おまいら、手仕舞いとポジションサイジングの重要性をもっと知るべき
最近、出口戦略(手仕舞いロジック)の記事が多めになっています。
- CCIとパラボリックSARによる出口戦略を考察してみるよ!
- 使えるぞ!オシレーター系を活用したトレーリングストップ戦略
- ブレイクアウト戦略におけるトレーリングストップを考察してみるよ!
- 移動平均の傾きでトレーリングストップする方法を考察するよ!
残念ながら、多くのFXトレーダーが入り口戦略(仕掛けロジック)について語るのに比べ、一方の出口戦略に関してはあまり話題になりませんよね。
しかし出口戦略は入り口戦略と同等、もしくはそれ以上に重要であるという考え方も存在します。
トム・バッソの『コイントス証明』を知っているか?
Thomas F. Basso(トム・バッソ)をご存知ですか?アメリカのヘッジファンドマネージャーです。日本ではあまり知られていない人物です。翻訳本が1冊だけ出ていますね。
彼を一躍有名にしたのは、ある逸話(というかインタビュー記事)です。『新マーケットの魔術師―米トップトレーダーたちが語る成功の秘密』の中でも取り上げられているので、知っている人も少なくないはず。
『新マーケットの魔術師―米トップトレーダーたちが語る成功の秘密』は、アメリカのトップトレーダー17人のインタビュー記事で構成された書籍です。その中のひとりとして、取り上げられている人物がThomas F. Basso(トム・バッソ)。
さて、肝心のインタビュー記事ですが、海外では、Tom Basso’s Coin Flip Study(トム・バッソのコイントス研究)とかThe Tom Basso Coin Flip Proven(トム・バッソのコイントス証明)などと呼ばれていて、割と有名なお話です。
ここでは、『新マーケットの魔術師』からの抜粋を紹介します。
トムバッソの公演においてある受講者が以下のような質問をした。
「まるであなたの話を聞いていると手仕舞いとポジションサイジング(資金に対する建て玉の枚数)だけが重要で、それさえ正しければコインの表か裏かでロングかショートを決めても利益が出せるというように聞こえます。」
トムはおそらく「そうだ」と答えた。さっそく彼はオフィスに戻ると先物取引の10の市場で実験を開始した。売りか買いかはコインを投げて決めた。
その後10日間平均のATR(真実の値幅)の3倍のストップを入れた。そして1回取引あたりの損失は資金の1%になるよう枚数を調整した。
これだけである。しかしストップの位置は自分の有利な方向へ変化させた。つまり自分の有利な方向へ相場が動いたとき、あるいは日々のボライティリティが狭まっているときに機械的に動かされた。(3倍のボライティリティストップをトレイリングストップとして使用しているということ)
結果はスリッページや手数料分を差し引いても安定した利益を得られるというものだった。これはかなり感動的だ。システムには単純さが何より重要だということを証明する結果となった。
「コイントス(運任せ)でエントリーしても勝てるよ!」
短くまとめると…
- 売買はコイントスの裏表で決める(ランダムエントリー)
- リスクはつねに1%になるようポジションサイズを決める
- 3ATR(期間10)でストップを決め、トレーリングストップする
この方法でトータル勝てる!ということ。
コイントスのような運任せの仕掛けでも、ポジションサイジングと出口戦略が優れていれば、相場で勝ち残ることができると述べているのです。
別の著名トレーダーも同じことを語っています。Van K. Tharp(バン・タープ)氏です。彼の著書はこちら。
書籍タイトルからもわかるとおり、ポジションサイジングの重要性について語った良書です。
ランダムエントリーかつ、1%のリスクモデルとATRストップによって、十分な利益を手にすることができるという実験結果を公表しています。
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ATRストップと1%リスクモデル
ポイントは、ATRストップ(トレーリングストップ)と1%リスクモデルですね。
このブログでも以前「2%ルールとATR」について解説しました。こちらです。
「2%ルール」と「ATR」
2%ルールを理解できたところで、ATRの登場です。先の例において「SLまでの距離を20pips」として計算しました。
このSL(ストップロス)を決める際にATRが使えるわけです。トレーダーによっては固定幅でストップを設定するケースもありますが、やはり相場に合わせてストップ幅を可変するほうがロジカルですよね。
ATRはそのときのボラティリティの目安を数値で出してくれるわけですから、活用しない手はありません。
以下のチャート図を御覧ください。ドル円の日足です。
直近のATRは0.4604、つまり46銭です。この数値の2倍(=2ATR)をSLと定めるとします。つまり92銭ですね。
上のケースにおける2%ルールでのポジションサイズを計算してみましょう。
条件は以下の通り。
- 口座資金…1,000,000円
- 一度のトレードにおける最大受容リスク…口座資金の2%を上限(2万円)
- SLまでの距離…92銭(92pips)
計算式は…
20,000円÷0.92=21,739
答えは21,739ドル。ざっくりと約2万通貨ということになります。
2万通貨を上限としてトレードをおこなえば、思惑に反してレートが逆行して損切りとなった場合(マイナス92pips)でも、損失の上限を2万円(2%)に抑えることが可能になります。
ATRによって損切りまでの幅を決め、そこから2%ルールを適用して最終的な取引量を決定する。結果的に、ロジカルな損切り幅と適切な資金管理を、毎トレードで実現できるわけです。その時の雰囲気でいい加減にトレードすることがなくなるので、数度のトレードでやむなく退場…という最悪の事態に陥ることも防げます。
上の記事では1%ではなく2%。そしてATRは3倍ではなく2倍設定で解説しています。
ATRについての詳しい解説は以下の記事をお読みください。
- ATR(Average True Range)よく聞くけど何なの?教えて!
- ATRの見方や具体的な使い方を詳しく解説するよ!
- ATRトレイリングストップインジケーターを紹介するよ!
- 【FX初心者向き】ATRをトレードに活かす方法を教えるよ!
何度でも言うぞ、トレーリングストップやんないやつはバカ
ATRストップ=トレーリングストップによって含み益を担保しつつトレンドに追随する。そこに1%の資金管理ルールを加えることで、最強のストラテジーが完成するわけです。買いのルールなど”おまけ”にすぎません。
その事実を、Thomas F. Basso(トム・バッソ)やVan K. Tharp(バン・タープ)が教えてくれます。
もちろん、ストップをトレーリングするためには、チャートへの張り付きが不可欠です。トレーダーによってはそれが難しいという方もいるでしょう。その場合は、最初から”優位性”において劣っていることを自覚するべきです。
それくらい出口戦略は重要であるということなのです。