レバレッジには3種類の定義がある…だから混乱するのだ
FX初心者にとって難解なレバレッジ。
本来、正しい資金管理さえできていれば、レバレッジは意識する必要のないものです。しかしながら多くのFX初心者がレバレッジでつまづき、頭を悩ませます。
たくさん稼ぐには、やっぱりレバレッジを高くしないとダメなのかな?
海外FXにチャレンジしてみたいのだけど、200倍とか400倍のハイレバはリスクが高いのかしら?
このサイトで何度も解説していますが、レバレッジの高さはリスクとは直接関係しません。
関連記事
- 「海外FXのハイレバは危険!」は意図的に論点のすり替えが行われているというお話
- ポジションサイズと値幅が同じならば、レバレッジに関係なく損益額は同じである
- 「ハイレバは危険!やめとけ!」って言ってた奴、ちょっとこい
レバレッジを難しくさせている要因の一つが、『レバレッジの定義』がです。
誰かが「レバレッジ」の話をするときに、そのレバレッジが「何のレバレッジについて語っているのか?」がバラバラのケースがあるのですね。
レバレッジには少なくとも3つの種類が存在します。
レバレッジの定義(概念)は3つある
- 必要証拠金に対するレバレッジ
- 実効レバレッジ
- 最大レバレッジ
レバレッジの定義は少なくとも3つあるぞ!
① 必要証拠金に対するレバレッジ
② 実効レバレッジ
③ 最大レバレッジ
これらを分けて考える必要があるのじゃよ。
このサイトで何度かレバレッジの話をしましたが、それらはすべて『証拠金に対するレバレッジ』として語っています。
ところがネットで検索すると、ある人は『実効レバレッジ』をレバレッジとして解説していたり、FX会社は『最大レバレッジ』をレバレッジと呼んでいたりするのですね。
これではFX初心者は混乱します。
今回の記事では、3つのレバレッジ定義を詳しく解説していきます。
必要証拠金に対するレバレッジとは?(最も頻繁に使われている定義)
まずは、必要証拠金に対してどれくらいの倍率でポジションを保有するか?というケースで使われる『レバレッジ』。
以下の表をご覧ください。米ドル円(USD/JPY)1万通貨を取引するのに必要な証拠金がいくら必要か?をレバレッジ毎にまとめた表です(1ドル100円で算出)。
レバレッジ | 必要とされる証拠金 |
1倍 | 1,000,000円 |
5倍 | 200,000円 |
10倍 | 100,000円 |
25倍 | 40,000円 |
100倍 | 10,000円 |
200倍 | 5,000円 |
400倍 | 2,500円 |
1000倍 | 1,000円 |
1万通貨(100万円)を証拠金40,000円で取引する場合のレバレッジは25倍である…と読み取ることができます。あるいは、証拠金10万円でレバレッジを10倍にすれば1万通貨を取引することができる…と解釈することも可能です。
必要証拠金に対するレバレッジ
- 1万通貨(100万円)を証拠金40,000円で取引する場合のレバレッジは25倍である
- 証拠金10万円でレバレッジを10倍にすれば1万通貨を取引することができる
必要証拠金に対するレバレッジは、個人が(上限の範囲内で)自由に決めることができます。レバ1倍でも3倍でも、10倍でも25倍でも、各人の自由です。
レバレッジを高めれば必要証拠金の額は少なく済みます。逆にレバレッジを低く設定すれば、必要証拠金の額は多く用意する必要が生じます。下の表にある通りですね。
レバレッジ | 必要とされる証拠金 |
1倍 | 1,000,000円 |
5倍 | 200,000円 |
10倍 | 100,000円 |
25倍 | 40,000円 |
100倍 | 10,000円 |
200倍 | 5,000円 |
400倍 | 2,500円 |
1000倍 | 1,000円 |
※USD/JPY=100円での換算、1万通貨保有する場合で算出
日本国内のFX会社はレバレッジの上限が25倍とされているから、その範囲内でレバレッジを都度決めればOKじゃよ。
最大レバレッジとは?
先ほど、日本国内のFX会社はレバレッジは、金融庁によって25倍が上限と定められているとお伝えしました。
この上限25倍のことを『最大レバレッジ』と呼びます。
つまり最大レバレッジとは、FX証券会社が定めた上限のレバレッジであり、「このレバレッジ(倍率)まではOKですよ。」と定めたルールです。
日本のFX会社が定める『最大レバレッジ』は一律25倍ですが、海外FX会社では金融庁による規制がないため、会社ごとに異なります。
海外FX会社の最大レバレッジ
- XM…最大レバレッジ 888倍
- GEMFOREX…最大レバレッジ 1000倍
- iFOREX…最大レバレッジ 400倍
- Axiory…最大レバレッジ 400倍
ご覧の通りルールはバラバラですね。総じて国内FX会社よりもはるかに大きな最大レバレッジルールを儲けています。中には1000倍ものレバレッジが可能な会社もありますね。
海外FXのレバレッジが総じて高い理由は、規制がない場所(タックスヘイブン)に会社を作って、世界各国の規制を逃れているからじゃよ。
その点においては、不確かな会社が多いのも事実じゃ。
海外FXをめぐるトラブル
- サタンプロジェクトの巧妙な手口と被害の経緯
- ”FXSuitが詐欺業者である理由を述べる”…海外レビューサイトより
- Twitterで話題沸騰「さんすくみ投資法」を詳しく解説する【その1】
- Twitterで話題沸騰「さんすくみ投資法」を詳しく解説する【その2】
- 巨額FX情報詐欺事件の舞台になったRiselink FXは架空の業者か?
- 儲かってるのに出金できない!? 海外FX取引をめぐるトラブル
- 海外FX出資で1200億円集めたスカイプレミアムに証券取引等監視委員会が業務差し止め申し立て
- BOBOXでトラブル続出
実効レバレッジとは?
最後は『実効レバレッジ』です。やや聞き慣れないワードですね。
ただ、ネットで検索すれば『実効レバレッジ』というワードは比較的よく目にします。またFX会社によっては実効レバレッジを表示させる機能が備わったプラットフォームを提供している場合もあります。
さて、『実効』とは実際の効力という意味です。つまり『実効レバレッジ』とは実質的なレバレッジ(倍率)と読み取ることができますね。定義は次の通り。
実効レバレッジの定義
- 取引する通貨ペアや数量、純資産額をもとに算出した実質的な運用レバレッジのこと
FX会社によっては実効レバレッジを『運用レバレッジ』と呼んで解説しているケースもあります。
『実効レバレッジ』の計算式は以下の通り。
実効レバレッジの計算式
- 実効レバレッジ = ポジション評価額(ポジションサイズ ✕ レート) ÷ 全口座資産
例えば、あなたが30万円のお金をFX口座に入金しているとします。
USD/JPY(ドル円)を”1ドル=100円”で1万通貨保有した場合、ポジション評価額は次の通り。
ポジション評価額 = ポジションサイズ ✕ レート
=1万通貨 ✕ 100円
=100万円
実効レバレッジを計算します。
実効レバレッジ =ポジション評価額(ポジションサイズ ✕ レート) ÷ 全口座資産
= 100万円 ÷ 30万円
= 3.3(倍)
実効レバレッジは3.3倍です。
さて、この実行レバレッジですが、いったいどのような指標なのでしょうか?
計算式からわかることは、あなたの口座資金(あなたの余力)に対して、何倍の取引をしているか?ということです。
上の例では、30万円の資金(余力)に対して、約3倍の取引をおこなっていると解釈できますね。このことから、この実行レバレッジのことを『運用レバレッジ』と呼ぶ場合もあります。つまり口座資金に対してどれくらいの倍率で運用しているかを示しているわけです。
口座資金に対してどれくらいの倍率で運用しているかを示しているのが実効レバレッジ(運用レバレッジ)じゃよ。
実効レバレッジと必要証拠金に対するレバレッジは異なる点に注意!
ここで注意が必要です。実効レバレッジと必要証拠金に対するレバレッジは異なるという点です。例を出します。まずはAさん。
【Aさん】
口座資金30万円
必要証拠金4万円でドル円を1万通貨を取引した
Aさんの必要証拠金に対するレバレッジ、実効レバレッジはそれぞれ次の通り。
Aさん
- 必要証拠金に対するレバレッジ…25倍(1万通貨✕100円÷4万円)
- 実効レバレッジ…3.3倍(100万円÷30万円)
もう一つ例を出します。Bさんです。
【Bさん】
口座資金30万円
必要証拠金12万円でドル円を3万通貨を取引した
Bさんの必要証拠金に対するレバレッジ、実効レバレッジはそれぞれ次の通り。
Bさん
- 必要証拠金に対するレバレッジ…25倍(3万通貨✕100円÷12万円)
- 実効レバレッジ…10倍(300万円÷30万円)
必要証拠金に対するレバレッジと実効レバレッジは全く異なる指標であり、計算式も違います。
BさんはAさんに比べて3倍も実効レバレッジが高いですね。口座資金は同じでもポジションサイズが3倍違うからです
【2024年5月版】優位性の高いFX商材 Best4
実効レバレッジが高いと強制ロスカットまでの距離が短くなり危険!
さて、AさんとBさん、どちらがリスクの高い取引をしているでしょうか?必要証拠金に対するレバレッジはどちらも25倍です(…がポジションサイズが異なります)。
Aさん
- 必要証拠金に対するレバレッジ…25倍(1万通貨✕100円÷4万円)
- 実効レバレッジ…3.3倍(100万円÷30万円)
Bさん
- 必要証拠金に対するレバレッジ…25倍(3万通貨✕100円÷12万円)
- 実効レバレッジ…10倍(300万円÷30万円)
いうまでもなく、Bさんの方がリスクが高い取引をしています。口座資金(どちらも30万円)に対する取引量の総額がAさんの3倍もあるからです。
でも、どうして口座資金に対する取引量の総額が多い(実効レバレッジが高い)と、危険なのでしょうか?
それは証拠金維持率への影響度が大きいからです。つまり強制ロスカットまでの距離が短いことを意味します。
万が一Aさん、Bさんがどちらも損切りに合ってしまったら…
Aさんの場合(実効レバレッジ3.3倍)
- 資産30万円、証拠金4万円で1万通貨を取引(レバ25倍)
1円下落で損益は▲10,000円
資産30万円に対する損失の割合は…3.3%
証拠金維持率の変化…750%➔725%
Bさんの場合(実効レバレッジ310倍)
- 資産30万円、証拠金12万円で3万通貨を取引(レバ25倍)
1円下落で損益は▲30,000円
資産30万円に対する損失の割合は…10%
証拠金維持率の変化…250%➔225%
Aさんは証拠金維持率が750%から725%へ変化。一方のBさんは250%から225%への変化。もともとのスタートがBさんのほうがかなり低いですよね。つまりロスカットまでの距離が短いことを示しています。
実効レバレッジによって”レート逆行に耐えられる幅”=”ロスカットラインまでの距離”が異なるのですね。
仮に100%を強制ロスカットラインと定めた場合、Aさんは26円の下落に耐えられますが、Bさんは18円下落でロスカット発動となります。
※厳密に計算する場合、証拠金維持率を算出するためのポジション必要証拠金額はリアルタイムで変動するため、実際の数字は異なります。ここでは分かりやすく計算を簡略化して解説しています。
実効レバレッジの目安は3倍程度…
大前提として、実効レバレッジは各FX業者が定めた最大レバレッジ(日本では25倍)を越えることはできません。つまり日本国内で許可を受けているFX会社では、どれほど実効レバレッジを高くしようと25倍以上は設定不可です。
実効レバレッジは高くすればするほど、リスクが大きくなります。口座資金に対してどれくらいの倍率で運用しているかを示すわけですから、10倍もの実効レバレジをかけているということは、すなわち…30万円の口座資金に対して、300万円のポジションを保有していることを意味します。
ではどれくらいの実効レバレッジが妥当なのか…?
一般的には3倍前後と言われています。多くの国内FX会社が、”実効レバレッジは3倍程度に抑えましょう”と推奨しています。つまり、30万円の資金ならば、最大90万円のポジションまでとする(複数ポジションを持っている場合はその合計)ということ。
とはいえ、結局のところ、手持ち資金に対して一度に許容できる損失を計算し、そこから適切なポジションサイズを導き出せば、そもそも実効レバレッジなど考える必要はありません。
つまるとこと、オーバー(過剰)ポジションをしないこと…資金管理はこれに尽きます。
結局は、最適なポジションサイズに行き着くのじゃよ。