”商用EA”の「評価」に対するご質問をいただきました
先日、このブログの読者様からEA(自動売買システム)に対するご質問をいただきました。
シンギュラーコアFXで検索していたところ、こちらのレビューサイトにたどり着きました。
(中略)
他では高評価のシンギュラーコアFXの評価が低くて、ちょっと驚きました。他のレビューサイトでは高評価のEAが、このサイトではのきなみ低評価なので、どうしてなのか気になります。
GogoJungleには高評価のEAがたくさんあるのに、こちらのサイトでは全て一律に低評価というのがとても気になります。
EAに対してとてもネガティブな理由を教えて下さい。
※質問者様の了解をいただいて掲載しています。
ご質問者様のおっしゃるとおり、当サイトでは商用EAに対して厳しい評価をしています。ちなみに、最近発売されたEAのレビュー記事は以下の通り。
EA(自動売買)FX商材レビュー記事
- シンギュラーコアFX【検証とレビュー】
- シークレットセオリー・フルオートEA【検証とレビュー】
- 1万円からスタートできるユーロドルスキャルピングFX全自動売買ロボットEAメタトレーダーMT4【検証とレビュー】
- FX自動売買アトミックシステムα【検証とレビュー】
- FX自動売買スナイパー【検証とレビュー】
上に挙げたFX商材は、高額であるにもかかわらず、それなりの本数がセールスされた人気EAばかりです。バックテスト成績は申し分なく、中には驚異的なバックテスト結果(1億円超!)を掲載しているものもありますね。
【2024年5月版】優位性の高いFX商材 Best4
「市販のシステムで稼げない理由を教えるよ(笑)」by Tom Basso
投資のバイブルとも呼ばれる『新マーケットの魔術師: 米トップトレーダーたちが語る成功の秘密』。
アメリカの著名トレーダーのインタビュー集として構成された本です。多くの著名トレーダー(ソロス級トレーダー達)が登場するのですが、その中の一人が「Tom Basso(トム・バッソ)」。
Tom Bassoは、最低預かり資金が100万ドル(1億円超)のファンド運営によって驚異的な成績を継続的に上げ続けたことで、一躍有名になったトレーダーです。現在は引退しています。
彼がインタビューの中でとても興味深いことを語っています。
例えば、私のシステムをそっくりだれかに譲ったとしても、その人は、きっと1ヶ月もしないうちに自分の考えに合うようにシステムをいじりだすでしょう。どんな理由にしろ、他人のシステムには満足しないものです。
もし、システムをブラックボックス(非公開のルールに基づいて売買指示を出すコンピューター・プログラム)のまま渡せば、事態はもっと悪くなりますね。そのシステムで、トレーダーは気が変になってしまうでしょう。プログラムの中で何が行われているか分からないから、システムが損を出し始めると、そのシステムを使わなくなってしまうでしょう。
(中略)
それこそ、市販のシステムを買った人たちが儲けることができない理由なのです。もし、運良く、きちんと機能するシステムを買ったとしても、最初に負けサイクルが発生すると(どんなシステムでも負け続けることはある訳だが)、彼らには、システムを信頼して、じっと我慢することができないのです。
ブラックボックスのロジックを使い続けることの難しさについて言及していますね。
まさに、私が伝えたいことをそっくりそのまま答えてくれています。
誤解されては困るのですが、EAすべてを否定しているのではなく、「商用EA」に対してネガティブなだけです。
EA(自動売買システム)は非常に便利であり、優位性の高いロジックを組み込んだEAを作ることができるならば、それを稼働させて運用すること自体は投資スタイルの一つとして大いにアリだと考えています。
ただし、商用EAとなると別です。なぜなら商用EAは、ロジックがブラックボックスであることが多いからです。商用EAに限らず、ロジックが非公開のツール・システムを使うこと自体が投資活動においてとてもリスキーなのですね。
市販EAを使い続けることの難しさとは?
市販EAを購入して運用することの難しさは、このサイトで何度も繰り返し述べてきました。
市販EAを使う側のジレンマ
市販EAを購入し運用する側にもジレンマが存在します。
EAを可動させて利益が出ているときは全く問題はありません。しかし…そのEAがドローダウンをはじめたら?負けが続き、これまでの利益が日に日に削られていったら?あなたはそのEAを信頼して使い続けることができるでしょうか。
バックテストが右肩上がりだったとしても、稼働後にドローダウンが生じれば誰でも正気でいられません。なぜならリアルタイムに資金が減っていくからです。
(このまま稼働させ続けても大丈夫だろうか?)
(でもこれくらいのドローダウンは織り込み済みのはず…)
(また今日も負けた…)
(1週間連続で負け続けている!)
(そろそろEAを止めたほうがよくないか?)
(どんどん資金が減っていく…)
(まずい、このままでは追証だ…)
(EAを止める決断をすべきかも!)たとえ織り込み済み(想定範囲内)のDD(ドローダウン)であったとしても、気が気ではありません。
EAがドローダウンを切り抜けるだけの優位性を持っていたとしても、それをどこまで信頼できるのか。まさにドローダウンは運用者にとっての”踏み絵”です。EAを心の底から信頼して使い続けるには、一時的なドローダウンも耐えなければなりません。
あなたは耐えられますか?以下の状況(右肩下がり)でもEAを止めずに使い続けられますか?
耐えられないならば、やはり市販EA(他人が作ったEA)を使うべきではないということです。
ちなみに、上の「SCH-Trend system」が販売時に提示していたバックテスト結果がこちら。ご覧の通り素晴らしいテスト結果ですね。
ところが「SCH-Trend system」の実際のフォワード結果はこちら。
山あり 谷ありで、2016年10月以降は資金を減らし続けています。最終的にほぼゼロです。なんでしょうね、この徒労感。
商用EAの”残酷な現実”…100個の中で88個が3年以内に消滅
3年間のEA生存率はわずか12%…
さらに期間を伸ばしてみましょう。3年間、生存したEAは?
- 一本勝ち (2016年1月〜)PF:1.37
- White Bear Z USDJPY (2014年8月〜)PF:10.61
- BeeOne_USDJPY (2016年3月〜)PF:1.08
- BlackPanther USDJPY (2016年1月〜)PF:0.96
- ステディFX (2014年11月〜)PF:3.07
- 吹雪 (2016年9月〜)PF:2.50
50個中、わずか「6個」のEAが3年間を生き延びました。
3年間のEA生存率は12%です。つまり100個EAがあったとすれば88個は消滅したことになりますね。この数字を少ないと考えるか、多いと考えるかは人それぞれでしょう。
ただ、3年間生き残ったEAですら、購入者レビューが荒れているものが存在します。
一本勝ちは、「このEAの時代は終わった…」「一本負けに改名した方が良いのでは」「実績との乖離が…他の方もおっしゃっている通り、実際の成績はよくありません」「実運用では思ったような成績はあげません!」「フォワードと違いすぎる」
White Bear Z USDJPYは、「リアルとの結果が大きく違ってきます」「勝率3割を切ったので停止しました」
BlackPanther USDJPYは、「狩りに出て…狩られてしまう 全然、プラスにならない」「購入即破産」「これも設定と違うLotでエントリし始めた…損失が膨らんでいる」等など。
なにも商用EA全体を批判しているわけではなく、商用EA運用の難しさをお伝えしたいのです。
もはやEA運用は”娯楽”と同じ…
不確実性の増した相場において硬直的なストラテジーを持つEAを運用することの難しさをもっと理解するべき
もはや、8万円もの金額をEAに投じることは「道楽の世界」だ
投資ではなく娯楽として捉えれば8万円も高くない本来、EA(自動売買)は投資の一つとして考えられてきました。ただ、これまでの多くのEAの実態から分かる通り、長期の運用に耐えうるEAは非常に少ないのが現実です(現実的にはほぼゼロ)。
数年にわたって破綻に耐え、利益を出し続けることができるEAは、実にごくわずかです。最初から優秀なEAを選択することがいかに困難な行為であるか理解できるはず。
『FX自動売買アトミックシステムα』は8万円を超えるEAです。このEAが今後1年以上にわたって生き残るかどうか、誰にもわかりません。もはや8万円もの金額をEAに投じることは、道楽というか趣味に近いですね。
仮に投資と考えて8万円もの大金をEAに投じるのであれば、少なくとも8万円を超える利益を手にしなければ、その投資は大失敗ということになります。あなたは8万円を超える利益を手にする可能性があると考えていますか?あるとすれば、その根拠は?
不確実性の増した相場において、硬直的なストラテジーを持つEAを運用することの困難さは、少し考えればわかるはずです。
遅かれ早かれ、EA運用は”娯楽の一つ”になるでしょうね。
カーブフィッティングの”罠”から抜け出せないEA販売者
EA製作者が陥る「カーブフィッティングの罠」とは?
EAを自作する場合、大抵は以下の手順でおこないます。
- ロジックを考える
- ロジックをシステム化する
- バックテストをしてみる
- パラメーターを修正する
- 再度バックテストをする
- 以下繰り返し…
ロジックを考案し、EAを組み上げたら、バックテストをおこないます。その際にヒストリカルデータ(過去の相場の4本値)を用意します。何年分を用意するか?については製作者の考え次第です。各EAの特徴によっても必要とされるヒストリカルデータの量は異なります。
初回のバックテストでいきなり素晴らしい成績が出ることは稀です(但しナンピン系EAは簡単に右肩上がりの成績を出すことができます)。ドローダウンが大きかったり、左肩下がりのグラフになってしまうなど成績が振るわなければ、EAのパラメーターを調整します。そして再度バックテスト。その結果を見て、パラメーターを調整し、バックテスト。また結果を見てパラメーターを修正し…
この繰り返しです。そうこうしているうちに素晴らしい成績が出るときがあります。これが過剰最適化と呼ばれるカーブフィッティングです。
10年以上のヒストリカルデータを使って右肩上がりのEAを完成させたときは、「俺って天才?ついに聖杯を完成させたかも!?」などと勘違いしてしまいます。これがEA自作を始めたばかりのユーザーが陥る「カーブフィッティングの罠」です。
EA販売者の「ジレンマ」
さて、EA販売者が「カーブフィッティングの罠」に陥ってしまう原因は、EA制作におけるジレンマにあると考えています。
EA販売者のジレンマとは「長期のバックテストに耐えうるEAや、突出したバックテスト結果を出すEAは、過度にカーブフィッティングされてしまい実践でほとんど使えない」とわかっているのに、「バックテスト期間の短いEAや平凡な成績のEAは消費者に受け入れられにくい=売れない」という現実に板挟みされることです。
消費者は、長期的に機能するEAや派手な成績(「数年で1億円達成!」など)を求めがちです。過去1年(これからの1年)で利益を出せるEAよりも過去10年(今後10年)で利益を出し続けているEAのほうが優れていると考える傾向にあります。販売者はそのニーズに応えようと5年〜10年のバックテストに耐えうる(耐えているように見える)EAを作ろうとします。
過去1年のデータで利益を出すEAを作るよりも、過去10年のデータで利益を出すEAを作るほうが大変です。10年間の相場変動に対応するロジックを組む必要があるからです。
10年前の相場と1年前の相場(さらには未来の相場)は、全く別物です。それらすべての相場に対応できるロジックを組んで”利益を出そう”とすれば、EAはどんどん複雑化します(パラメーターの多重化)。複雑化したEAはカーブフィッティングの罠に陥りやすくなります。
一方、直近の相場(過去半年〜1年程度)に最適化したEAは、フォワードにおいても比較的機能しやすい傾向にあります。しかし5年〜10年のヒストリカルデータで走らせてみると破綻してしまう可能性が高くなります。5年前、10年前の相場と今の相場は全く異なるからです。
直近の相場(過去半年〜1年程度)に最適化したEAは、ユーザーからすれば賞味期限も短く感じられてしまい、受け入れられにくくなります。
同様に、売るために”突出した成績”を見せなければ消費者にアピールできない…というプレッシャーから、パラメーターをいじって直近のバックテスト成績(過去1〜2年)を派手に改ざんすることも行われます。もちろん、フォワードで通用するかどうかは不明です(というか、フォワードなどどうでもいいと考えている)。むしろ通用しない可能性のほうが高いわけです。
これがEA販売者のジレンマです。結局、消費者のニーズに応えるべくバックテストで右肩上がりの成績や突出した成績を出す(カーブフィッティングした)EAを製品としてリリースせざるを得ないのです。たとえフォワード成績がボロボロでも、です。
なかには意図的にカーブフィッティングさせたEAを販売する悪質な業者も存在します。ドローダウンに陥る箇所のヒストリカルデータを部分的に削除することで、バックテストデータ(Strategy Tester Report)を優秀に見せるという悪質手口もよく使われます。
これまでに多くの市販EAが、フォワード(実践)において右肩下がりの資産目減りや壊滅的なドローダウンによってゴミ箱行きする様を見てきました。その多くは輝かしいバックテストデータを持つものばかりでした。
結局、固定化したパラメーターでEAを長期的に機能させることは難しいのです(ナンピン系は別です)。常にそのときの相場に最適化させたパラメーターの調整が求められます。しかしそれをできるのはEA製作者だけです。
誰もが過剰なカーブフィッティングに陥る可能性を持っている
変化する相場に応じてパラメーターを調整する。直近の相場に最適化することで、今の相場で勝てるようにパラメターを調整する。実はこれも「直近相場にカーブフィッティングさせている」ことになります。
つまり長期のカーブフィッティングよりも短期のカーブフィッティングのほうが効果が認められる、ということです。レンジ相場が続くならば、レンジ相場に対応したEA(ロジック)を使い続けることで利益を出すことができます。上昇トレンドが続くならば、押し目を拾うようなロジックを使い続けることで、誰でも簡単に利益を積み上げられます。これらも広義ではカーブフィッティングといえなくもありません。
過去は無視できません。過去を無視すれば何を根拠にトレードすればよいのかその指標を失うことになります。過去から一定の傾向を分析して、仕掛けの根拠を導き出すことはトレードに不可欠です。それが優位性に繋がります。しかし過去データを元にした優位性(エッジ)を求めすぎるとカーブフィッティングの罠に陥ってしまいます。
硬直したトレードでは長期的に生き残ることは困難です。相場は常に変化しています。その変化応じて柔軟にトレードを変化させる適応能力が求められているのです。
購入者を平気で”人柱”にするEA販売者
フォワード結果は「皆無」…一度も飛んだことのない飛行機を買ってあなたが搭乗しいきなり操縦して飛ばすことと同じことだ
全ての商用EAに言えることですが、フォワード結果が全てです。どんなにバックテストが優れていても、フォワード成績が冴えない…という商用EAはこれまでに掃いて捨てるほど存在しました。
『シークレットセオリー・フルオートEA』のフォワード成績は、残念ながら全く公開されていません。つまり、購入者であるあなたが自腹でEAの優位性を検証をすることになるわけです。
言い換えれば、一度も飛んだことのない”飛行機”を売りつけられ、いきなりあなたが操縦して飛行させることと同じです。
「フィライトシュミレーターでは一度も墜落しませんでした!」
「だから(一度も実践飛行していなけど)あなたが操縦して飛ばしても大丈夫ですよ!」
「もし墜落したら、自己責任で…」と言われていることと何ら変わりないのです。これを「人柱」と言わずして何というのでしょうか?
本来ならば「販売前にまず開発者のあなたが搭乗して、1年くらい実地飛行して安全性を実証してみせてよ!」と言いたいですよね?
EA販売はもはや”時代遅れ”だ
EA販売そのものがもはや”時代遅れ”
一昔前(2010年台初頭)は、商用EAが雨後のタケノコのように販売されていました。ちょっとしたEAブームだったといえます。
EA販売を絡めたIB(Introducing Broker=スプレッドバック)、口座開設アフィリエイトが隆盛を極め、それこそ粗雑なEAを大量に販売し、IBで大儲けした悪徳業者が溢れかえっていた時代でした。
過剰なカーブフィッティングで過去成績を偽造したEAのクオリティは最悪で、フォワード成績はボロボロ…最悪の場合は口座破綻。
つまり、実際に勝てる(長期的に利益を上げられる)EAは、皆無だったわけです。(※一部の早朝スキャルEAはほんとうに勝てましたが、証券会社が使用を禁止したため姿を消しました。)
結果的に、EA販売に対する規制は厳しさを増し、現在に至るわけです。
投資助言代理業登録が必要であり、勝てなければボロカスに言われる。もはやEA販売は割に合わない商売といえます。
【結論】EAで稼げるのは、唯一”EAを自作できる人”だけ
身も蓋もない結論ですが、EAを活用してそれなりに稼げる人は、唯一”EAを自作できる人”だけです。
常にランダムに変動し続ける相場に、硬直的なシステム(EA)で対峙することの”愚かさ”に早く気付くべき
商用EA全般に言えることですが、ランダムウォークの相場に対して硬直的なEAで臨むことの”愚行”に早く気がついて欲しいです。いまや、優秀なEAですら常に変化する相場に合わせてパラメーターを細かく微調整したり、状況に応じて複数のEAを使い分けをしたり、EAポートフォリオを組むなどの様々な工夫がが求められる時代です。
無裁量の単一EAで1億7400万円が稼げると本気で信じているならば、残念ながらあなたは投資に向いていません。
市販EAを愚直に信じて使い続けても、今の相場で勝ち続けることは極めて困難です。
EAを自作することができ、また常に変化する相場に合わせてEAをチューニングできる人だけが、この世界で生き残れるのです。
EA販売そのものが時代についてこれていないように感じます。EAを売るよりも、優秀なEAを無料で配布して口座開設アフィリやライフタイムコミッションなどで稼ぐほうが今の時代に合っていますし、間違いなくその方が効率よく長期的に稼げるでしょうね。賢い人はすでにやっていますよ。