『グランビルの法則』って、FX初心者でも聞いたことあるほどメジャーなロジックですよね。
よく見かけるのは上の図のような解説。
移動平均線とローソク足との位置関係から、以下の8つの仕掛けタイミングがあるというもの。
買いの4パターン
- 買い1…移動平均線上昇中の上抜け
- 買い2…移動平均線上昇中の「押し目」(移動平均線を割る)
- 買い3…移動平均線上昇中の「押し目」(移動平均線を割らない)
- 買い4…移動平均線から下方へ大きく乖離からの収束を狙う
売りの4パターン
- 売り1…移動平均線下落中の下抜け
- 売り2…移動平均線下落中の「戻り」(移動平均線を割る)
- 売り3…移動平均線下落中の「戻り」(移動平均線を割らない)
- 売り4…移動平均線から上方へ大きく乖離からの収束を狙う
図解すると、確かに優位な場所でエントリーできているように見えます。実際に押し目買い・戻り売りなどは確度が高いですよね。
『グランビルの法則』ってあたりまえのように呼んでるけど、そんなものないから!
『グランビルの法則』ですが、実は海外では日本ほどメジャーではないことをご存知でしょうか?
日本では『グランビルの法則』の検索ボリュームはまずまずあります。
一方、『グランビルの法則』に該当する英語キーワード( Granville’s Rules、Granville’s 8 Rules、 )は、海外でほとんど検索されません。
意外ですよね。
日本で『グランビルの法則』と呼ばれるロジックは、Joseph E.Granville(グランビル氏)が、1960年代に出版した『Granville’s New Strategy of Daily Stock Market Timing for Maximum Profit』の中で提唱した概念がベースとなっています。
こちら(↑)が原書です。
原書タイトル『Granville’s New Strategy of Daily Stock Market Timing for Maximum Profit』を和訳すると次の通り。
日本語訳の書籍はこちら(↓)。現在は廃版ですが、古本で入手可能です。
古本価格は、13,000円前後と高額です。
原書にも日本語訳にも『グランビルの法則』( Granville’s Rule )というワードはどこにもありませんね。
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原書『Granville’s New Strategy of Daily Stock Market Timing for Maximum Profit』から”グランビルの法則”に該当する箇所を抽出してみる
原書を読み解くと、”グランビルの法則”に該当する箇所がありますので引用してみましょう。
The 200-Day Moving Average Price Line Analysis
It is believed that the 200-day moving average line stock charts are the most informative and profitably reliable indicators of where a stock is headed, provided the eight basic ways of reading them are known and followed. The 200-day chart having a slower moving average line, is considered to be more reliable than a 10-day, 50-day, 80-day or 10-day moving average price chart. The penetrations of that average line by the actual price of the stock are considered to be more meaningful. The complete chart consists of the actual price line of the stock with a 200-day moving average price line superimposed over it.
The eight basic ways of trading successfully by using these 200 day moving average price charts are as follows:
(1)If the 200 day average line flattens out following a previous decline, or is advancing, and the price of the stock penetrates that average line on the upside, this comprises a major buying signal.
(2) If the price of the stock falls below the 200 day moving average price line while the average line is still rising, this also is considered to be a buying opportunity.
(3)If the stock price is above the advancing 200-day line and is declining toward that line, fails to go through and starts to turn up again, this is a buying signal.
(4) If the stock price falls too fast under the declining 200-day average line, it is entitled to an advance back toward the average line and the stock can be bought for this short-term technical rise.
(5) If the 200-day average line flattens out following a previous rise, or is declining, and the price of the stock penetrates that line on the downside, this comprises a major selling signal.
(6) If the price of the stock rises above the 200 day moving average price line while the average line is still falling, this also is considered to be a selling opportunity.
(7) If the stock price is below the falling 200-day line, and is advancing toward that line, fails to go through and starts to turn down again, this is a selling signal.
(8) If the stock price advances too fast above the advancing 200 day average line, it is entitled to a reaction back toward the average line and the stock can be sold for this short-term technical reaction.
引用:『Granville’s New Strategy of Daily Stock Market Timing for Maximum Profit』
ざっと超訳します(正しい翻訳をご希望の方は、翻訳ツールをご使用ください)。
200日移動平均線|価格ライン分析
200日移動平均線は、8つの基本的な読み方を理解することでレート(株価)の方向性を示す最も有益かつ収益性の高い指標となる。
反応の遅い200日移動平均線は、10日、50日、80日などの短期移動平均線よりも信頼性が高い。とくに、移動平均線とレート(株価)が交差するタイミングは重要な意味を持つ。
チャート上に200日移動平均線を重ねることでパワフルになる。
200日移動平均線を活用してトレードを成功させるための8つの基本手法は次の通り。
- 200日移動平均線が前回の下落または上昇後に横ばいになり、その後、レートが移動平均線を上抜けした場合、大きな買いのシグナルとなる(=相場転換)。
- 200日移動平均線が上昇中に、レートが200日移動平均価格線を下抜けした場合、買いのチャンスだ(=押し目買い)。
- レートが上昇中の200日移動平均線を上抜け後に、再び移動平均線方向に下落するが、下抜けせずに上昇に転じた場合、買いのシグナルだ(=押し目買い)_。
- レートが下落する200日移動平均線を下抜けして急激に下落した場合(=移動平均線からの乖離)、移動平均線に向かって再び上昇する可能性があり、この短期的な上昇(=乖離からの戻り)を狙って買いで仕掛けることが可能。
- 200日移動平均線が上昇後に横ばい・下落した場合、レートが移動平均線を下抜けた場合、売りシグナルとなる(=相場転換)。
- 200日移動平均線が下落中に、レートが移動平均線を上抜けた場合、売りのチャンスと考えられる(=戻り売り)。
- レートが下落中の200日移動平均線を下回った後、移動平均線に向かって上昇するが、上抜けに失敗し、再び下落した場合、売りのシグナルである(=戻り売り)。
- レートが200日移動平均線を超えて急激に上昇した場合(=移動平均線からの乖離)、移動平均線に向かって再び下落する可能性があり、この短期的な下落(=乖離からの戻り)を狙って売りで仕掛けることが可能。
ご覧の通り、以下の図とぴったり合致します。
そして、グランビルの法則に関する解説は、原書『Granville’s New Strategy of Daily Stock Market Timing for Maximum Profit』の中でここだけです(あとは具体例が一つあるだけ)。
Joseph E.Granville(グランビル)の最大の功績は『グランビルの法則』ではない
日本国内で『グランビルの法則』と呼ばれる概念ですが、Joseph E.Granville(グランビル)が著した『Granville’s New Strategy of Daily Stock Market Timing for Maximum Profit』の中でわずか数ページしか記されていません。
しかもタイトルは『The 200-Day Moving Average Price Line Analysis』(200日移動平均線を活用した価格ライン分析)です。
その部分が、日本国内でいつの間にか『グランビルの法則』と名付けられ、一人歩きをしているのです。
…なんとなくゾッとしませんか?
ところで、Joseph E.Granville(グランビル)の最大の功績は『グランビルの法則』なんかではありません。On-balance volume(OBV=オン・バランス・ボリューム)と呼ばれるテクニカル指標を開発したことです。
OBVは株式トレードで活用されるツールです。トレンド系の出来高指標として短期売買における株価トレンドや売買タイミングを計るためのテクニカル指標として広く知られています。FXトレーダーには馴染みの薄いテクニカルツールですね。
先に紹介した『Granville’s New Strategy of Daily Stock Market Timing for Maximum Profit』の中でも、多くの紙面がOn-balance volumeの解説に当てられているのです。
『グランビルの法則』を偉そうに語るトレーダーや高慢ちきなアナリストに注意!
『グランビルの法則』が、もてはやされ、ありがたがられているのは日本だけ…。まさに井の中の蛙大海を知らず、ですね。
『グランビルの法則』を否定するわけではありませんが、何でもかんでも、
「グランビルの法則がー…」
「グランビルの法則の第2ルールがー…」
とか知ったかで言わないほうが良いかもしれませんね。
”法則”と名付けたことはちょっと罪ですね。”法則”だから、その傾向が高いと勘違いしてしまいがちです。グラビル本人は”200日移動平均線を活用した価格ライン分析”と呼んでいます。法則ではなく分析なのですね。
そもそも『グランビルの法則』は、移動平均線ベースの押し目買いや戻り売り、そして移動平均線からの乖離&収束など、古くからあるロジックに過ぎません。しかも、株価を予測するための概念であり、ベースは日足です。FXの長期売買ならまだしも、短期売買で優位性があるかと問われれば、はななだ疑問です。