日本円(JPY)が絡まない通貨ペアの1pipsが小数点第4位なのに、日本円(JPY)が絡む通貨ペアだけが小数点第2位なのはなぜ?
前回、pips(ピップス)とは?どんな意味があるの?にて、pipsの語源や意味、通貨ペアごとの読み取り方などを解説しました。
まずはおさらいです。通貨ペアごとの1pipsの値幅をまとめます。日本円絡み通貨ペアと、そうでない(日本円が絡まない)通貨ペアで異なります。
日本円が絡む通貨ペアにおける1pipsの値幅
- USD/JPY(米ドル円)…1pips=0.01円(1銭)
- EUR/JPY(ユーロ円)…1pips=0.01円(1銭)
- GBP/JPY(英ポンド円)…1pips=0.01円(1銭)
- CHF/JPY(スイスフラン円)…1pips=0.01円(1銭)
円絡み通貨ペアは、「1pips=100分の1通貨」です。つまり小数点第2位の値が1pipsとなります。
次に日本円が絡まない通貨ペアにおける1pipsの値幅です。
日本円が絡まない通貨ペアにおける1pipsの値幅
- EUR/USD(ユーロ米ドル)…1pips=0.0001ドル
- GBP/USD(英ポンド米ドル)…1pips=0.0001ドル
- EUR/GBP(ユーロ英ポンド)…1pips=0.0001ポンド
- EUR/CHF(ユーロフラン)…1pips=0.0001フラン
円が絡まない通貨ペアは、「1pips=10000分の1通貨」です。つまり小数点第4位の値が1pipsとなります。
まとめると以下の通り。
- 円絡みは小数点第2位が1pips
- それ意外は小数点第4位が1pips
日本円が絡む通貨ペアとそうでない通貨ペアで1pipsあたりの値幅が異なるわけですが、これは日本円(JPY)だけが特殊なのですね。
つまり、JPY(日本円)のみが、小数点第2位(つまり0.01)でpips表示される唯一の通貨であるということ。
JPY(日本円)のみが、
小数点第2位(つまり0.01)でpips表示される唯一の通貨なんじゃ。
つまりJPY(日本円)のみが例外なんじゃよ。
ところで、疑問に感じませんか?
どうして日本円(JPY)が絡む通貨ペアだけが「1pips=小数点第2位」と定められているのでしょうか?
そもそもどうして「1pips=小数点第4位」が標準なのか?
為替市場において、様々な通貨が取引されていますが、日本円(JPY)以外の通貨の組み合わせでは、「1pips=小数点第4位」が標準です。
そもそもどうして「1pips=小数点第4位」と決まっているのか…ご存知ですか?
様々な通貨が絡むFX取引をスムーズに行うために、各通貨の補助単位の最小単位をpips表示すると決めました。最小単位(pips)とは100分の1(= percentage in point+複数形のs)です。
様々な通貨が絡むFX取引をスムーズに行うために、各通貨の補助単位の最小単位をpips表示すると決めたのじゃよ。
米ドル・セント
例えば、米ドルの補助単位は「セント」ですよね。
- 1ドル=100セント(1セント=0.01ドル)
1セントの100分の1は、0.0001ドル(10000分の1ドル)ですね。だから0.0001ドル=1pipsなのです。
ユーロ・セント
ユーロも米ドルと同じく補助単位は「セント(ユーロセント)」。
- 1ユーロ=100ユーロセント(1ユーロセント=0.01ユーロ)
1ユーロセントの100分の1は、0.0001ユーロ(10000分の1ユーロ)です。その結果、0.0001ユーロ=1pipsとなっているわけです。
ポンド・ペニー
ポンドの補助単位は「ペニー」。
- 1ポンド=100ペニー(1ペニー=0.01ポンド)
1ペニーの100分の1は、0.0001ポンドです。だから、0.0001ポンド=1pipsと決まっているのです。
まとめると…
- USD…100分の1セント=0.0001ドル=1pips
- EUR…100分の1ユーロセント=0.0001ユーロ=1pips
- GBP…100分の1ペニー=0.0001ポンド=1pips
各通貨の補助単位(セントやペニー)の100分の1をFX取引における最小単位(pips、つまり100分の1)にすると決めたわけですね。
だから、各通貨の小数点第4位が1pipsなのです。
しかし、日本円(JPY)が絡む通貨ペアだけは「例外」とされています(つまり「1pips=小数点第2位」)。
不思議ですよね。
大半の通貨比率は、「1単位通貨(A国)≒1単位通貨(B国)」
日本円(JPY)が絡む通貨ペアだけが「例外」となる理由は、通貨比率の違いにあります。
そもそも為替相場(主要通貨)はざっくりと、
1単位通貨(A国)≒1単位通貨(B国)
となっています。つまり…
- 1米ドル≒1ユーロ
- 1米ドル≒1ポンド
- 1ユーロ≒1ポンド
- …
実際に現時点(2022年1月22日)での相場をチェックしてみると…
- EUR/USD≒1.13…
- GBP/USD≒1.35…
- EUR/GBP≒0.83…
- USD/CHF≒0.91…
- EUR/CHF≒1.03…
- AUD/USD≒0.71…
- NZD/USD≒0.67…
ご覧の通り、「1単位通貨(A国)≒1単位通貨(B国)」となっていますよね。もちろん変動相場なので「1」を切ったり超えたり…ということはありますが、ざっくりと「1単位通貨(A国)≒1単位通貨(B国)」となっているので、とてもわかり易いですよね。
日本円(JPY)は「1単位通貨(A国)≒100〜単位通貨(日本円)」
一方の日本円(JPY)は、通貨比率が異なります。
- 1米ドル ≒ 113円
- 1ユーロ ≒ 128円
- 1ポンド ≒ 154円
- 1フラン ≒ 124円
「1単位通貨(A国)≒100〜単位通貨(日本円)」となってしまっています。
通貨単位が「1単位通貨(A国)≒1単位通貨(B国)」ではないので、非常に分かりづらいですよね。
どうして、1ドル≒1円と決めなかったのでしょうか?
実は「1米ドル=1円」という時代があった!
実は1871年に円相場がスタートしたときは、「1米ドル=1円」だったのですね(明治政府による新貨条例)。
1米ドル=1円の時代もあったのじゃよ!
その後、銀本位制や金本位制への移行を経て、為替レートはどんどん変化します。
1912年(大正元年)には、1米ドル=2円。
1925年(大正14年)には、1米ドル=2.4円。
二度の大戦を経て(終戦直後は1米ドル=15円)、1949年に1ドル360円の固定相場制が登場。その後固定相場制から変動相場制(1973年)へ移行して現在に至ります。
敗戦による管理相場から、固定相場への移行。ニクソンショックによる固定相場制の崩壊、日本経済成長による円高の急激な進行などなど。
日本円(JPY)は世界の動きに翻弄されて、「1米ドル=1円」から現在の「1米ドル≒100円前後」に至ります。
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日本円(1円)は他国通貨の100分の1とほぼ同等である
さて、話をもとに戻します。
日本円の補助単位は何でしょうか?そうです「銭(せん)」ですね。ただし、「銭」は1953年に廃止されています。現在「銭」は概念としてのみ残っていますね。
さて、円の補助単位は「銭」。
- 1円=100銭(1銭=0.01円)
1銭の100分の1は、0.0001円です。
他国通貨と同じように考えれば、
- JPY…100分の1銭=0.0001円=1pips
となるはずですよね?
と、ここで問題が…!
先に、”日本円(JPY)は「1単位通貨(A国)≒100〜単位通貨(日本円)」”と解説しましたよね。
- 1米ドル ≒ 113円
- 1ユーロ ≒ 128円
- 1ポンド ≒ 154円
- 1フラン ≒ 124円
日本円(JPY)は「1単位通貨(A国)≒100〜単位通貨(日本円)」ということは、日本円(1円)は他国通貨の100分の1とほぼ同等であることを意味します。
- 1円 ≒ 0.01ドル
1pipsの価値をそろえるためにはどうすれば良いか?以下の式を見ればわかりますね。
0.0001ドル=1pips
1円 ≒ 0.01ドル(1ドル≒100円)
∴ 1pips=0.0001ドル=0.01円
解説:0.0001ドルが1pipsであり、1円は0.01ドル。ゆえに1pipsは0.01円である。
0.0001ドルが1pipsであり、1円は0.01ドルじゃ。
ゆえに1pipsは0.01円となるのじゃ。
1pipsの比率を全主要通貨でそろえるための”苦肉の策”
日本円(JPY)が絡まない通貨ペアの1pipsが小数点第4位なのに、日本円(JPY)が絡む通貨ペアだけが小数点第2位なのはなぜ?
…に対する回答は次の通り。
日本を除く主要通貨ペアは「1 ≒ 1前後」で取引されていますが、日本円(JPY)だけは「1 ≒ 0.01(JPY)」で取引されているために、他の主要通貨のpipsに比率を合わせようとすると0.01円となるわけです。
∴ 1pips=0.0001ドル(ポンド・ユーロ)=0.01円
1pipsの比率を全主要通貨でそろえるための、苦肉の策なのですね。
1pipsの比率を全主要通貨でそろえるための、苦肉の策なのじゃよ。
ここまで整理すれば、なぜ日本円(JPY)が絡まない通貨ペアの1pipsが小数点第4位なのに、日本円(JPY)が絡む通貨ペアだけが1pips=小数点第2位なのか?を理解できるはずです。
正しく理解することで、pipsの読み間違えをしにくくなります。