『1日10pips手法』があなたの口座を破壊してしまう理由…
1日10pips手法の元祖|Hoosain Harneker(フーサイン・ハーネカー)のトレード戦略を紹介するよ!にて、10pips戦略を解説しました。
1日10pips勝ったらその日のトレードは終了。毎日10pipsを積み上げるだけでたった1年(240日)で160倍に膨れ上がる(複利)という驚くべき手法です。コツコツ10pipsを複利で積み上げるだけで短期間で大金を稼げるというのは魅力的です。
1日に10pipsだけ勝てばいいなんて簡単すぎる!しかも複利で継続すればあっという間に10倍だ!聖杯かよ!…と思いがちですよね。
実はそんな簡単な話ではありません。1日10pips戦略があなたの取引口座を破壊してしまう可能性があることも知っておくべきでしょう。
今回は、1日10pips手法の見えざるリスクについて解説します。
いびつなリスクリワードバランス
1日10pips戦略の元祖、Hoosain Harneker(フーサイン・ハーネカー)らが実践してきた手法の最大の特徴はTP(利益目標)に対して極端に大きなSL(損切り幅)です。
Hoosain Harneker(フーサイン・ハーネカー)の手法こそ、リスクリワードは2対1程度、つまり損切り20pipsに対し利幅は10pipsです。
中には、リスクリワード5対1や9対1(損切り90pips、利幅10pips)のような、いびつなリスクリワードバランスを採用した手法も多くみられます。わずかな利幅を目指す戦略の多くがその数倍のストップロスを設定しています。つまり損大利小ですね。
目標利幅10pipsへの到達のためには、深いストップが不可欠です。なぜなら10pipsの動きそのものがノイズだからです。ノイズを刈り取るためには、逆側のノイズで刈り取られないことが不可欠。つまり利幅と同程度のSLでは即座に刈り取られてしまうということ。少なくともTPの数倍以上の深さでSLを設定しなければ容易にSLにヒットしてしまうことになります。結果、TP(利幅)の数倍以上のSLが不可欠となるわけです。
いびつなリスクリワードバランスが生まれる要因です。
勝率の高さを求めるあまり、いびつなリスクリワードバランスを受け入れざるを得ない
10pips程度の目標利益なので、瞬時に勝ててしまうことも多々あります。連勝することもあります。勝率は必然的に高くなります。
ただし、小さな利益のために看過できないほどの損切りリスクが伴います。例えばリスクリワード5対1、10pipsの利幅(TP)に対し50pipsの損切り(SL)戦略を例に考察してみましょう。
この戦略における損益分岐点となる勝率はどれほどでしょうか?すぐに計算できる人は頭が良い人であり、この戦略を採用することはないでしょう。
リスクリワードレシオ(損益比率)という言葉を聞いたことがありますか?
リスクリワードレシオとは、単純に「勝ちトレードの平均利益」と「負けトレードの平均損失」の比率です。ペイオフレシオと呼ばれることもあります。
リスクリワードレシオ
=平均利益÷平均損失
=10pips÷50pips
=0.2
ここでバルサラの破産確率表をもとに、リスクリワードレシオ(ペイオフレシオ)0.2における必要勝率を考察します。
※計算を単純にするため本家の破産確率表ではなく簡易化したものを使用します。詳しくはニセモノにダマサれるな!本物の『バルサラ破産確率表』はこれだ!をお読みください。
ペイオフレシオ(損益率)0.2は最上段です。勝率と破産確率の対比は以下の通り。
- 勝率10% → 破産確率100%
- 勝率20% → 破産確率100%
- 勝率30% → 破産確率100%
- 勝率40% → 破産確率100%
- 勝率50% → 破産確率100%
- 勝率60% → 破産確率100%
- 勝率70% → 破産確率98%
- 勝率80% → 破産確率72%
- 勝率90% → 破産確率5.8%
- 勝率100% → 破産確率0%
勝率70%まではほぼ100%の割合で破産するとされています。勝率90%でようやく破産確率は6%を切ります。
つまりペイオフレシオ(損益率)0.2の戦略を採用するならば、最低でも勝率90%が不可欠なのです。
10回トレードしたら9回は勝たなくてはなりません。普通に考えても勝率90%は非現実的ですよね。5回連続で勝っても、その後のわずか1回の負けでチャラ(プラマイゼロ)です。
ペイオフレシオが「1」以下の戦略、つまり平均TPよりも平均SLが上回るトレードは、極めて高い勝率が求められ、長期的に生き残ることを困難にします。
あなたの戦略(1日10pips戦略)が、はたして高い勝率を長期的に維持できるのか?非常にシビアな検証が求められることになります。
損大利小トレードの難しさはバルサラ破産確率表から容易に推測できるのですね。
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「だったらSLを5pipsにすればよくない?」
平均利益10pipsに対して平均損益5pipsにすれば、ペイオフレシオは「2」になるから、求められる勝率も下がるし、破産確率も低くなるのでは?
と考える人も出てくるかもしれませんが、そもそも損切りを5pips設定にすること自体が非現実的ですよね。5pips程度の値動きはノイズ(波)ですから予測不能です。損切りだらけになることは容易に予測できます。スプレッドを考慮すればもはやトレードそのものが成立しません。
『1日10pips手法』の根本的問題とは?
1日10pips手法、1日20pips手法の根本的課題は、利幅固定にあります。トレンドが出やすいとされるFX相場において、利幅を最初から固定してしまうことほど愚かな行為はありません。
トレンドに乗ることこそがFX相場で利益を上げていく最大のコツです。つまり損小利大。コツコツ損切りをしつつ、利益は最大限まで追求する。勝率は40〜60%程度でもトータルで勝ち越せるます。
このことはThomas F. Basso(トム・バッソ)の『コイントス証明』の逸話からも理解できます。
トムバッソの公演においてある受講者が以下のような質問をした。
「まるであなたの話を聞いていると手仕舞いとポジションサイジング(資金に対する建て玉の枚数)だけが重要で、それさえ正しければコインの表か裏かでロングかショートを決めても利益が出せるというように聞こえます。」
トムはおそらく「そうだ」と答えた。さっそく彼はオフィスに戻ると先物取引の10の市場で実験を開始した。売りか買いかはコインを投げて決めた。
その後10日間平均のATR(真実の値幅)の3倍のストップを入れた。そして1回取引あたりの損失は資金の1%になるよう枚数を調整した。
これだけである。しかしストップの位置は自分の有利な方向へ変化させた。つまり自分の有利な方向へ相場が動いたとき、あるいは日々のボライティリティが狭まっているときに機械的に動かされた。(3倍のボライティリティストップをトレイリングストップとして使用しているということ)
結果はスリッページや手数料分を差し引いても安定した利益を得られるというものだった。これはかなり感動的だ。システムには単純さが何より重要だということを証明する結果となった。
リスクは抑えつつ(1%固定)、トレーリングストップで含み益を伸ばし続けることができれば、コイントスのような運任せトレードでも利益が出せるという現実に驚かされます。
Thomas F. Basso(トム・バッソ)同様、『新マーケットの魔術師―米トップトレーダーたちが語る成功の秘密』で紹介されている5億ドル稼いだBill Lipschutz(ビル・リップシュッツ)も次のように語っています。
含み益を拡大することができなければ駄目なんだ。トレードは50%の確率で勝てる、と思っていたら大間違いなんだよ。たった20~30%の確率でしか勝てない。だから、勝ったときにどういうふうに勝つか、それを考えなければいけないんだ。
不確定要素の大きな相場において常に高い勝率を維持することは簡単ではなく、だからこそ含み益を拡大する戦略が絶対的に求められる…とBill Lipschutz(ビル・リップシュッツ)は断言しています。
魅力的に見える『1日10pips戦略』のリスクについて知っておくべき
『1日10pips戦略』を否定はしませんが、容易ではないこと。リスクが大きいことを知っておくべきです。
もしもあなたが高確率で勝てる(勝率90%90%以上で勝てる)ポイントを知っているのであれば、おおいにチャレンジしてみても良いでしょうね。