”投資額223億円”に対する分配金が支払われない事態へ…
一部のソーシャルレンディングがもはや”詐欺レベル”という記事をアップしましたが、それを裏付けるかのようなニュースを紹介します。
ソーシャルレンディング、分配金の遅れ急増 当局警戒
高利回りをうたいネットで個人から投資マネーを集める「ソーシャルレンディング」で、約束した分配金が払われないケースが急増している。集められたお金は太陽光発電や不動産など様々な事業に貸されたが、延滞後も融資先の詳細は明かされないままだ。投資家が損失を被りかねず、金融当局は警戒を強めている。
(中略)
ソーシャルレンディング業界で最大手とされるmaneoマーケット(マネオ、本社・東京)が募集した案件で、投資家への分配が滞るケースが急増している。直近で223億円超の投資に対する分配ができていない。昨年末時点の延滞発生投資額は4500万円分で、今はその500倍近い。延滞は昨年後半以降に募集した投資案件が多いとみられる。
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223億円の投資に対する分配が困難な状況が続く
上のニュースでは「maneo(マネオ)」が取り上げられていますが、なんと223億円もの投資に対する分配が滞っているとのこと。
なお、223億円がどのような事業に融資されたかはそもそも説明義務がないため現時点ではその詳細は不明です(今後開示されるでしょう)。ソーシャルレンディングの高い利回りから、リスクの高い事業へ融資されていることは容易に想像できます。ニュース記事内では以下のような事業への融資が行われていると推測しています。
- 国内外の不動産事業への投資
- 太陽光発電所設備への投資
- 飲食店設備への投資
通常であれば、これらの事業主は金利の低い銀行融資を第一に考えるはずです。しかし焦げ付きリスクを恐れた銀行に相手にされなかったり、とにかく資金を急いで用意したい場合などは、スピーディーなソーシャルレンディングを選択するケースが多いようです。
つまり、それだけ事業にリスクがあることを意味します。だから利回りが高いのです。ハイリターンの裏にはハイリスクがあるということです。
不祥事が絶えないソーシャルレンディング
とはいえ、ソーシャルレンディングは融資先や事業内容の詳細を投資家に開示する義務がありません。結果的に、代表者の親族の会社に融資したり(ラッキーバンク・インベストメント)、社長が着服したり(みんなのクレジット)、架空の事業をでっちあげたり(エーアイトラスト)という不祥事があとを絶たないわけです。
「みんなのクレジット」不祥事
- 【業務停止命令】みんなのクレジットのお粗末な実態とは?
- 3ヶ月前の「みんなのクレジット」社長インタビューと現実(行政処分勧告)が乖離しすぎてて笑えない
- 【疑問】みんなのクレジットの謝罪文章はなぜ画像で作成されているのか?
- ソーシャルレンディングサービスは「貸金業」だって知ってた?
「エーアイトラスト」不祥事
「ラッキーバンク」不祥事
「maneo」の分配遅延投資額は昨年の500倍!
「maneo(マネオ)」によれば、分配遅延発生投資額は223億円とのこと。これは昨年末の4500万円のなんと500倍です。
- 2017年末の分配遅延発生投資額…4500万円
- 2018年末の分配遅延発生投資額…223億円(2017年の500倍)
わずか1年で分配が滞っている投資額は500倍になったのです。
「maneo(マネオ)」は今年(2018年)7月に金融庁から業務改善命令を受けたばかりです。それでも遅延案件は223億円に膨れ上がってしまっています。
バブル崩壊の原因となった”銀行の常道を逸した不動産融資”を思い起こさせる
急成長してきた「maneo(マネオ)」ですが、信用力の低い融資を無理に拡大してきたツケが223億円という焦げ付きを生んだといえます。
まさにあのバブル時代のキチガイじみた銀行の不動産融資を彷彿とさせます。その結果、どうなったか?バブルが崩壊し、銀行は大量の不良債権をかかえることになったわけです。多くの銀行が破綻し、金融危機という未曾有の事態を日本に引き起こしました。
「maneo(マネオ)」の分配遅延発生投資額223億円という事実は、もはやソーシャルレンディング事業というスキームそのものに綻(ほころ)びが生じ始めているといっても過言ではないでしょう。
事態の掌握すらできていないmaneo(マネオ)
ここまで焦げ付きが拡大したわけですから、融資先の実態把握すら困難な状況が考えられます。
借り手からの返済状況を含む資金の到達状況、遅延の原因、延滞解消の見込みに関する質問への回答を要請するなどにより情報収集を試みております。
しかしながら、ガイアファンディング社のファンドスキームについては、現地の最終貸付先への貸付けまでに3社(※)の法人を経由しており、今般の利息の支払いの遅延が最終貸付先からの返済の遅延なのか、または、3社のいずれかの法人に資金が滞留しているのかについて、継続して確認をしている状況です。
(中略)
案件の現状について、引き続き回答および資料開示を要請するなどして詳細情報の収集に努めております。
「maneo(マネオ)」の社内は、223億円もの焦げ付きのニュース発表に混乱していることが容易に想像できます。
”情報開示不要”という枠組みがそもそも無理がある
ソーシャルレンディングは貸金業です。だから集めた資金の融資先を開示する義務はありません。
貸金業者は集めた資金の融資先を開示しなくてOK
貸金業だからこそ、集めた資金の融資先を開示する必要はないわけです(厳密に言えば融資先の情報を開示してはいけない)。
ソーシャルレンディングに出資する投資家は、自分のお金がどこに出資されているか知らされなくても、法律違反とはならないのです。
なぜこのような規定が存在するのでしょうか?
そもそも日本では貸金業を営むには貸金業登録が必要です。ソーシャルレンディングは私達個人投資家がお金を間接的に貸し出すことになります。貸付先(どこに貸すのか)を知った上で私達がお金を貸し出すことは、私達が貸金業者であると捉えられてしまうのです。
そこで、ソーシャルレンディングサービス会社は、貸付先をあえて匿名にすることで、私達個人投資家が「貸金業者」になる必要性を排除しているわけです。
厳密に「融資先情報を開示してはいけない」と規定されているわけではなく、結果的にそのように法律を読み取らざるを得ないというのが現状です。
なんだかしっくりきませんね。
貸金業法が、最近登場したソーシャルレンディングを全く想定していない(時代に追いついていない)から、これはしかたがありません。
本来であれば国民が保護されるために存在する「貸金業法」が、かえってソーシャルレンディング会社に都合よく解釈されて「貸付先は非開示」となってしまうわけです。
融資先の開示義務がないから結果的に融資の不透明さが増し、多くのずさんな融資につながったと考えられます。
もはやギャンブルと化したソーシャルレンディング。223億円の焦げ付きが表面化すれば、急拡大するソーシャルレンディング市場に冷水を浴びせることになるでしょう。