以前の記事の補足(fisher.mq4のリペイントについて)
fisher.mq4は”後出しジャンケン”型のインジケーターなのか?という記事でfisher.mq4がリペイントすると解説したところ、ご質問をいただきました。
リペイントしないフィッシャー系インジケーターもあるのでは?という内容です。
たしかに、fisher.mq4の派生系インジケーターの中にはリペイントしないようにカスタマイズしたものも存在します。海外サイトで「Fisher no repainting」と検索すれば、リペイントしないfisher.mq4を拾うことができます。
ただ、本家のfisherインジケーターはリペイント前提であるということ。そしてリペイントしないようにカスタマイズされたfisherは、当然のことながらシグナルは遅れます。また本家fisherに比べるとヒストグラムの描写がスムーズではなくガタつきが大きくなります。0ラインを頻繁に行き来するためノイズも多く、非常にピーキー(=神経質な挙動)な印象を与えるインジケーターになります。
過去チャートでは完璧なタイミングで相場転換を捉えているのに…!
さて、今回は、インジケーターのリペイント問題について、最低限知っておくべき内容をお伝えします。
インジケーターのリペイントに関しては古くからの話題であり、これまでも様々なフォーラムで議論されてきました。
日本で発売されているFX情報商材の中にも、リペイント系のツールを(リペイントすることを伏せて)提供しているものがあります。過去チャートでは完璧なタイミングでサインを出しているように見えるのに、実際に稼働させてみるとダマシだらけ…点灯していたサインが別の足に移動したり、消えたり…といった使い物にならないインジケーターを掴まされるケースも多いのが現状です。
FX初心者がインジケーターを使うようになると、いずれリペイント問題に遭遇します。最初は、驚くほど”完璧なタイミング”でトレンド転換を示してくれるツールを見つけたことに小躍りすることでしょう。ところが実際にトレードしてみると、どうも上手く行かない…過去チャートでは相場転換を完璧に捉えているのに!
わけがわからず調べてみて、ようやくテクニカル指標のリペイント問題について知ることとなります。
リペイント系インジケーターとは?
リペイントとは、チャートの最新足が更新される毎に(あるいはチャートを再読み込みする毎に)、すでに表示されているインジケーターの値(矢印やラインなど)が変更されてしまう現象を指します。
誤解がないように解説すると、厳密にはリペイントには2つの種類があります。
最新足におけるインジケーター値のリペイント
ほとんどのテクニカル指標は、最新足のローソク足”終値”が確定するとともに、インジケーターの値を確定させます。そして一度確定してしまえばその後は変化しません。
ただし、終値が確定するまでは、常にローソク足の値(始値以外)が変動していますよね。新しいティックが提供される毎にローソク足は細かく変動し続けています。
終値が確定するまでは、当然インジケーター値も細かく変動します。この動きもリペイントといえばそうなのですが、これは正常なインジケーターの動きであり問題ありません。
移動平均線やボリンジャーバンド、RSI、ストキャスティクスなど、大半のインジケーターは終値完成とともにテクニカル値を確定させるタイプですので、この最新足が確定するまでのインジケーター値のリペイント(変動)は問題視されることはありません。ローソク足終値が確定すればインジケーター値も確定し、一度確定してしまえば新しいローソク足の動きの影響を受けることは一切ないからです。
そもそもこの動きは一般的にはリペイントと呼びません。
過去足におけるインジケーター値のリペイント
もう一つは、ローソク足終値が確定した後、チャートが更新される毎に(あるいは、再読み込みする毎に)、すでに表示されている(過去足における)インジケーターの値が変更されてしまう現象です。リペイントといえばこちらの現象を指すことが大半です。
具体的には、
- 過去足におけるラインや矢印の位置が移動する
- 過去足におけるラインや矢印が消える
- 過去足におけるラインや矢印が突然出現する
以下の2つの画像をご覧ください。非常によくあるリペイント現象のケースです。
…最新足に矢印シグナルが点灯したのですが…
…さらに新しい足が確定すると、元の矢印の点灯位置が後ろにずれて再表示(リペイント)した!
なぜ、このような現象が発生するのか?それはリペイント系インジケーターが現在と過去のデータ(四本値)だけでなく、未来のデータ(四本値)を参照して再計算し再描写するからです。
この手のツールが、いわゆるリペイント(再描写)系インジケーターと呼ばれるものです。
【2024年5月版】優位性の高いFX商材 Best4
リペイント(再描写)系インジケーターのやっかいな問題
リペイントインジケーターの最大の問題点は、過去チャートだけ見ると非常に完璧なタイミングでシグナルが出ているように見えてしまうことです。相場の天底を完璧に捉えた優位性の高いツールであると錯覚をしてしまうのですね。
以下のMT4チャートをご覧ください。PBF_Scalper_Show_Me-e-3Nymous.mq4を設定したチャート図です。
どうですか?トレンドの転換ポイントを完璧に捉えていますよね。相場の天底においても驚くほど正確にシグナルを出しています。
もうおわかりだと思いますが、PBF_Scalper_Show_Me-e-3Nymous.mq4は非常に有名なリペイント系インジケーターです。過去足チャートだけを見ると、びっくりするくらい完璧に相場転換を捉えています。リペイント系に疎(うと)いFXトレーダーが見たら、なにこれ凄い!ってなってしまいますよね。
実際にPBF_Scalper_Show_Me-e-3Nymous.mq4を稼働させてみると、リアルタイムで頻繁にシグナル(矢印)が移動したり消えたりします。ある程度ローソク足が完成した段階で過去のローソク足に点灯していたシグナルが別の足の上に移動したり、消えてしまったり…そんな現象が多発します。
つまり、PBF_Scalper_Show_Me-e-3Nymous.mq4も未来のデータ(四本値)を参照して再計算したうえで、シグナルを再描写しているのです。
リペイント系インジケーターはなぜ存在するのか?
ここで疑問に思うはず。どうしてそんないい加減なインジケーター(リペイントツール)が存在するのか?
理由は大きく2つあると考えられます。どちらも、開発者が意図的にリペイントさせるようインジケーターを設計しているわけですが、その理由は全く別です。
悪意あるFX商材屋による詐欺的なツール
一つ目の理由は、悪意のある開発者が意図的にリペイントするインジケーターを提供しているケース。もちろんリペイントすることは伏せて販売します。FX商材など有料ツールに多く見られます。FX商材の販売ページなどで、過去チャートを掲載してシグナルの精度をアピールしたりしますよね。
リペイント系ツールならば、いくらでもシグナルの精度を高めることは可能です。さも完璧なシグナルを出しているかのように演出し、ユーザーの購入意欲を掻き立てることが目的です。
ところが実際にライブ取引をしてみると、シグナルが頻繁にリペイントして使い物にならない…結局ゴミ箱行きです。
環境認識ツールとしての機能を重視し、意図的にリペイントさせるように開発したツール
もう一つの理由は、シグナルツールというよりは環境認識ツールとしての機能性を重視して、意図的にリペイントするように開発したケースです。
代表的なインジケーターとしては、ZigZag.mq4(ジグザク)・Fractals.mq4(フラクタル)などがありますね。どちらも有名なツールであり利用者の多い人気インジケーターです。
ZigZag.mq4(ジグザク)もFractals.mq4(フラクタル)もリペイント系ツールです。ZigZag.mq4はチャートがある程度進むと既存のラインを再描写するケースが多いです。またFractals.mq4は5本の中で中央足が最高値・最安値の場合にその中央足にマークを付けるツールですから、必ず5本以上の足が必要です。現足に対し未来の足値データが2本以上ないと中央足を確定できません。ですので必ずリペイントします。
これらのリペイントツールをENTRY用に活用するトレーダーはまずいないでしょう。あくまでも環境認識のためのツールとして使っているはず。過去チャートにおける最高値や最安値、そしてそれらの関係性(グランビルの法則、ダウ理論、トレンドライン・サポレジライン)を視覚化し、相場の大局を判断するために使うわけです。
その場合において、最新足でリペイントするかどうかはほとんど関係ありません。むしろ過去足における最高値や最安値、過去の相場転換ポイントを的確に示してくれるほうがよっぽど重要なのですね。
こうした理由から、一定のリペイント系ツールは正しく評価され普及しているのです。
まとめ|インジケーターのリペイント問題
ネット上には有料から無料のものまでそれこそ無数のインジケーターが存在しています。あなたがインジケーターを使うときは、それがリペイントされるものなのか、そうではないのかを正しく見極めておく必要があります。
リペイント系と知らずに取引に使ってしまうと、多くのフラストレーションを抱えることになるはず。
またFX情報商材の中にも悪質な販売者によるリペイントツールが提供されているケースがあります。驚くほど正確に相場の天底を捉えているようなツールは、まず疑ってかかることが重要です。