「ハイレバは危険!やめとけ!」っていう風潮、いいかげんやめませんか?
前回の記事『ポジションサイズと値幅が同じならば、レバレッジに関係なく損益額は同じである』において、レバレッジなど考えなくて良い(意識しなくてOK)とお伝えしましたが、以下のようなご質問をいただきました。
高レバレッジをかけることは、リスクが高いという意味でしょうか?
ハイレバレッジが危険…という解説をよく見かけますが、レバレッジが損益に関係しないということは、レバレッジが高くてもリスクは同じと考えてよいのでしょうか?
レバレッジについて調べれば調べるほど混乱するFX初心者が多いようです。実際のところ、ハイレバについてはネットでも様々な解説・解釈がなされています。
例えば「ハイレバは危険」と主張する人々は…
ハイレバは危険と主張する人々
- ハイレバは大損するから危険!絶対にやめたほうがいい!
- 海外FX会社のハイレバ(500倍、1000倍)はリスクが高すぎる!
- ハイレバだと大量のポジションが持ててしまうから危険!
- レバレッジが高いとすぐにロスカットされるから危険!
- ハイレバでロスカットされたら資金が一気に減ってしまうから危険!
- 指標時にレートが飛んだときにハイレバだとロスカットリスクが高まるから危険!
- 口座資産に対してのレバレッジ(実効レバレッジ)を高めると危険!
等など、説得力のあるのかないのかわからない論調で語られます。
一方で、「ハイレバ?なんで危険なの?正しく運用すれば安全だよ!」との主張も少なくありません。
ハイレバは安全と主張する人々
- ハイレバは全然危険じゃないよ!
- 海外FXのハイレバのほうが安心してトレードできる!
- ハイレバでも適切なロット数で取引すれば安全!
- SLを管理できているならハイレバでも安全!
- ハイレバは証拠金が少なく済むからむしろ便利!
- ハイレバはロスカットされにくいから安全!
- ハイレバじゃないと儲からない!
- 口座に余裕を持たせればハイレバで取引しても安全!
FX初心者からすれば「安全なのか、危険なのか、一体どっちなんだよ!」と癇癪を起こしてしまいそうです。
ハイレバは、安全なのか危険なのか、一体どっちなの?
頭が混乱しちゃうよ…
前回の記事ではレバレッジについて言葉足らずだったかもしれませんので、今回はかなり詳しくレバレッジの本質を解説していきます。
”ハイレバにすると損失も大きくなって危険”は正しくない
レバレッジをわかりにくくさせている最大の原因は、FX取引における様々なリスクが複雑に絡み合っているからです。
わかりやすくするためにFXリスクを2つに分けてみます。
- お金が減るスピード(リスクA)
- 強制ロスカット(リスクB)
※以下、概念として解説しますので細かいディテールは省いています。
1.お金が減るスピード(リスクA)
まずはあなたの口座のお金が減るリスクについてです。
結論から言えば、お金が減る(あるいは、増える)スピードに直接影響するのは、ポジションサイズ(=ロット数)と値幅の2つだけです。
お金が減る(あるいは、増える)スピードに直接影響する要素
- ポジションサイズ(ロット数)
- 値幅(pips)
意外かもしれませんが、レバレッジ(倍率)はお金が減る(あるいは、増える)スピードに全く影響しません。
FX初心者はピンとこないですよね。具体的に見てみましょう。
例)1ドル=100円、1万通貨(100万円)を売買する場合、1円下落したら(100円➔99円)どうなる?
- 証拠金10万円で取引(レバ10倍)…1円下落で損益は▲10,000円
- 証拠金5万円で取引(レバ20倍)…1円下落で損益は▲10,000円
- 証拠金2万円で取引(レバ50倍)…1円下落で損益は▲10,000円
レバレッジが10倍でも20倍でも50倍でも、1円の下落で被る損失は▲10,000円です。つまりレバレッジが大きくなってもロット数が同じならば損失は同じなのですね。
逆にロット数や値幅が異なると…?
- 証拠金10万円で10,000通貨を取引…1円下落で損益は▲10,000円
- 証拠金10万円で1,000通貨を取引…1円下落で損益は▲1,000円
- 証拠金10万円で1,000通貨を取引…10円下落で損益は▲10,000円
ロット数が10分の1になれば1円の下落で損益は▲1,000円、つまり10分の1です。ロット数が10分の1でも10円の下落(10倍の下落幅)ならば損益は▲10,000円です。
つまり、お金が減るスピードに直接影響するのは”ロット数”と”値幅”のみなのです。レバレッジは直接的には影響を与えません。
お金が減るスピードという観点から見たとき、”レバレッジを高くすると損失も大きくなって危険”は正しくないのですね。
”レバレッジを高くすると損失も大きくなって危険”は、実は正しくないのじゃよ。
レバレッジを大きくしても損失は大きくならないんじゃよ。
2.強制ロスカット(リスクB)
次に強制ロスカットリスクを考えてみましょう。
レバレッジの大きさは証拠金に対する損失の大きさ、つまり”証拠金維持率”に影響を与えます。そして証拠金維持率が下がれば強制ロスカットリスクが高まります。
例)ドル円=100円、1円下落したら(100円➔99円)どうなる?
レバレッジ10倍の場合
- 資産30万円、証拠金10万円でレバ10倍で取引(1万通貨)
1円下落で損益は▲10,000円
資産30万円に対する損失の割合は…3.3%
証拠金維持率の変化…300%➔290%
レバレッジ50倍の場合
- 資産30万円、証拠金10万円でレバ50倍で取引(5万通貨)
1円下落で損益は▲50,000円
資産30万円に対する損失の割合は…16.6%
証拠金維持率の変化…300%➔250%
レバレッジ100倍の場合
- 資産30万円、証拠金10万円でレバ100倍で取引(10万通貨)
1円下落で損益は▲100,000円
資産30万円に対する損失の割合は…33.3%
証拠金維持率の変化…300%➔200%
レバレッジ200倍の場合
- 資産30万円、証拠金10万円でレバ200倍で取引(20万通貨)
1円下落で損益は▲200,000円
資産30万円に対する損失の割合は…66.6%
証拠金維持率の変化…300%➔100%(危険水域!)
※証拠金維持率=資産評価額 ÷ 取引必要証拠金 ✕ 100 (ここでは簡略化した計算式を使用)
投入する資金(証拠金)に対してどれだけ大きなポジション(ロット)を抱えることができるか?…という部分に影響を与えるのがレバレッジ。
10万円の証拠金に対してより大きなポジション(10万通貨、20万通貨)を取ろうとすれば、当然レバレッジは高くなります。
ポジションサイズが大きくなれば、1円の下落で被る損失額(含み損)が大きくなってしまいます。当然ですね。なぜならポジションサイズはお金が減るスピードに直接影響するからです。
損失額(含み損)が大きくなれば、証拠金に対する損失額(含み損)の割合も見過ごせなくなり、証拠金維持率がFX会社の基準を下回れば強制ロスカット発動となります。
※証拠金維持率(ロスカットライン)はFX会社によって異なりますが概ね50〜100%です。
証拠金維持率がFX会社の基準を下回れば、強制ロスカット発動じゃ。
つまり、ここでもポジションサイズ(ロット数)が証拠金維持率に影響を与えていることになります。レバレッジはポジションサイズに間接的に影響を与えているにすぎません。少ない証拠金で大きなポジション(多くの通貨)を保有しようとすると結果的にレバレッジが大きくなるのですね(=ハイレバレッジ)。
結局は資金量とポジションサイズのバランスがリスクを左右する
ただし、ハイレバであったとしても、資産(預託金残高)を増やせば、証拠金維持率までの距離は遠のきます。
以下の例をご覧ください。
レバレッジ200倍の場合
- 資産30万円、証拠金10万円でレバ200倍で取引(20万通貨)
1円下落で損益は▲200,000円
資産30万円に対する損失の割合は…66.6%
証拠金維持率の変化…300%➔100%(危険水域!)
資産(預託金残高)30万円のケースですね。レバレッジ200倍で1円下落すると証拠金維持率は100%まで下がりました。
ところが、同じ条件で資産(預託金残高)を100万円まで増やしてみると…?
レバレッジ200倍の場合(資産を30万円から100万円に増やした…)
- 資産100万円、証拠金10万円でレバ200倍で取引(20万通貨)
1円下落で損益は▲200,000円
資産100万円に対する損失の割合は…20%
証拠金維持率の変化…1000%➔800%
1円下落しても証拠金維持率は800%を維持できてきます。まだまだ余力がありますね。口座に余裕を持たせただけで、ハイリスクから低リスクになりました。
つまるところ、ハイレバがリスクなのではなく資産に対する適切なポジションサイズを考慮しないことがリスク(危険)なのです。
強制ロスカットリスクという点から見れば、”資金量を考慮せず、むやみにレバレッジを高くすると証拠金維持率に影響するので危険度が高まる”が正しいのです。
ハイレバレッジは、証拠金維持率の点から見れば、リスクが高いと言えなくもない。
じゃが、結局は資金量とのバランス次第なのじゃ。
「ハイレバ=ハイリスク」ではない!「オーバーポジション=ハイリスク」が正しい!
まとめると以下の通り。
ハイレバは危険か?
- お金が減るスピードに直接影響するのは”ポジションサイズ(ロット数)”と”値幅”のみであり、レバレッジは無関係。
- 強制ロスカット(=証拠金維持率)に直接影響を与えるのはレバレッジではなく”ポジションサイズ”である。
- ポジションサイズを正しくコントロールできていれば、ハイレバは危険ではない。
つまり、「ハイレバ=ハイリスク」ではないのです。「オーバーポジション=ハイリスク」が正しい認識です。
ハイレバが危険なのではなく、自分の資金量を考慮しない無謀なハイレバ(ポジションサイズを大きくする行為)が危険なのですね。
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ポジションサイズ(ロット数)とレバレッジを分けて考えよう
FX初心者はポジションサイズ(ロット数)とレバレッジを整理して考えてないので混乱しがちです。まずは分けて考えるクセをつけましょう。
ポジションサイズ(ロット数)とレバレッジの関係性は次の通り。
ポジションサイズ(ロット数)とレバレッジ
- ポジションサイズ(ロット)と値幅が同じならばレバに関係なく損益額は同じ
- 損益額に直接影響するのはポジションサイズ(ロット)と値幅のみ
- 値幅が同じでポジションサイズ(ロット)が10倍変われば損益額も10倍変わる
- 証拠金が同じならばポジションサイズ(ロット)を増やせばレバも高くなる
もっと突き詰めれば以下の1文だけを覚えればOK
FXリスクにおける究極の1つの法則
- FX取引リスクにダイレクトに影響を与える最大の要因は”ポジションサイズ(ロット数)”である
この一文だけを覚えておけばとりあえずFXにおける取引リスクを正しく理解できていることになります。
ここまで読んでいただければ、
レバレッジはどうでもいい…
レバレッジは意識する必要がない…
と述べた意味を理解してもらえると思います。
トレードにおいて重要なことは、レバレッジを意識しながらのトレードではありません。ましてやロスカットギリギリまで持ちこたえるハラハラ・ドキドキのトレードなどではないのです。
あなたの資金量から一回の取引で許容できる損失額を算出し(例えば1〜2%)、その金額から適切なポジションサイズを導き出して慎重にトレードすることこそが、相場で生き延びるために欠かせない大切なスキルです。
ハイレバ規制ではなく、高ロット規制をすべきだった…?
ご存知のように、日本国内では2011年に8月にFXのレバレッジが25倍に規制されました。
ここまでの話を理解している方ならば、この規制がほとんど意味がないと気付くはず。もちろん不勉強な投資家による盲目的なハイレバトレードを制限することには一定の効果があったでしょう。
しかし、本質的な観点から見れば、規制すべきは大量ロットによる無謀・無計画トレードです。
なぜならFX取引リスクにダイレクトに影響を与える最大の要因は”ポジションサイズ(ロット数)”だからです。ハイレバは副次的な要素に過ぎません。
各ユーザーの資金量や投資スキルに応じた適切なポジションサイズをFX会社側がコントロールしてあげることで、はじめて個人投資家のFXリスクが軽減される…本気で投資家保護を考えるならば、”ポジジョンサイズの適切な管理・規制”こそ国(金融庁)が取るべき施策ではないでしょうか。
ハイレバ?資金管理ができるならやっても問題ないよ
10ロット保有しようが、20ロット保有しようが、レバレッジは別の次元の話です。証拠金10万円で10ロット保有する、あるいは10万円で20ロット保有するとなった場合、初めてレバレッジが関連してきます。
あなたの資金が少なく、だけど大きなロットで勝負したいのであれば、レバレッジを高くする必要があります。大きなロットならばお金が増える(& 減る)スピードが早くなります。
そのポジションサイズでSL(ストップロス)にかかったときにどれくらいの金額を失うのか?そして、ロスカットラインまでの余力はどれくらいあるのか?この2点を正しく管理することさえできていればハイレバ取引も全く問題ありません。
SLやロスカットラインを適切にコントロールできる自信とスキルがあるならばハイレバ取引にチャレンジしてみてください。
さて、最初にいただいた質問は、こちらでしたね。
高レバレッジをかけることは、リスクが高いという意味でしょうか?
ハイレバレッジが危険…という解説をよく見かけますが、レバレッジが損益に関係しないということは、レバレッジが高くてもリスクは同じと考えてよいのでしょうか?
対する答えはこちら。
レバレッジが違ってもポジションサイズと値幅が同じなら損益額は同じじゃよ。
ハイレバが危険なのではなく、身の丈に合わないロット数を保有すること(オーバーポジション)が危険なのじゃよ。
「ハイレバは危険!やめとけ!」っていう風潮、いいかげん止めましょう。