勝率50%では物足りなく感じてしまう”本当の理由”
先日の記事『お前ら正直な話、『チキン利食い』どうやって克服した?』ですが、思った以上のアクセスが集まりました。「チキン利食い」への関心が高い証拠なのかもしれません。
そこで、今回もプロスペクト理論に関連した記事をお送りしようと思います。
取り上げるのは「勝率」です。
あなたのFXトレードにおける勝率はどれくらいでしょうか?70%?60%?それとも40%でしょうか?高い勝率にこだわる投資家もいれば、勝率よりもトータルの獲得利益にこだわる人もいますよね。
実はこの「勝率」、プロスペクト理論が大いに関係していたってご存知ですか?
損失回避性を解説するのに引用されがちなプロスペクト理論ですが、投資家の勝率に対する捉え方においても影響を与えているんです。
本来ならば「リスクリワードレシオ」と絡めて適切な勝率を語るべきだが…
投資における勝率は、平均利益額(Average Gain)と平均損失額(Average Loss)と絡めて考えるべきものであり、単純に勝率が高いだけではダメだということは前回の記事でもお伝えしましたよね。
全米証券業協会(NASDAQ)による調査結果で、勝率が50%を超えているにも関わらず、平均損失額(Average Loss)が平均利益額(Average Gain)を大幅に上回っていたために、大半の投資家が資金を失っていると結論づけています。
それでも、多くの投資家は高い勝率にこだわります。もちろん勝率は高いに越したことはありません。しかし、仮に低い勝率(例えば40%)だったとしても、平均利益額(Average Gain)が平均損失額(Average Loss)を大きく上回っていれば、利益は残せるのです。
勝率よりも重視すべきは、適切な「利益:リスク」の比率なのですね。つまりリスクリワードレシオです。
- リスク(risk)…危険・失敗≒損失
- リワード(reward)…報酬・報い
- レシオ(ratio)…割合・比率
リスクリワードレシオは、リスクと報酬との割合のことです。計算式はシンプルです。
[box class=”glay_box” title=”リスクリワードレシオの計算式”]
リスクリワードレシオ=平均利益(Average Gain)÷平均損失(Average Loss)
平均利益が60pipsで、平均損失が30pipsならば、リスクリワードレシオは「2」です。
高いリスクリワードレシオを実現できれば、勝率は50%より低くても、長期的に利益を出し続けることが可能です。
ところが…人はそれほど合理的にはできていません。
【2024年5月版】優位性の高いFX商材 Best4
(たとえトータルで勝っていても)負け数が多い勝負は、人を不安にさせる…
たとえ勝率が50%に満たなくても、適切なリスクリワードレシオを設定し、それに基づいたストラテジーを実践すれば、相場で生き残ることが可能です。
しかし、ことはそう簡単ではありません。なぜなら、人は潜在的に「高い勝率を出すこと」に囚われ支配されているからです。ここにもあの忌まわしいプロスペクト理論が影響を与えています。
10回のトレードをおこなうケースで考えてみましょう。ここでは勝ち負けによる損益は考えず、単純に勝ち負けの数に注目して考えてみます。
- 勝ち
- 負け
- 負け
- 勝ち
- 勝ち
- 負け
- 勝ち
- 勝ち
- 負け
- 負け
勝ちが5回、負けが5回、つまり勝率50%です。逆にしてみます。
- 負け
- 勝ち
- 勝ち
- 負け
- 負け
- 勝ち
- 負け
- 負け
- 勝ち
- 勝ち
こんなパターンもありますよね。
- 勝ち
- 負け
- 勝ち
- 負け
- 勝ち
- 負け
- 勝ち
- 負け
- 勝ち
- 負け
どのパターンも勝率は50%ですが、なんとなく勝ってる気がしませんよね。10回のうち半分は勝っているんですよ。それでもなんだか物足りなく感じませんか?
1回の「勝ち」と1回の「負け」は同等であっても、人は「勝ち」のポジティブよりも「負け」のネガティブをより大きく捉える傾向があるんですね(プロスペクト理論における価値関数理論)。たとえ2連勝しても、2連敗したときの「マイナスの印象」がより強く残ってしまうのですね。
人は、勝率50%では「勝ってる気がしない」のです。
ましてや、勝率40%となれば、ソワソワしてもはや心が落ち着きません。たとえトータル利益がプラスでも、です。
- 勝ち
- 負け
- 勝ち
- 負け
- 負け
- 勝ち
- 負け
- 勝ち
- 負け
- 負け
実際は、以下のようなバランスに感じます。
- 勝ち
- 負け
- 勝ち
- 負け
- 負け
- 勝ち
- 負け
- 勝ち
- 負け
- 負け
「勝ち」のポジティブ感に比べて、「負け」のネガティブ感を1.2倍〜1.5倍くらいに感じてしまうのですね(イメージです)。「うわー、勝ててない…」と思ってしまうのです。
勝率40%でもリスクリワードレシオが「2」ならば、トータル損益はプラスです。それでも、40%の勝利は人を不安にさせるのです。
同じ1万円でも、人は置かれた環境によって異なる価値を感じる=これがプロスペクト理論における「価値関数」です。手にする1万円(喜び)よりも、失う1万円(痛み)の方を重く受け止めてしまうのが人なのですね。
- 喜び
- 痛み!
- 喜び
- 痛み!
- 痛み!
- 喜び
- 痛み
- 喜び
- 痛み!
- 喜び
「喜び」と「痛み」が同じ数(5対5)でも「痛み」をより大きく感じるために、全体では「痛み」の感情が占める割合が大きくなってしまうのです。
人は、この「痛み!」から逃れたいがために、高い勝率を無意識に求めてしまうのです。
たとえトータルで勝っていても、負け数が多い勝負は、満足度が低く人を不安にさせます。
ゲームやスポーツでも同じですよね。サッカーの試合で1対0で辛勝したとしても、90分間終始攻め込まれ続けた時は、なんとなく勝った気がしませんよね。対戦ゲームなどで、キル数よりもデス数が多ければ、たとえ最後に勝利したとしても気分がすっきりしません。人の感情は合理的ではないんですよね。
感情に支配された投資行動を続ける限りは、なかなか勝てるようになりません。「痛み」に耐えつつ合理的な行動をおこなわなければ生き残れないのです。
次回、リスクリワードレシオと勝率の深い関係に迫っていきます。