多くの日本人トレーダーが「RSIの使い方」を勘違いしている
前回の記事で、RSIは「買われすぎ・売られすぎ=過熱感」を推し量る指標ではない、と解説しました。
RSIは、一定期間の価格変動に対する相対的な上昇値動きの割合(%)を算出したものであり、「上昇の勢い(=圧力)」の強弱をグラフ化した(=0〜100%で表現した)指標です。
前回の記事では言葉足らずだった部分を、今回の記事で補完しておきますね。
RSIは一定期間の相場における現在の価格が”相対的にどれくらい強気なのか”をグラフ化した指標である
仮にRSIが80%を指しているならば、一定期間における相対的な上昇値動きの占める割合が80%であると判断するのが正しいわけです。決して「80%=買われすぎ」ではないのですね。
単純にRSI=50%の状態が均衡していると考えれば、「80%=上昇強度が強いほうに傾いている」、そして「30%=上昇強度が弱い方に傾いている」と考えることができるはずです。
レンジ相場におけるRSIの動きは自動車の速度メーターでイメージするとわかりやすいかも…
では、どうして”RSIは買われすぎ・売られすぎを判断するテクニカル”と間違った解釈(使い方)が浸透しているのか?最大の原因は、相場の大半がレンジ(=もみ合い相場・ボックス圏相場)であるからです。
方向感のないレンジ相場ではRSIがレートに同調して上下動を繰り返しているように見えます。
しかし、これはRSIが0〜100%の間で振り子のように動くように作られているからにすぎません。一定の範囲内(0〜100の間)で上下動するように動く、これはオシレータ系指標の宿命です。そもそも「オシレーター」とは「振り子」という意味です。
RSIは一定期間の相場における現在の価格が”相対的にどれくらい強気なのか”をグラフ化した指標なので、RSIのベースとなる期間が値幅の狭いレンジ相場ならば、わずかな値動きでRSIも敏感に反応して動きます。
レンジでのRSIの動きは、自動車の「速度メーター」に例えるとわかりやすいかもしれません(多少無理がありますがイメージとして捉えてください)。
レンジ相場とは、例えるならば法定速度が40kmの狭い一般道です。狭い道を時速40kmで走行(等速直線運動)しているときに、ちょっと飛ばし過ぎかなと思って少しアクセルを緩めると、速度メーターはキュンッと戻ります。と同時に速度は40kmからすぐに30km、20kmへと落ちます。なぜなら元々の速度がそれほど早くないからです(=慣性の法則が弱い)。
そこから再びアクセルを踏めば速度メーターは機敏に反応し、すぐに速度40kmに達しますね。法定速度40km程度の狭い道路では、わずかなアクセルワーク(速度変化)が瞬時に速度メーターに影響するイメージですよね。
これがレンジ相場内でのRSIの機敏な動きです。アクセルワークと速度メーター、そして速度そのものが同調しています。なぜなら慣性の法則が強く働いていないから。
結果的に、レンジ内ではRSIが機能しているように見えてしてしまうのですね。
【2024年5月版】優位性の高いFX商材 Best4
トレンド相場で”オシレーター系テクニカル”が天底に張り付く理由
一方のトレンド相場におけるRSIの動きは、一般道から高速道路へ合流してグングン速度をあげていく動きに似ています。
速度を一気にあげるためにアクセルは踏み続けますよね。50kmから70km、80km、100km…とスピードが上がります。
高速道路で100km前後で巡航しているときは、わずかにアクセルワークで速度メーターは反応はしますが、車の速度そのものはすぐには減速しませんよね。なぜなら、高速巡航中はその方向に真っすぐ進もうとする慣性の法則が強く働いているからです。よっぽど強くブレーキを踏むか、アクセルからずっと足を離しておかないと、スピードはなかなか落ちてくれません。
これがトレンド時のRSIの動きです。アクセルを緩めれば速度メーターは反応はしますが、速度そのものはすぐには減速しません。なぜなら慣性の法則が強く働いているから。
たとえば、RSIが70%〜80%を超えているにもかかわらず、トレンドが反転しないケースを考えてみましょう。以下のような相場です(RSIの期間は14)。
レートのわずかな上下動にRSIは機敏に反応していますが、上昇トレンドは継続していますよね。なぜなら上昇圧力が極めて強いからです。
まさに高速道路走行時の等速度運動をつづける性質(=慣性)が強く働いている状態と同じですね。アクセルワーク(速度変化)にメーターの針は反応するけど、速度そのものはそれほど落ちないのです。
結局のところ、RSIが70%を超えてたということは、ただ単純に一定期間(上のチャートではローソク足14本)における相対的な上昇値動きの占める割合が70%を超えたという事実を示しているだけなのです。
つまり、過去(ローソク足14本分)に比べ、現在は相対的に上昇の勢いが強い(=70%)わけですから、普通に考えれば上昇値動きがもっと続く局面かも…と考えるのが合理的だと思いませんか?
まとめ:RSIは「買われすぎ・売られすぎ=過熱感」ではなく、純粋に一定期間の相場における現在の価格が”相対的にどれくらい強気なのか”をグラフ化した指標にすぎない
RSIがレンジ相場で機能しているように見え、トレンド時にダマシとなる理由を、車の速度メーターの例えで解説しました。
RSIを「買われすぎ・売られすぎ=過熱感」と捉えてしまうと、一元的な見方しかできなくなってしまいます。
RSIの本質は、一定期間の相場における現在の価格が”相対的にどれくらい強気なのか”をグラフ化した指標です。そこからRSIの理解を進めていかなければ、この先もずっと間違った使い方をしてしまうことになります。
RSIを使うときは、以下の原則を思い出してください。