”パラボリックSAR”はトレンドをキャッチして加速しながら追尾するテクニカル指標だ
パラボリックSARって何なの?詳しい人、教えて!にて、パラボリックSARの概念をお伝えしました。簡単にまとめておくと…
- SARとはStop And Reverse(ストップ&リバース)のことであり、SARが放物線状(=パラボリック)にチャート上に描写されることから、パラボリックSARと呼ばれている
- トレンドが時間経過に伴って拡大すると同時に、SARが価格を(※加速しながら)追尾する
- 価格が上昇しているときはSARは価格の下に位置し、価格が下落しているときはSARは価格の上に位置する
- トレンドが終焉し価格が横ばいになってもSARは加速しながら動くため、最終的に価格に追いつき逆転する=このタイミングでSARが反転する
- 基本的にはトレンドフォロー型のテクニカル指標だが、トレンドの緩急に関係なくSARが加速しながらレートを追尾するため、トレーリングストップ的な活用方法もあり
以上を一言でまとめるならば、パラボリックSARはトレンドをキャッチし、それをトレーリングストップのように加速しながら追尾するインジケータとなりますね。
パラボリックSARの算出方法
まずは、パラボリックSARの算出方法を紹介します。
パラボリックSARは、最高値と最安値、および加速係数を使用して、SAR(ドット)が表示される場所を決定します。計算式は非常に複雑なのですが、簡略化したものは以下の通り。
- 上昇トレンド時のパラボリックSAR=直近SAR+{直近AF ✕(直近EP ー直近SAR)}
- 下降トレンド時のパラボリックSAR=直近SARー{直近AF ✕(直近SARー直近EP)}
上の式にあるEPやAFの意味はこちら。
- EP…Extreme Point(極限点)。上昇トレンド中に価格が到達した最高値 or 下降トレンド中に到達した最安値。
- AF…Acceleration Factor(加速係数)。初期値は0.02(パラメータではステップと表示される)。EPが記録される毎に0.02ずつ増加し、最大で0.20となる。パラボリックSARの感度のようなもの。
上の説明では、なんだかよくわからないですよね。計算式を理解するのは難しいかもしれませんが、その本質は知っておいたほうが良いでしょう。パラボリックSARの計算式について詳しく知りたい方は以下の記事をどうぞ。
【2024年5月版】優位性の高いFX商材 Best4
”時間”と”価格”の概念を兼ね備えることで最も有利なストップの位置を教えてくれる
パラボリックSARはなんのために作られたのか?やはりここはワイルダーの原書を紐解くべきでしょうね。彼はどのような目的でパラボリックSARを考案したのか?
The system allows room for the market to react for the first few days after a trade is initiated and then the stop begins to move more rapidly.
The stop is not only a function of price, but is also a function of time. The stop never backs up. It moves an incremental amount every day, only in the direction in which the trade has been initiated.
For example, if you are Long, the stop will move UP every day regardless of the direction the price is moving.
This is the TIME function. The stop is also a function of PRICE because the distance the stop moves up is relative to the favorable distance the price has moved … specifically, the most favorable price reached since the trade was initiated.
翻訳します。
このシステムは、取引が開始されてから最初の数日間は市場が反応する余地があり、その後ストップはより急速に動き始める。
ストップは、価格だけでなく時間の機能でもあるのだ。ストップは決して後退することはない。ストップは、取引が開始された方向にのみ(トレンド方向にのみ)、毎日少しずつ追尾する。
例えば、あなたがロング(買いトレード)を行った場合、ストップは価格がどの方向に動いているかに関係なく、毎日、上方向に動く。これが”時間機能”だ。
ストップは”価格機能”でもある。ストップが上に移動する距離は、価格が移動した好ましい距離に相対的だからだ。具体的に言えば、ストップの位置は、取引が開始されてから到達した最も有利な価格に置かれる。
ワイルダーが語る”時間機能”と”価格機能”、つまり…パラボリックSARは時間と価格の2つの概念を兼ね備えたテクニカル指標なのですね。
パラボリックSAR|時間機能
上昇トレンド時は、SAR(ドット)が常にレートを追いかけ続けます。最初はゆるやかな動きですが時間経過とともに上昇速度は加速します。これが時間機能。
パラボリックSAR|価格機能
レートが上昇し続ける限りにおいては、SAR(ドット)はレートから一定の距離を保ち続けるため、常に有利なストップ位置を示してくれ続けるのですね。これが価格機能です。
その後、上昇速度が弱まり価格が停滞すれば、SAR(ドット)は時間機能によってレートに追いつきます。ここでSAR(ドット)の反転が起きます(the stop reverses the position)。
以上のことから、パラボリックSARが示すドット(=SAR)は、レートと常に”適切な距離”を保ちながら加速しつつ追随し、潜在的な反転のタイミングを示してくれることが理解できます。
加速係数(AF=Acceleration Factor)を変えることによって、SARの感度を調整可能です。感度を高めればよりレートに追尾していくようになります。
パラボリックSARの本質や概念を知れば知るほど、これを考えたワイルダーの凄さに驚かされます。こんなすごいテクニカルを、パソコンのない1970年代に紙と鉛筆だけで編み出したんですよ!
ワイルダーって天才ですね!