用などによって投資者の利益が毀損される可能性を想定しており、「緊急を要する事案」と判断されたわけです。
日経の記事内でも、”実際には海外の法人名義の別の口座に送金されるなどしていて、この会社は監視委員会に対し「1200億円のうち500億円は投資家に返金したが、預かった資産の残高は不明だ」などと説明している”とあります。
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スカイプレミアム(SKY PREMIUM)のFX商品「LION PREMIUM」(ライオンプレミアム)とは?
スカイプレミアム(SKY PREMIUM)は、2013年2月20日、シンガポールにて設立された外国法人です。記事にある通り、スカイプレミアム(SKY PREMIUM)は国内無登録業者でした。
そのスカイプレミアム(SKY PREMIUM)がFX投資として出資を募ったのが「LION PREMIUM」(ライオンプレミアム)と呼ばれる金融商品(=海外FXファンド)。
日本国内にて紹介制で会員を募り、プライベート投資的なイメージで海外FX業者「GQ CAPITAL INC.=GQFX」に口座開設させてFX運用をさせるという流れです。
エージェントと呼ばれる人々(500人)が国内で投資セミナーを開催し、「LION PREMIUM」(ライオンプレミアム)の会員を募りました。
出資者は、Think Smart Trading社(当該商品に係る運用指示を行っているとされる主体。法人格の有無、実在性及び実態不明)との投資一任契約を結ばされて、運用を任せていました。
「GQFX」に口座開設後、Think Smart Trading社が顧客の資金をFX投資で運用し、その運用益を還元(配当)するというスキームです。
よくある海外投資(海外FXファンド)案件の一つですね。
最低投資額は100万円であり、月額の会費も発生します(月50〜100ドル)。Think Smart Tradingへの運用手数料も利益の40%に設定されています。
当初は年30%を謳って集客をしていたようですが、直近では月配当は1%前後まで落ち込み(それでもすごいですが!)、以前ほどの配当は出せていないようでした。
ところが…
証券取引等監視委員会の調べによれば、顧客から預かった資金の運用については、当初の説明とは異なる事実(海外の法人名義の別の口座に送金さていた事実)が判明しており、その運用・管理の実態は現時点では不明です。
つまりFX運用というのはウソだった可能性(顧客にウソの説明をしていた可能性)があるということ。
スカイプレミアム(SKY PREMIUM)の営業統括責任者の弁明によれば、22,000人から集めた1200億円のうち500億円は返金したが、預かり資産残高額は不明であるとのこと。
スカイプレミアム(SKY PREMIUM)事案の流れをまとめると…
これまでの流れをまとめてみます。
- スカイプレミアム(SKY PREMIUM INTERNATIONAL PTE. LTD.)がシンガポールにて設立される(2013年2月)
- エージェント500人を使って国内でス「カイプレミアムオフィシャルセミナー」を開催し、海外FXファンド(ライオンプレミアム)の勧誘を長期間にわたっておこなう
- スカイプレミアムは無登録業者だった
- GQ CAPITAL INC.=GQFXも無登録業者だった
- 22,000人から1200億円を集めるが500億円は返金済み
- ただし預かり資産残高は不明
- スカイプレミアムが顧客から預かった資金は、当初の説明とは異なる運用がされていた可能性大
- 運用・管理の実体は不明のまま
- 証券取引等監視委員会がSKY PREMIUM INTERNATIONAL PTE. LTD.(スカイプレミアム)に対し金融商品取引法違反行為(無登録営業)を行うことの禁止及び停止を命ずるよう申立てを行う(令和3年9月17日)←今ここ
唐突に感じた今回の「業務差し止め申し立て」
今回のスカイプレミアム事案(業務差し止め申し立て)の展開は、非常に唐突に感じます。
配当金も、当初の利回りほどではありませんが、滞ることなく配当されていたようですし、目立った(ネットで騒がれるほどの)トラブルも見かけませんでした。
もちろん、怪しいとウワサは以前から絶えませんでしたが、出金トラブルや未配当、連絡できなくなるなどの問題はなかったように感じます。
なぜ突然の業務差し止め申し立てだったのか?
まだ報道されていない事実があるのではないかとみています。
自転車操業的に”タコ足配当”していたか?
2019年初頭からスカイプレミアム投資案件の話はありました。2年以上経過してようやく業務差し止め申し立てがおこなわれたわけですから、その間は多かれ少なかれ毎月の配当があったはずです。実際に直近のTwitter上でも「配当ツイート」を見かけます。
ただ、今回、証券取引委員会と裁判所が動いたわけですから、相応の理由はあるはず。
当社らは、上記金商法違反行為を今後も行う蓋然性が高いことから、これを可及的速やかに禁止・停止させる必要がある。
金商法違反行為を停止するための措置だったとの理由だけでは、ちょっと弱い気がします。
…
ここからの話は想像の域を出ませんが、おそらく自転車操業的にタコ足配当をしていたのではないかと考えます。つまり新規顧客から集めた出資金をそのまま既存顧客の配当金に流用していた可能性です。
年30%の配当は無理だとしても月1%(年12%)程度の配当であれば、タコ足配当でも可能でしょう。タコ足配当による自転車操業は、いずれ行き詰まります。新規顧客が伸び悩めば配当に充当するためのお金が尽きるからです。
通常ならば、自転車操業(タコ足配当)で、顧客への配当が徐々に滞り、不安を感じた顧客から問い合わせが殺到。消費者センターや警察、証券取引委員会へ大量の顧客が駆け込んで事態が判明というのがよくあるパターンです。
今回のスカイプレミアム案件は、どうも別のパターンのような気がします。別ルートで別理由により投資者保護のために緊急を要する事案であると判断された。
スカイプレミアム社員による内部告発なのか、それとも関連会社「GQ CAPITAL INC.=GQFX」、「Think Smart Trading」のなんらかの問題から芋づる的にスカイプレミアムの事案にたどり着いたのか…?
とりあえず、(今後の被害拡大を防ぐために)金商法違反行為を阻止するための措置を取って新規募集を止めさせ、その上で時間をかけて調べるのかもしれませんね。
どちらにしても今後のニュースから目が離せません。
なにせ、スカイプレミアムが集めた額は、監視委員会から差し止めを申し立てられた無登録業者の中で過去最大なのですから。
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スカイプレミアム(SKY PREMIUM)のライオンプレミアムはポンジスキーム(詐欺)だったのか?
証券取引等監視委員会が裁判所に業務差し止め申し立てをしたスカイプレミアム(SKY PREMIUM)ですが、詐欺案件だったのでしょうか?
現時点ではわかりません。今後の解明が待たれるところです。
ただ、今回のスカイプレミアム事案が、過去の投資詐欺事件と重なる要素をいくつか含んでいる点は留意しておく必要があります。
- 無登録業者
- 海外FXファンド商品
- 高配当を謳って勧誘
- 当初の説明とは異なる運用法(しかも説明なし)
- 運用・管理の実体が不明(説明できない)
これらの要素を含む案件の大半が投資詐欺でした。