『為替の理論値』ってなんだろう?
いまさらですが、為替レートがどうやって決まるか、知っていますよね?
「レート=価格」なので、世の中に存在するあらゆる商品やサービスと同じように、需要と供給のバランスで決まります。
ドル円(USD/JPY)でいえば、米ドルが商品であり、為替レートはその商品(米ドル)の価格ですよね。米ドルに対する需要が供給を上回れば、当然米ドルの価格は上昇し、供給が需要を上回れば下落します。
ところで為替相場には「理論値」と呼ばれる指標があります。正確には「均衡為替レート」と呼ばれています。過去の為替レートや、一国経済全体を扱うマクロ経済の指標から導き出した為替レートのことです。リアルな経済実態に沿った理論上の適正水準レートを「均衡為替レート」と呼びます。
以前、為替相場の本質は「実需」が作り「仮需」がそれを増幅させると述べたことがありますが、まさに「実需」をベースとした適正為替レートが理論値であると考えて概ね間違っていません。
ところが、現実の相場は理論値通りに動くことはありません。なぜなら為替取引の80%を占める「仮需=投機」が影響を与えるからです。実需(貿易、両替)って全体の20%しかないんですね。
だからといって理論値(均衡為替レート)がまったく意味がないわけでもありません。短期的には理論値から乖離して推移しても、長期的に見れば為替の本質である「実需」つまり理論値に収束すると考えられているからです。
『為替の理論値』は日本経済新聞が定期的に算出し公表している
為替の理論値に関しては、日本経済新聞が定期的に算出して、日経均衡為替レートとして公表しています。例えば、以下の記事。
円、理論値は107円台 均衡為替レート、日経など算出
実勢値、足元で接近、米利下げなら105円台妥当
2019/6/26 2:04
日本経済新聞社と日本経済研究センターは経済の実態に見合う外国為替相場である「日経均衡為替レート」を算出した。円相場の理論値は2019年1~3月時点で1ドル=107円台前半となった。実際の相場は15年から「割安」な状態が続いたが、25日は一時106円台後半と均衡水準の近辺に上昇した。米国が利下げ局面に入ると105円台が妥当になり、一段の円高リスクもくすぶる。
引用:日本経済新聞
理論値と実際の為替レートを比較したチャート図も掲載されていますね。
そして先日(2020年1月18日)にも理論値に関する日経の記事がありました。こちらです。
円の理論値、1ドル107円 実勢より3円高く
為替市場にドル安圧力も
2020/1/18付日本経済新聞 朝刊
外国為替市場で円相場が理論値よりも割安になっている。日本経済新聞社と日本経済研究センターが最新のデータで推計した「日経均衡為替レート」は1ドル=107円と、1ドル=110円前半の実勢値に比べ約3円の円高だった。米国の利下げで日米の金利差が縮小し、理論値は円高・ドル安の方向にシフトしている。他の通貨でもドルの実勢値は理論値に比べ割高になっており、ドル安に傾きやすい状況にある。
引用:日本経済新聞
理論値に比べて為替レートが約3円も円高方向に振れている(乖離している)という内容です。
- ドル円の理論値(2019年7~9月)=107円
- 実際の為替レート=110円前半(2020年1月15日)
理論値そのものは円高(ドル安)方向に推移しつつあり、現在の為替レート(円安)とは大きく乖離していることがわかりますよね。
経済実態から算出した為替レート(理論値)と比べて、為替レートはやや円安に傾きすぎているといえます。
今後中長期的には、この110円を超える円安が是正される動き(理論値に収束する動き)が出てくるかもしれません。中長期的には110円を再び割り、107円〜108円へと下げてくると予測する投資家も存在してもおかしくありません(あくまでも考え方のひとつです)。
「日経均衡為替レート」だけで今後の為替の動きを予想するのはかなり乱暴ですが、少なくとも現在の相場が、経済実態に比べて割高か割安かをみるひとつのバロメーターにはなりそうですよね。
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ちなみに、個人で理論値を算出して実態と比較したチャートを作成し公開しているサイトがあります。
上のグラフでも、2019年10月以降、理論値を実際の為替レートが上抜けて(円安ドル高方向へ)乖離が広がりつつあるっていることがわかります。
自分にとって使い勝手の良い「指標」を一つ決めて定点観測しよう!
ファンダメンタルズや為替情報の一押しを教えるよ!でも解説しましたが、ファンダメンタルズ情報に加えこうしたロジカルなデータを加味して、自分なりの相場観を形成することが大切だと考えています。
為替理論値だけでなく、IMM通貨先物ポジションなども加えてもよいかもしれませんね。
なんでもかんでも取り入れてしまうと、混乱するだけです。自分なりの使いやすい指標を一つか二つ決めて、それを定点観測しつつ、自分なりの相場観を確立することが大切であると考えています。
特定のアナリストの相場情報でも良いですし、IMM通貨先物ポジションでも、均衡為替レートでもOKです。
もしくはOANDAが提供しているようなオーダーグラフ(オープンオーダー・オープンポジション)などを定期的にチェックしても良いでしょう。
重要なポイントは、実際の為替レートと比較しつつ、特定の指標を定点観測することです。安定して利益を出し続けているトレーダーは皆、自分なりの指標を持って為替相場を観察しています。
何か一つでも良いので、あなたにとって使い勝手の良い指標を見つけることをおすすめします。