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- 池辺雪子さんのトルコリラ推しで”踏み絵”を踏まされる信者たち…
”トルコリラ円でお気軽スワップ生活を目指す人”よ、早く目を覚ませ
前回、池辺雪子さんのトルコリラ推しで”踏み絵”を踏まされる信者たち…という記事を書きました。
あの池辺雪子さんが、大暴落後もトルコリラ円のロング保有を推奨しているという内容ですが、読者様から様々な反応がありました。中でも多かったのが、「結局、しっかりした資金管理さえしておけば、どれだけ価格が下がっても持ちこたえられるのでは?」「資金管理が全てじゃないですか?」というもの。
こうした考えを持っている方は、重要なポイントを見落としています。それは、為替変動による損失リスクです。
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スワップ金利が為替差損によって相殺されるリスクを考慮していない
池辺雪子さんが推奨する資金管理法は以下の通り。
池辺雪子さんの資金管理では最大13.6円の下落に耐えることができる点がウリですね。
では、この資金管理をさらに徹底して「100万円の資金に対して4ポジション(4万通貨)まで」とした場合はどうでしょうか?ここでは計算を単純にするために1ポジション(1万通貨)当たりの証拠金を3万円と仮定します。4ポジションで12万円の証拠金が必要となり、資金余力は88万円です。88万円に対し4ポジションですので、単純計算で1ポジション当たりの下落耐性幅は22円となります。
今日(2018年9月12日)のトルコリラ円は17.3円前後ですので、今ポジションを保有すれば、なんとトルコリラ円がゼロ円になったとしても、ロスカットされません!半永続的にスワップポイントが手に入り続ける!素晴らしいですね!
…
と思う人は大変な思い違いをしています。スワップ金利が手に入ったとしても通貨が下落すれば、莫大な為替差損が生じているからです。
高金利通貨でスワップ収入を手にしたいならば、スワップ収入が為替差損によって相殺されるリスクを考慮しなければいけません。
仮にトルコリラ円が20円まで回復し、そのときに1万通貨保有(ロング)したとします。証拠金200,000円(レバ1倍)に対しスワップポイントは年間約36,500円と高額です(100円/1日にて計算)。利回りはなんと年18%。
ところが1年後に15円まで下落すれば…
200,000円ー150,000=50,000円
得られたスワップ金利(36,500円)を、為替差損による損失(▲50,000)が上回ることになります。トータルでマイナスです。
レバレッジ(例えば2倍)をかければ得られるスワップ金利も増えますが(36,500円✕2倍=73,000円)、為替変動による下落耐性幅が大きく狭まるためロスカットリスクが発生します。
5円の下落で…▲50,000円✕2倍=▲100,000円
単純計算で50%(10円)下落すればロスカットとなります。20円が10円まで下がれば強制ロスカットとなり、あなたの資金はゼロになります。その間に資金を上回るほどのスワップポイントを手にしていなければ収支はマイナスです。強制ロスカットを避けるには追加で資金を投じるしかありません。そのための余剰資金も必要となります。
実際には固定スワップを貫いているFX業者はほとんどありません。通常は為替レート変動に伴ってスワップ金利も変動します(スワップ金利固定を堅持してきたヒロセ通商も2017年1月に終了した)。現在は1日平均70〜80円だったとしても、この先60円、50円に下落する可能性も大いにあります。
高スワップ金利も為替差損(下落)には勝てないということです。
もちろん、トルコリラ円が上昇しないまでも現状を維持してくれれば為替差損は生じませんが…
高金利通貨は常に下落する運命にある
もう一つ重要なポイントがあります。
それは”高金利通貨は常に下落する運命にある”という歴然とした事実です。金利が高いことには十分すぎるほどの様々な理由(金利を高くせざるを得ない理由)があるわけです。政治リスクや経済リスク、地政学的リスクetc.様々なリスクの存在によって金利を高く設定せざるを得ないという事情が存在します。
トルコリラが高金利通貨であることとトルコ経済の不安定さは表裏一体だ
そもそもなぜ高額スワップが不労所得のように手に入るのか?高金利通貨だとどうしてスワップポイントが高くなるのか?今回の暴落で損失を喰らった人々の中でこれらを正しく説明できる人がどれほど存在するのか?説明できないならば単なる情報弱者です。
トルコリラが高金利通貨であることは、トルコ経済の不安定さと表裏一体です。インフレが進み、外貨準備が不足して対外債務が増え、いまやトルコ経済は絶望的状況にあるわけです。結果的に高金利政策を取らざるを得ない(国外から資金を集めるため)わけです。
もしもトルコリラが低金利政策を取れば、せっかく集めた外貨は一気に引き上げられてしまいます。同時に高いインフレ率(なみにトルコは世界一ガソリン代が高い国として有名)に悩まされるトルコは政策金利を下げづらい状況にあります。政策金利を下げれば、お金が市場に出回りインフレ率の上昇に歯止めがかからなくなるからです。にっちもさっちもいかない状況に、トルコ経済は追い込まれています。
さらに、クルド人支援を巡るアメリカ政府(トランプ大統領)との対立。もはやトルコは四面楚歌なのです。トルコ通貨が暴落を起こす(トルコリラが売られる)要因は如実に現れていたといえます。
そもそもトルコリラが下落しても影響を受ける国は少ない
残念なことにトルコリラが下落しても困る国はそれほど多くありません。当たり前ですが、日本はまったく無風です。買い支えようとする国は一部を除いてほぼ皆無でしょう(ドイツ・フランス・カタールが支援を表明)。
トルコリラが下落して困るのは、せいぜいスワップ金利(不労所得)欲しさにトルコリラを買い漁っていたロンガー投資家(スワッパー)だけです。トルコリラが下落から歴史的大暴落へと一気に進んだ原因は、ここにあります。
たとえ一時的に回復したとしても、潜在的に下落するリスクを秘めているのがトルコリラに代表される高金利通貨国です。
当たり前ですが、高金利通貨でのスワップ狙いは思ったほど簡単ではないということです。緻密な戦略と資金管理が求められる極めて高度な投資法なのです。
リスクを十分に理解せずにお気軽にスワップ狙いなどすると、何度も足元をすくわれるハメになります。