賛否両論!『エリオット波動理論』
多くのFXトレーダーをいまだ惹きつけてやまない『エリオット波動理論』。
エリオット波動理論が生まれたのは90年以上前(戦前)です。ところが一世紀近く経った現代でも、いまだ賛否両論ある投資理論としてよく話題になりますよね。FX情報商材の中にもエリオット波動理論を取り入れたものが多く存在します。
今回は、その『エリオット波動理論』を取り上げます。
”市場だけでなく人間行動や宇宙の法則だって俺の「波動理論」で説明できるぜ!”
1938年8月、Ralph Nelson Elliott(ラルフ・N・エリオット 1871~1948 米国)は、彼の3番めの著書(論文)である『The Wave Principle』の中でエリオット波動理論の骨子を提唱しました。
エリオットの当初の主張は以下の通り。
その後、エリオットは自身の理論を拡張させて、すべての集団的人間行動に適用しようと試みました。最終的には宇宙の法則をも、エリオット理論で説明できると考えるに至ったわけです。なんとも壮大ですね。
ただ、この晩年の主張が、エリオット波動理論の信ぴょう性を毀損したことは言うまでもありません。エリオット理論によって集団の行動や宇宙までも説明できるとの主張が、あまりにもトンデモ理論だったからです。
この手の大風呂敷的な主張を好まない人も少なくないでしょうね。
海外ではエリオット波動理論信者を「Elliotticians」と呼ぶ
海外では、エリオット波動理論を信奉するアナリストやトレーダーを、ひと括りにしてElliotticiansと呼んでいます。
「Elliott」に「ian」という形容詞(〜する人)を加えて、”エリオット波動理論実践者”とか”エリオット波動理論信者”という意味をもたせています。
- Music(ミュージック)→Musician(ミュージシャン)
- Technique(テクニック)→Technician(テクニシャン)
- Comedy(コメディ)→Comedian(コメディアン)
などと同じ使い方です。
Elliotticiansは造語ですが、呼び方は「エリオティシャンズ(複数形)」ですかね…。
Elliotticiansというフレーズをエリオット波動理論が自ら使うときは仲間意識そして自尊心の現れによるものであり、エリオット波動論否定派が使うときは、波動理論信者を軽蔑するとき(あいつらはElliotticiansだからね…など)に用いられたりするわけです。
海外でエリオット波動理論はどのように評価されているか?
さて、エリオット波動理論が海外ではどのように評価されているのでしょうか?
Elliotticiansという造語の存在からわかると思いますが、一定の熱烈な信奉者が存在しています。その一方で、彼らをカテゴライズして奇異の目で見る人々も数多く存在している。つまり日本とそれほど変わりない状況なのですね。完全に二分しています。
エリオット波動理論実践者は理論を100%信じているため、外野が何と言おうが聞く耳を持ちません。「Elliotticians」は、身内同士で波の解析に忙しく、経典(波動理論)を理解することに心血を注いでいます。ForexFactoryにも専用フォーラムが存在していますので、興味のある方は覗いてみてください。
一方、エリオット波動理論をたんなる机上理論である(=使えない)と判断しているトレーダーたちは、トンデモ理論を信じる彼らと一定の距離を置き、交わろうとしない。いわば水と油状態なのですね。分断されていると言えます。双方によるまともな議論がほとんど存在しないのです。
否定論者の主張はほぼ一貫しています。
- I’ve been told if you ask 10 Elliotticians about the future, you’ll get 10 different answers.(10人のエリオティシャンに未来について尋ねると、10通りの答えが返ってくるってよ 笑)
- Five different Elliotticians may have 5 different interpretations of the market’s current whereabouts and next move. (5人の異なるエリオティシャンは、マーケットの現状とその未来について5つの異なる解釈を持つ場合があるんだぜ)
- 10 Elliotticians will produce much more than 20 variations.(10人のエリオティシャンは、20以上のバリエーションを生み出すってよ!)
エリオット波動理論は、いかようにも都合よく解釈できる”こじつけ理論・後付け理論”であるとの主張ですね。
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エリオット波動理論の何が人を惹き付けるのか?
提唱から90年経過した現在でもいまだに評価が分かれるエリオット波動理論ですが、それにしても一体何がこれほどまでに人を惹き付けるのでしょうか?
理由はいくつか考えられます。
1.神秘性&ロマン
一つは、エリオット波動理論の神秘性です。万物を説明できる理論として構築されたエリオット波動理論。マーケットだけでなく市場を形成する人間の集団心理、はては宇宙の法則までもがエリオット波動理論で説明できる…という壮大さに惹かれるのではないでしょうか。
マーケットの不可解な動きを万物の法則によって解き明かすことができるのではないか?というところにロマンを感じる人が少なくないような気がします。
2.優位性(の錯覚)
もう一つは、エリオット波動理論の解釈の多さによる優位性の錯覚です。エリオット波動理論には上昇5波下降3波だけではありません。それ以外にも数多くの枝分かれしたロジックが存在します。
- ダイアゴナル・トライアングル
- エンディング・ダイアゴナル・トライアングル
- リーディング・ダイアゴナル・トライアングル
- シングルジグザグ
- ダブルジグザグ
- トリプルジグザグ
- レギュラーなフラット
- 拡大型フラット
- ランニングフラット
- 対称型トライアングル
- 上昇型トライアングル
- 下降型トライアングル
- 逆対称型トライアングル
1〜3が「上昇・下降波」の派生パターン、そして、4〜13が「調整波」の派生パターンです。ここまでくると、相場をいかようにも後解釈できるのですね。結果、エリオット波動理論が機能していると(優位性があると)錯覚しやすいのではないかと考えます。
3.ある種の優越感
言い過ぎかもしれませんが、エリオット波動理論信者たちは他の投資家が知らないor気付いていない法則(原理)を自分たちだけが知っている(理解している)…というある種の優越感を持っているのではいでしょうか?
目に見えない不思議な法則が機能するところを目の当たりにしたとき、人はその存在を認め頼ろうとする…スピリチュアルビジネスにも通ずるところがありますね。
世界は誰かに操られている…実は誰も月に行っていない…アメリカ同時多発テロ(911)はCIAによる自作自演だった…などの陰謀論を疑いもせず信じてしまう残念な人々と、エリオット波動理論信者が重なって見えます。
4.マーケットの不確実性
そして最大の原因は、マーケットの不確実性にあると考えています。エリオット波動理論が機能した(ように見える)相場もあるし、そうでない相場もある…つまり正解がないということです。相場に絶対的な正解がないからこそ、あらゆる理論が同時に存在し続けられるのですね。もしも相場に絶対的な正解があるならば、それを解き明かす理論は1つのはずです。まあエリオット波動理論に限らず、すべての理論に言えることですが…
特定の理論に傾倒しすぎずに、相場をフラットに見る目を養おう
もう少し、相場をフラットに眺められるようになれば、トレードはもっとシンプルになると思うのですが、どうなのでしょうね。特定の理論に傾倒しすぎることなく、市場にときおり現れるわずかな歪みが作り出する優位性をサクッと刈り取る。そのためにどんな準備をすれば良いのかを徹底的に考え続けることが大切であると考えます。