本記事は、2019年春、Twitter界隈で発生したFX投資事件「#サタンプロジェクト」について、これまでの経緯と今後の動向をまとめています。
被害者(?)というか損失を被った人は5000人前後とウワサされています。
#サタンプロジェクト事件は、Twitterを舞台に仕掛けられた大掛かりなFX投資事件(詐欺かどうかは不明)
#サタンプロジェクトとは、2018年12月〜2019年4月にSNS(Twitter・LINE@)を舞台に仕掛けられた大掛かりなFX投資案件(投資事件)です。
巧妙なマーケティング(※後述)と演出によって多くの個人投資家が出資し、運用開始から間もなく破綻するという、おきまりのパターンを辿りました。出資者の多くは泣き寝入りです。
集客から破綻までの一連の手口は、まさにプロ(?)といえるほどの手練手管で、これは情報弱者はダマサれても仕方がないかな?と思えるほど。
とはいえ、今後の注意喚起も含め、#サタンプロジェクトがどのように仕組まれ、そして実行されたのかを、詳しくまとめておきます。
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巧妙な投資案件『サタンプロジェクト』、破綻までの経緯
第1段階:FX投資アカウントを開設し、お金の匂いを発散
#サタンプロジェクトの仕掛け人とされているのは以下の二人(2アカウント)。
- サタン(@satan0254)
- しらす(@shirasu_109)※どちらも削除or凍結
どちらもFX投資アカウントとして開設され、投資に関するTweetを積極的に開始、フォロワーを大量に集め始めます。
メインで活動していたのはサタン(@satan0254)です。Tweet上では、残高4億円以上の通帳画像を掲載するなどして、FXで稼いでいることをさかんに匂わせ、集客のためのアカウントを育てていきます。
第2段階:”現金プレゼント”でフォロワーを大量に集め始める
サタン(@satan0254)がフォロワーを大量に集めた方法は、ZOZOの前澤社長もやった「現金プレゼント=ばらまき」です。
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2018年12月、サタン(@satan0254)がTwitter上で【プレゼント企画】と称して、派手なマーケティングを数回にわたって仕掛けます。
【プレゼント企画】
いつも頑張ってくれる皆にまたお金を用意しました。
『RT数✕20,000円』を『3名』にします。
もういいtド1700RT行けば1人340万円ですね。
2000RT行けば次回”超盛大”にします
【条件】
フォロー
RT
リプで私に一言いつもリプやRTしてくれる方にはRT数✕25000円の特別単価
締切10日中
サタン(@satan0254)のアカウントをフォロー、もしくはTweetをRT等すれば「現金」をプレゼントすると煽ります。この頃からTwitter上では「#サタンプロジェクト」とハッシュタグをつけて、徐々に拡散されるようになります。
数回にわたって上記のような「プレゼント企画」を実施し、現金プレゼント=バラマキによってフォロワーを大量に増やしていきました。
※実際にプレゼント(現金)が渡されたかどうかはいまもって不明です。結局「抽選」なので、なんとでも言えますね。
第3段階:”アンケート実施”で最初のワナを仕掛ける
100万円を大量にプレゼントする企画が当たり、多くのフォロワーを集めることに成功したサタン(@satan0254)。そして、サタン(@satan0254)の周りにお金の匂いを嗅ぎつけた多くのユーザーが、サタンの動向に注目し始めます。
大量のフォロワーが集まったところで、最初のワナである「アンケート」がスタートします。
【アンケート】
RTお願いします
私はFXで生活をしていますが、私と同じトレードができるなら、FXをやってみたいと思う方はいますか?
取引所にお金を預けておくだけで、私がトレードした箇所と同じ箇所でトレードするシステムです。
利回りは私と全く同じ結果になります。
マージン等は一切私に入りません。
- 興味がある
- 興味がない
サタン(@satan0254)による『コピートレード商材=MAM』に興味があるか、というアンケートです。
アンケートを実施することで、コピートレードに対する興味を喚起し、フォロワーの注意をひきつけます。「興味がある」と回答したユーザーに対し、いよいよコピートレードへの勧誘がスタートします。
第4段階:月利15%!のコピートレードへの勧誘・運用スタート
興味があるユーザーをLINE@へ誘導・登録させて、ようやく投資案件の募集を開始します。2019年2月末に一回目の募集が終了、3月上旬に3日間限定で再募集。
投資案件は、いわゆるコピートレードです。指定された海外FXブローカーで口座を開設し、資金を入金。その後は完全ほったらかしで運用されるというもの。
理論上は、サタン(@satan0254)の口座と各ユーザーの口座が自動的に紐づけされているので、サタンの取引が自動的に各ユーザーの口座に反映されるという仕組みです。参加ユーザーは、口座に入金するだけで、なにもする必要はありません。
MAM(Multi Account Manager)と呼ばれる運用手法ですね。似たような運用手法にPAMM(Percentage Allocation Management Module)があります。
MAMもPAMMも運用を第三者に委託する点は同じですが、違いは各人で取引履歴を見れるかどうかです。今回の#サタンプロジェクトはMAMなので、参加ユーザーは取引履歴を見ることができます。
募集時に謳っていた月利はなんと15%!月利15%ならば、10万円が1ヶ月後に11.5万円になります。1年後には10万円が53.5万円(複利)です!なんと、1年で5倍になります。そんな夢のような金融商品が、この世にあるわけないですよね?どうして信じてしまうのでしょうか???
仮に存在したとしても、それは限られた一部の超アッパー層だけが得られる極秘情報であり、私たち「平民」が手にすることなど絶対にできません。あなたは超アッパー層なのですか?違いますよね?私と同じ平民ですよね。月利15%の金融商品が、TwitterやLINE@で広く募集されることなど絶対にありません。
指定ブローカーは、いわくつきのIronFX(アイアンFX)…
指定ブローカーは、海外のIronFX(金融ライセンスはBMA=バミューダ金融当局)。IronFX(アイアンFX)は、これまでに国内外で多くのトラブル(出金拒否など)を起こしているいわくつきのブローカーです。
キプロス金融局も、過去にIronFXに関する注意喚起声明を出しています(2015年8月6日)。
ANNOUNCEMENT
As a consequence of media reports and the increasing number of complaints submitted by
investors against the Cyprus Investment Firm IronFX Global Ltd (the “CIF”), the Cyprus
Securities and Exchange Commission (the “CySEC”) wishes to clarify that there is an ongoing
investigation against the CIF with respect to possible infringements of the Legislation. Upon
completion of the investigation, the CySEC will publish its findings and/or will proceed with
further announcements in the meantime, if deemed necessary.
The CySEC examines the complaints submitted to it by investors, against any supervised
entity, in the context of its statutory mandate. For complaints against Cyprus Investment
Firms that relate to possible compensation claims, the investors are encouraged to contact
the Financial Ombudsman, which is the competent body to examine compensation claims
via an extrajudicial procedure, at complaints@financialombudsman.gov.cy.引用:https://www.cysec.gov.cy/CMSPages/GetFile.aspx?guid=c5b69085-0611-4a66-b15c-af61bcfb3af0
ざっくり翻訳すると…
「IronFX Global Ltd」に対する苦情があれば以下のアドレスに連絡して欲しい(以下略)
という一般投資家に対する注意喚起です。
指定口座がIronFXというだけで、察しがいい人は「あぁ、やっぱりね…やめとこ」ってなります。ダマサれるのはいつも「情報弱者」です。自分で調べようともしません。
恐ろしい勢いで増えていく口座残高…それを嬉々として報告する「情弱」な人々…
さて、肝心のコピートレードですが、最初は恐ろしい勢いでお金が増えていきます。実際に参加した人(情報弱者)の例を取り上げると…
上に取り上げたのは#サタンプロジェクトを大絶賛するTweetのほんの一部です。皆「#サタンプロジェクト」とハッシュタグを付けていつぶやいているので、「儲かったことをTweetするように!」と半強制的にお願いされているのでしょう。中には、運営側で用意した偽アカウントもあるかもしれません。
これらの「儲かった!」つぶやきによって煽られた人々が、さらなる被害者となります。再募集の際に多くのユーザーがサタンプロジェクトに参加したと思われます。
終焉:ある日突然、参加者全員の口座が破綻
さて、#サタンプロジェクトもいよいよ最終幕をむかえます。4月上旬、突然全てのポジションが強制ロスカットされ、全ユーザーの口座がマイナスになり破綻します。まさに青天の霹靂でしょうね。
運営者からは以下のような謝罪LINE@が届きます。
上の文面が、全てのユーザーにLINE@にて一斉送信されました。「予期せぬ相場変動により強制ロスカットされた…」とのこと。まあ、お決まりのパターンですね。
これで、#サタンプロジェクトは幕引きです。もはや後の祭りですね。投資したお金は一円も戻ってきません。
ネット上には、「ダマサれた!」と憤る人や、自己嫌悪に陥り落ち込む人、今回の件を反省して投資に再び取り組む人など、様々な意見で溢れました。
#サタンプロジェクトは「投資詐欺」だったのか?
被害者5000人ともウワサされている#サタンプロジェクトですが、はたして最初から仕組まれた詐欺だったのでしょうか?
少なくとも、過去に起きた投資詐欺事件の要素は大いに満たしていますね。
- 高い月利を謳う投資案件であること
- 煽りの強いマーケティングで集客すること
- コピートレードであること
- 限定数で募集をすること
- 最初は儲かること
- 突然破綻すること
とはいえ、詐欺として立件するには非常に難しいというのが現状です。なぜなら、詐欺として立件するには以下の4つの構成要件を全て満たす必要があるからです。
- 一般社会通念上、相手方を錯誤に陥らせて財物ないし財産上の利益の処分させるような行為をすること(欺罔行為又は詐欺行為)
- 相手方が錯誤に陥ること(錯誤)
- 錯誤に陥った相手方が、その意思に基づいて財物ないし財産上の利益の処分をすること(処分行為)
- 財物の占有又は財産上の利益が行為者ないし第三者に移転すること(占有移転、利益の移転)
上記の4点を全て満たすことが必要とされています。特に、1番目「最初から本人に相手をダマす意志があったかどうか?」という点の立証が非常に困難を伴います。
サタン(@satan0254)が、「私は本気でトレードをしていて、参加者をダマすことなど考えていなかった」と主張すれば、それを覆すことは難しいのです。
サタン(@satan0254)が、実は全くトレードをしていなかった裏付けとか、彼の取引履歴や4億円の通帳などが全てニセモノだったなどの証拠があれば、詐欺の可能性は高まります。が、それもなかなか難しいですよね。
つまり、この手の投資事件の大半は、詐欺として立件されることなく、被害者が泣き寝入りすることになるのです。結局、各人が自衛するしかないのですね。
#サタンプロジェクトが仮に「詐欺事件」ならば誰が儲けたのか?
さて、#サタンプロジェクトが詐欺事件だったと仮定すると、いったい誰がどのようにして儲けたのでしょうか?
考えられる点は一つだけです。サタン(@satan0254)とIronFX(アイアンFX)が結託して、サタン(@satan0254)にキャッシュバックをおこなっていたということ。つまり、口座開設&運用額に応じたキャッシュバックです。いわゆるIB(Introducing Broker=アフィリエイト)ですね。
口座開設で2万円のキャッシュバックと想定すれば、5000人参加で、ざっと1億円が手に入る計算です。
また、運用額が1人平均10万円で計算すれば、10万円✕5000人=5億円 の運用総額です。
#サタンプロジェクトの具体的な取引は不明ですが、仮に往復1ロット(10万通貨)毎に5ドルの報酬が支払われるとしたら、1日1回トレードすると想定して、5ドル✕5000人=25,000ドル(≒270万円)です。
1日あたり270万円がキャッシュバックされる計算ですね。これが、30日で約8000万円。
まとめると…
- 口座開設アフィリエイト報酬…約1億円
- IB(Introducing Broke)報酬…約8000万円(30日)
合計1億8000万円の報酬が、サタン(@satan0254)に振り込まれたかもしれないわけです(あくまでも想像です)。
サタン(@satan0254)が、半年もかけて入念に準備し、そして破綻後に罵詈雑言を浴びても、十分すぎるほど報われる金額を手にしたかもしれないのです。
もちろん、上に記載した報酬は、あくまでも想像の範囲を超えていません。が、過去に似たような投資(詐欺?)案件で大金を手にして逃げ切った運営者が何人もいるのはよく知られています。
#サタンプロジェクトで失ったお金は取り戻せるか?
ウワサでは5000人前後が参加した#サタンプロジェクト。彼らが失ったお金は数万円から数十万円まで幅広いようですね。中には100万円を失ったという女性(主婦)も存在するようです。
#サタンプロジェクト のみなさんってほんと優しいですね😭✨
なんとか100万溶けたことを夫に切り出せました…💫
「やっぱり、誰だかわかんない人に任せるとそうなるんだね」って言われ耳が痛い痛い😭😭
でも言えて少しスッキリしたかな😢
これからは人に任せず自分の力で稼ぎます✊✨ https://t.co/KGANHVTpek
— みるり (@miruriori) 2019年4月7日
集団訴訟プラットフォーム「enjin」にも「サタンプロジェクトのFX投資に関する集団訴訟」という訴訟ページが開設されいています。
とはいえ、それほど盛り上がっていません。参加者は現時点で15人。
別のプラットフォーム「matoma」にも「【集団訴訟に向けて】”サタンプロジェクト”について」というページが開設されいています。
こちらの参加者は現時点で19人。
大半の被害者が、諦めムードのようです。仮に訴訟を起こしても勝てる可能性は限りなくゼロに近いでしょう。
”お地蔵さんの昔話”を読んで肝に銘じましょう
今回の#サタンプロジェクトでお金を失った人には、以下の逸話を読んで欲しいです。DMMグループを一代で築いた亀山敬司会長が主催する「DMM亀山塾」で、亀山氏が語ったる寓話です。
昔話でこういうのがある。どこかの村にお地蔵さんがあって、そこに村人がお饅頭を1個お供えしたんだって。
ところが翌日になったら、お饅頭が2つになっていたらしい。「あれあれ? おかしい」と思いながらそのままにしていたら、そのまた次の日になったら4個になっていた。
これはすごいなと噂が広がって、村の衆が集まってきて、じゃあ俺も置こう、俺も置こうと言って、みんな置いたわけよ。
そしたらやっぱり100個置いた饅頭が、翌日には200個になった。噂は隣村まで広がって、試しに米やら野菜やらいろんな物をお供えしたら、これもすべて翌日には倍になっていた。
そうしたら村のみんなは狂喜乱舞して、家中のものを集めてお供えしたんだ。そして翌日、村人たちが勇んでお地蔵さんの前に行ってみると、そこには何一つ残っていなかったとさ。おしまい。