Aさんがロスカット回避するためには、何が必要だったのか?
FX初心者がやりがちな”強制ロスカット発動”の事例とは?にて、ロスカットの典型的なパターンを取り上げました。
1ドル=100円で10,000通貨を取引開始
【Aさん】(FX初心者)
口座には5万円を用意しています。ドル円(USD/JPY)を1ドル100円で10,000通貨(100万円分)購入します。
必要証拠金は4万円にします(レバレッジは25倍)。
とりあえずお小遣いの5万円を用意したAさん。レバレッジは最大の25倍で取引をしたいと考えています。…よくありそうなパターンですよね。
1ロット(10,000通貨)を最大レバレッジ25倍で取引するときの必要証拠金は4万円です。
口座資金5万円に対して4万円をぶっこむ時点でハイリスク(3倍程度がベターとされる実効レバレッジは、なんと20倍!)であることがわかりますが、Aさんは初心者なので理解していません。
取引開始直後の証拠金維持率を計算してみましょう。
有効証拠金
=50,000円+(含み益 or 含み損)
=50,000円+0円
=50,000円証拠金維持率(%)
=(有効証拠金 ÷ 必要証拠金)✕100
=(50,000円÷40,000円)✕100
=125%証拠金維持率は125%です。100%に近い時点で、すでに証拠金維持率が危険水域にあることがわかりますね。
1ドル=97.33円まで下落…
Aさんの思惑とは反対に、ドル円は97.33円まで下落してしまいました。2円67銭もの下落です。
わちゃー! 2円67銭も下がっちゃったよー(汗)
途中で損切りも考えたのですが、(もしかしたら戻るかも…)という自分勝手な思い込みが損切りを躊躇させてしまうことに…。
結果的に、レートは2円67銭も下落。
このときのAさんの証拠金維持率を計算してみます。
含み損
=▲2.67円 ✕ 10,000通貨(1ロット)
=▲26,700円有効証拠金
=50,000円ー含み損
=50,000円ー26,700円
=23,300円必要証拠金
=97.33円✕10,000通貨÷25
=38,932円証拠金維持率
=(有効証拠金 ÷ 必要証拠金)✕100
=(23,300円÷38,932円)✕100
=59.85% ←60%を下回った!
↓↓↓↓
Aさんのポジションに対しロスカット発動(外為ジャパンFXルール)!Aさんの証拠金維持率は59.85%です。外為ジャパンFXのロスカット発動条件である60%を下回りました。つまり強制ロスカット発動です。Aさんのポジションは強制的に(自動的に)に決済されます。
さて、このAさんですが、なぜ強制ロスカットという残念な結果になってしまったのでしょうか?その原因を見極めることで、ロスカットを回避することができる糸口がつかめるはずです。
Aさんを反面教師とすれば、ロスカットを避ける方法が見つかるのじゃよ。
一緒に考えてみよう。
主な原因は3つあります。
- ルールを無視したいいかげんなトレード
- 適切なポジションサイズではなかった
- 損失許容額からポジションサイズを決めなかった
原因その1:ルールを無視したいいかげんなトレード
まずは、Aさんに明確なトレードルール(シナリオ)がありませんでした。
シナリオとは、以下のような自分で定めたルールです。
- レートが○○円になったら買いでEntryする(なぜなら…だから)
- 含み益が○○円(○○pips)になったら利益確定する(なぜなら…だから)
- 含み損が○○円(○○pips)になったら損切りする(なぜなら…だから)
仕掛けと手仕舞いの基準と、ベースとなる根拠。最低限この2つはシナリオに欠かせません。
Aさんは、(取り敢えずこれから上昇しそうだから買いでEntryしてみよう…)という根拠のない思い込みで取引を開始しています。シナリオがないため、利益確定も手仕舞いも完全に運任せ・勘任せとなってしまいます。
レートが逆行したときに損切りラインを明確に定めていなければ、「損失回避バイアス」が働いてしまい、結果的に傷口を大きくしてしまうのですね。
Aさんは、明確な取引ルールを作ってからエントリーすべきだった
Aさんはどうすれば良かったのか?まずは明確な取引ルールを作ってからポジションを持つようにすることです。なんならノートに手書きでルールを書き記すくらいでも良いです。
30分足で長期移動平均線を短期移動平均線が上抜けた、200日移動平均線も上昇傾向にあるから、ここは買いでEntryのチャンスだ。
損切りは移動平均線のデッドクロス、もしくは▲20pipsライン。利益確定は損切り幅の1.5倍としよう。
一例ですが、最低でもこのくらい(↑)のシナリオは作るべきです。
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原因その2:適切なポジションサイズではなかった
Aさんの口座資金とポジションサイズが極めてアンバランスであったことも、ロスカットの原因となっています。
【Aさん】(FX初心者)
口座には5万円を用意しています。
ドル円(USD/JPY)を1ドル100円で10,000通貨(100万円分)購入します。
必要証拠金は4万円にします(レバレッジは25倍)。
口座資金5万円に対し、100万円(10,000通貨)ものポジションを保有してしまっています。このことは実効レバレッジ(運用レバレッジ)を計算すれば明確です。
実効レバレッジの計算式
- 実効レバレッジ = ポジション評価額(ポジションサイズ ✕ レート) ÷ 全口座資産
実効レバレッジは、あなたの口座資金(あなたの余力)に対して、何倍の取引をしているか?を明確にするための指標であり、FX初心者は3倍前後が安全ラインとして推奨されています。
一方、Aさんの実効レバレッジは…
=ポジション評価額(ポジションサイズ ✕ レート) ÷ 全口座資産
= 100万円 ÷ 5万円
= 20(倍)!
なんと!20倍です。Aさんの取引が適正を欠くオーバーポジションだったことがわかりますね。
Aさんは、実効レバレッジから逆算するべきだった
ではAさんはどうすれば良かったのか?
適正とされる実効レバレッジから逆算すれば、Aさんが保有できるポジションサイズは15万円です(実効レバレッジ=3倍)。もちろん自身のスキルに応じて5倍でも10倍でも良いのですが、まずは3倍前後を目安とします。
15万円が上限とすれば、10,000通貨など絶対に取引できません。1,000通貨(0.1ロット)、2,000通貨(0.2ロット)がギリギリですよね。
仮に2,000通貨(0.2ロット)で取引するならば、Aさんの実効レバレッジは以下の通り。
=ポジション評価額(ポジションサイズ ✕ レート) ÷ 全口座資産
=(2,000通貨✕100円)÷ 5万円
= 20万円 ÷ 5万円
= 4(倍)
実効レバレッジは4倍まで下がりました。
実効レバレッジ4倍ならば、たとえ2円67銭もの暴落が起きても証拠金維持率は安全圏を維持できます。
仮に2円67銭下落したときのAさんの証拠金維持率がどうなるか、計算してみましょう。
含み損
=▲2.67円 ✕ 2,000通貨(0.2ロット)
=▲5,340円
有効証拠金
=50,000円ー含み損
=50,000円ー5,340円
=44,660円
必要証拠金
=97.33円✕2,000通貨÷25
=7,786円
証拠金維持率
=(有効証拠金 ÷ 必要証拠金)✕100
=(44,660円÷7,786円)✕100
=573%
Aさんの証拠金維持率は573%です。2円67銭もの大暴落が発生しても証拠金維持率は500%を超えています。ロスカットライン(50%〜60%)まで程遠い安全圏であることがわかりますね。
原因その3:損失許容額からポジションサイズを決めなかった
3つ目の原因は、Aさんの資金管理が杜撰(ずさん)だったことです。2番目の原因(=適切なポジションサイズではなかった)とも関係しています。
Aさんは、損失許容金額からロット数(ポジションサイズ)を算出するべきだった
FX初心者であるほど、損失許容金額からロット数(ポジションサイズ)を算出するべきなのですが、Aさんには完全に抜け落ちていましたね。
損失許容額からロット数(ポジションサイズ)を算出する方法については次の通り。
大切なことは、1取引における損失許容金額からロット数(ポジションサイズ)を算出する手順を踏むことです。
まず自分の損失許容金額(1回の取引で失っても問題ない金額)を決めます。例えば、総資金の2%など。
【FX】ATRと2%ルールで資金管理する方法を具体的に解説するよ!ATRで資金管理する方法を初心者にもわかりやすく解説するよ! ATRの有用性についてはこのサイトで幾度となく解説してきました。 ATR(Average True Range)よく聞くけど何なの?教えて...10万円の元手ならば、その2%、つまり2,000円ですね。まずは、一度の取引で負けても問題ない金額が2,000円であると決めます。
次に損切り幅(SL)をpipsで確認します。SL幅は手法やスタイル、リスクリワードによって各自異なりますので、都度決めましょう。
一例として、SLを20pips(0.2円)とします。
USD/JPY(米ドル円)における1pipsは、0.01円(1銭)じゃから、20pipsは0.2円じゃよ。
損失許容額(2,000円)と損切り幅(20pips=0.2円)がわかれば、適切なポジションサイズを計算できます。
ポジションサイズ
=許容損失額÷損切り幅
=2,000円÷0.2円
=10,000つまり、10,000通貨(1ロット)が適切なポジションサイズとなるわけです。
損失許容額と損切り幅から、適切なポジションサイズを算出するのじゃよ。
先の例では損切り幅は50pipsでしたね。10万円の資金に対して2%の損失許容額を設定していたとします。SL幅は50pipsですので0.5円です。適切なポジションサイズは…
ポジションサイズ
=許容損失額÷損切り幅
=2,000円÷0.5円
=4,000つまり、4000通貨(0.4ロット)が適切なサイズとなります。
※ロットの単位(定義)はFX会社によって異なります。ここでは1ロット=10,000通貨で解説しています。
Aさんの資金が5万円であり、2%ルールに基づくならばAさんの損失許容額は1,000円です。そして損切りラインを▲20pips(▲0.2円)に置くならば、Aさんの適切なポジションサイズは以下の通り。
=許容損失額÷損切り幅
=1,000円÷0.2円
=5,000通貨(0.5ロット)
損失許容額から算出したAさんの最適なポジションサイズは5,000通貨(0.5ロット)となります。
重要なポイントが1つあります。適切なポジションサイズは損失許容額と不可分であるということ。つまり、損失許容額が5,000円(損切り幅が20pips)と決めているからこそ、5,000通貨の取引が可能なのです。ここは絶対に無視してはいけません。
損失許容額(損切り幅)を明確に定めた上であれば、たとえ実効レバレッジが高くてもリスクは抑えられるということじゃよ。
あれ?
さっきは2,000通貨(0.2ロット)が適切だと計算してたけど、今度は5,000通貨(0.5ロット)が適切なポジションサイズなの?
どっちが正しいのさ?
良いところに気がついたのー!
資金管理の考え方としてはどちらも正しいのじゃ。
最終的には、実効レバレッジと損失許容額のバランスを考えつつ決めることをおすすめするぞ。
仮に20pips(0.2円)の下落があって2,000円で損切りをした場合、Aさんの証拠金維持率はどうなるか計算してみましょう。
含み損(損失許容額)
=▲0.2円 ✕ 10,000通貨(1ロット)
=▲2,000円(←10万円の2%)
有効証拠金
=50,000円ー含み損
=50,000円ー2,000円
=48,000円
必要証拠金
=99.80円✕10,000通貨÷25
=39,920円
証拠金維持率
=(有効証拠金 ÷ 必要証拠金)✕100
=(48,000円÷39,920円)✕100
=120%
Aさんの証拠金維持率は120%です。仮に追証(追加証拠金)発生条件が100%ならば、けっこうギリであることがわかりますね。
ならば、やはり口座資金5万円に対して1万通貨(1ロット)取引はオーバーポジションであると判断できます。なんといっても実効レバレッジが20倍ですからね。
実効レバレッジを10倍以内(できれば5倍以内)に抑えつつ、1度の取引における損失許容額から損切り幅を算出する…この資金管理が最も安全であることがわかります。
1.実効レバレッジを5倍以内におさえること。
2.そして損失許容額を2%以内におさえること。
この2点さえしっかり守れば、とりあえずは資金管理としてはまずまずじゃよ。