リペイントについて追加で解説するよ!
上の2つの記事にてインジケーターのリペイントについて解説しましたが、以下のご質問をいただきました。
ご質問内容
- ”fisher.mq4を使っていますが、実稼働しているときはリペイントしないのでは?”
インジケーターのリペイント問題とはなにか?知らなかったじゃすまされない!の中でリペイントについて詳しく解説したつもりでしたが、内容が少し不十分でしたので、新たに解説を追加します。
まずリペイント系インジケーターには2つの種類があると述べました。
リペイント系インジケーターとは?
リペイントとは、チャートの最新足が更新される毎に(あるいはチャートを再読み込みする毎に)、すでに表示されているインジケーターの値(矢印やラインなど)が変更されてしまう現象を指します。
誤解がないように解説すると、厳密にはリペイントには2つの種類があります。
最新足におけるインジケーター値のリペイント
ほとんどのテクニカル指標は、最新足のローソク足”終値”が確定するとともに、インジケーターの値を確定させます。そして一度確定してしまえばその後は変化しません。
ただし、終値が確定するまでは、常にローソク足の値(始値以外)が変動していますよね。新しいティックが提供される毎にローソク足は細かく変動し続けています。
終値が確定するまでは、当然インジケーター値も細かく変動します。この動きもリペイントといえばそうなのですが、これは正常なインジケーターの動きであり問題ありません。
移動平均線やボリンジャーバンド、RSI、ストキャスティクスなど、大半のインジケーターは終値完成とともにテクニカル値を確定させるタイプですので、この最新足が確定するまでのインジケーター値のリペイント(変動)は問題視されることはありません。ローソク足終値が確定すればインジケーター値も確定し、一度確定してしまえば新しいローソク足の動きの影響を受けることは一切ないからです。
そもそもこの動きは一般的にはリペイントと呼びません。
過去足におけるインジケーター値のリペイント
もう一つは、ローソク足終値が確定した後、チャートが更新される毎に(あるいは、再読み込みする毎に)、すでに表示されている(過去足における)インジケーターの値が変更されてしまう現象です。リペイントといえば以下の3つの現象を指すことが大半です。
リペイントと呼ばれる3つの現象
- 過去足におけるラインや矢印の位置が移動する
- 過去足におけるラインや矢印が消える
- 過去足におけるラインや矢印が突然出現する
以下の2つの画像をご覧ください。非常によくあるリペイント現象のケースです。
…最新足に矢印シグナルが点灯したのですが…
…さらに新しい足が確定すると、元の矢印の点灯位置が後ろにずれて再表示(リペイント)した!
なぜ、このような現象が発生するのか?それはリペイント系インジケーターが現在と過去のデータ(四本値)だけでなく、未来のデータ(四本値)を参照して再計算し再描写するからです。
この手のツールが、いわゆるリペイント(再描写)系インジケーターと呼ばれるものです。
解説にある通り、リペイント系ツールは”過去足におけるインジケーター値のリペイント”を指します。具体例としては、取引の目安となる矢印シグナルなどが動くパターンですね。
過去のヒストグラムが描き直されるリペイント
インジケーターのリペイントは、矢印が動くものだけではありません。例えば、fisher.mq4に代表されるヒストグラム系インジケーターでは、ヒストグラムそのものの形状が変わります(リペイント)。
fisher.mq4は上の図にあるように、サブウィンドウに表示されるヒストグラム系のツールです。ヒストグラムの長さ・色によってトレンドの方向と強さを示します。
MT4のストラテジーテスターでfisher.mq4を稼働させてみた動画がこちら。
注意して見てみないと、リペイントがわかりにくいですが、新足完成のタイミングで直近のヒストグラムの長さや色が変化していますね。
この動きももちろんリペイントなのですが、この手のインジケーターにはもう一つのやっかいなリペイント問題が存在します。
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もう一つの”やっかいなリペイント”とは?
fisher.mq4をMT4のストラテジーテスター稼働させた結果、表示されたヒストグラムがこちらです。
表示されているヒストグラムは、もちろんリペイントを繰り返しながら描かれたものです。
次に、以下のチャート図をご覧ください。
全く同じ通貨ペア(GBPUSD)、同じ時間足(30分足)での、fisher.mq4です。ご覧の通り、全く異なるヒストグラムを描いていることがわかります。
実は下のチャート画像は、時間足を30分足から1時間足に変えて、再び30分足に戻したものです。つまり、ストラテジーテスターで描写されたfisher.mq4のヒストグラムが、リセットされた状態を示しているのですね。
2つのヒストグラムを並べて比べてみましょう。
同じ通貨ペア・時間足なのに、ヒストグラムの形状がかなり異なることがわかりますね。リアルタイム(=ストラテジーテスター)での動きはかなりピーキー(神経質な挙動)な印象を受けますよね。一方でリセット(再描写)した下のヒストグラムは、なめらかな曲線を描いていてノイズも少ない印象です。
この事実を知っているのと知らないのとでは、雲泥の差があります。
リアルタイムでもリペイントし、リセット後もリペイントする…
つまり、fisher.mq4に代表されるインジケーターは、リアルタイムでも頻繁にリペイントするし、リセット後も全体がリペイントされるのです。
チャートにfisher.mq4を設定した初期の状態ではヒストグラム全体がリペイントされるため、過去チャートを見る限りに置いては相場の天底を的確に捉える非常に優れたインジケーターのように思えてしまうのですね。
ところが、実際にリアルチャートで稼働させると、ご覧の通り。
頻繁にリペイントを繰り返し、結果的にノイズの多いヒストグラムを描きます。ところが、これらのノイズはチャートをリセットすれば掻き消され、滑らかに描き直されてしまいます。
過去チャートとリアルチャートでこれほど値が異なってしまう…FX初心者を困惑させるやっかいなリペイント問題です。
fisher.mq4を否定しているわけではない…
とはいえ、fisher.mq4が全く使えない、ゴミだ、と述べているわけではありません。リペイント系インジケーターであることを事前に知った上で、リペイントの特徴などを理解して使うならば、全く問題はありません。
使用するインジケーターの動きの特徴をしっかり把握しておけば、他のツールでノイズをフィルタリングすることも可能です。
リペイント系だからと敬遠するのではなく、そのツールに対する理解を深めることが重要ですね。