パラボリックSARの計算式をワイルダーの原書を元に説明するよ!
前回、パラボリックSARの概念についてまとめました。
パラボリックSARは、”時間”と”価格”の概念を兼ね備えたテクニカル指標であり、価格の動きが速ければ速いほどSAR(ドット)と価格間の収束が速くなります。
パラボリックSARの計算式については、前回ざっくりと解説しましたが、詳しく教えてほしいとの問い合わせがあったので、今回改めて取り上げてみます。
パラボリックSARの計算式は上昇時と下落時で少し異なります。
- 上昇トレンド時のパラボリックSAR=直近SAR+{直近AF ✕(直近EP ー直近SAR)}
- 下降トレンド時のパラボリックSAR=直近SARー{直近AF ✕(直近SARー直近EP)}
上の式にあるEPやAFの意味はこちら。
- EP…Extreme Point(極限点)。上昇トレンド中に価格が到達した最高値 or 下降トレンド中に到達した最安値。
- AF…Acceleration Factor(加速係数)。初期値は0.02(パラメータではステップと表示される)。EPが記録される毎に0.02ずつ増加し、最大で0.20となる。パラボリックSARの感度のようなもの。
ここまで理解したところで、実際にどのような計算になるかを具体的な数字を使ってトライしてみましょう。
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ワイルダーのグラフを元にパラボリックSARを計算するよ!
ここではワイルダーの原書であるNew Concepts in Technical Trading Systemsに使われていた図(グラフ)を元に計算します。
上の図(グラフ)では4日目のSAR(ドット)が50.00の位置にありますね。このSARを基準として計算していきます。つまり5日目〜のSARを算出することになります。
計算に必要な値は次の通り。
- 4日目のSAR…50.00
- EP(極限点:4日目までの最高値)…52.50
- AF(加速度係数)…0.02
では計算していきましょう。上昇トレンド時のパラボリックSAR計算式は以下の通りでしたね。
- パラボリックSAR=直近SAR+{直近AF ✕(直近EP ー直近SAR)}
4日目までの最高値は52.50であり、この価格から4日目のSARを差し引きます(以前のEP ー以前のSAR)。
52.50ー50.0=2.5
この値にAF(Acceleration Factor:加速係数)の0.02を掛けると…
2.5 ✕ 0.02=0.05
この値(0.05)を一つ前のSAR(50.00)にプラスします。
50.00+0.05=50.05
これで5日目のSARが計算できました。
まとめると…
SAR(5日目)=50.00+0.02(52.50 ー50.00)
SAR(5日目)=50.00+0.02 ✕ 2.50
SAR(5日目)=50.00+0.05
SAR(5日目)=50.05
5日目のSARは、50.05です。
6日目以降も同様に計算します。注意点は、高値を更新する毎にAFが0.02ずつ増加する点にあります。上の図でも、毎日高値を更新していますね。ですので、AFは毎日0.02ずつ加算していく必要があります。ちなみにAF値は、0.02から始まり上限20に達するまで、0.02ずつ増加します。
SAR(6日目)=50.05+0.04(53.00 ー50.05)
SAR(6日目)=50.05+0.04 ✕ 2.95
SAR(6日目)=50.05+0.12
SAR(6日目)=50.17
※0.04✕2.95=0.118ですが、切り上げて0.12として計算しています。
同様に7日目〜12日までのSARは以下の通り計算できます。
SAR(7日目)=50.17+0.06(53.50ー50.17)=50.37
SAR(8日目)=50.37+0.08(54.00ー50.37)=50.66
SAR(9日目)=50.66+0.10(54.50ー50.66)=51.04
SAR(10日目)=51.04+0.12(55.00ー51.04)=51.52
SAR(11日目)= 51.52+0.14(55.50ー51.52)=52.08
SAR(12日目)=52.08+0.16(56.00ー52.08)=52.71
そして、これらの値をチャート上に描写したものが、パラボリックSARになるわけです。
SARと価格間の収束がトレンドに合わせて加速する理由とは?
もしも、最高値を更新していない場合は、AF(加速度係数)はそのまま(=前回と同じ値)にします。最高値を更新している場合に限りAFを0.02ずつ増加させます(上限は20)。
もう一つの重要なルールとして、上昇トレンド時は当日のSARを前日(直近)のSARよりも下に配置しないこと。下落トレンド時も同様で、当日のSARを前日(直近)のSARよりも上に配置してはいけないとワイルダーは述べています。
1. If Long, never move the SAR for tomorrow above the previous day’s low or today’s low.
if the SAR is calculated to be above the previous day’s low or today’s low, then use the lower low between today and the previous day as the new SAR Make the next day’s calculations based upon this SAR.2.if Short, never move the SAR for tomorrow below the previous day’s high or today’s high: if the SAR is calculated to be below the previous day’s high or today’s high, then use the higher high between today and the previous day as the new SAR Make the next day’s calculations based upon this SAR.
直訳します。
1. ロングの場合は、翌日のSARを前日の安値または当日の安値よりも上に動かしてはいけない
SARが前日の安値または当日の安値を上回っている場合、前日と当日の安値を新しいSARとして使用し、このSARを元に翌日の計算を行うこととする
2.ショートの場合は、翌日のSARを前日の高値または当日の高値よりも下に動かしてはいけない
SARが前日の高値または当日の高値を下回っている場合、当日と前日の高値を新しいSARとして使用し、このSARを元に翌日の計算を行うこととする
上の2つのルールの結果、レートが高値を更新し続ける場合において、SARと価格間の収束が加速することになるのですね。
非常によく考えられたテクニカル指標であることが理解できます。