ポンドの瞬間暴落(Flash crash)の犯人は日本人か?
前回の記事でポンドの大暴落を取り上げました。
Flash crash(瞬間暴落)の原因は定かではありませんが、一部では「日本人ディーラー」が犯人であるとの説が流れているのをご存知でしょうか。
7日に起きたポンド相場の急落、日本犯人説が急浮上
7日にGDP/USD(ポンド/ドル相場)が一時、1985年3月以来、実に31年来の最安値の水準まで急落を起こしたのは、アジアのディーラーが誤注文を行った可能性が強いことが明らかとなった。
市場関係者によると、7日に起きたポンド急落の最初の原因を作ったのは、東京市場でいわゆる「Fat Finger」(指が太いと間違ったキーを押してしまうことがあるためキーの押し間違いによる誤注文をファットフィンガーと呼んでいる)と呼ばれている誤注文が入ってきたことによるものと見られており、この誤注文により相場が急落したことを受けて、コンピューターアルゴリズムによる自動取引システムが一斉に、ファットフィンガーに追随する形でポンド売りの注文を入れたことが、ポンド相場を下落幅を更に一層、激しいものにした可能性が指摘されている。
ファットフィンガーによる誤注文は、他の市場に比べて日本で特に多いのが特徴ともなっており、取引関係者の間では、誤注文といえば日本を連想する向きも広がっている。
市場では、Brexit(イギリスのEU離脱決定)の影響により、ポンド安の状況が続いていたこともあり、7日に起きたポンド相場の急落は、「いよいよポンドが崩壊を起こした」とする見方を誘った結果、イギリス国内企業の株価に対する売り圧力ともなって表れていた。
イギリス当局は、7日に起きたポンド相場の急落は、金融制度安定に対する脅威と受け止め、既にBIS(国際決済銀行)に対して調査を申請した模様ともなる。
引用:business newsline
誰かの誤注文にアルゴリズムが誘発されて一斉に「売り注文」が入ったため、瞬間暴落(Flash crash)が発生したとの見解です。さっそく犯人探しに躍起になっているようですが、はたして本当の原因はつかめるのでしょうか?
為替の歴史に残る大暴落は「2010年5月7日未明」
ところでFlash crash(瞬間暴落)というワードを生み出すことになった歴史に残る大暴落をご存知ですか?それがは2010年5月7日に発生したNYダウの下落です。この時はなんとー998ドル(9%超)の大暴落が起きています。当時のニュースがこちら。
米国株:急落、ダウは一時約1000ドル安-誤発注の声も
米株式相場は急落。過去1年で最 大の値下がりだった。欧州債務危機が世界的な景気回復の足を引っ 張るとの懸念が背景。午後の取引で相場が一時暴落、時価総額1兆 ドル以上が吹き飛んだ。ダウ工業株30種平均は一時約1000ドル安 を記録。下落率では1987年10月19日のブラックマンデー以来最 大となった。ダウ平均はその後下げ幅を縮小した。
(中略)
NYSEユーロネクスト広報担当者、リッチ・アダモニス氏が 述べたところによると、午後の取引で相場が急落した際には「多数の誤発注」があった。
引用:ブルームバーグ
そのときの動画が(NYダウチャート)こちら。
動画の5分過ぎくらいからどんどん下げていく様子がわかります。7分過ぎにはその下げ幅が半端ないほど大きくなる。市場関係者が青ざめた瞬間です。
為替相場もダウ暴落の衝撃をモロに食らいます。それがこちらの動画。このときは本当にすごかったです。
95円の上値が重く伸び悩んでいたUSDJPY(ドル円)相場がジリジリと下げ始め、いやなムードが漂っていました。そして5月7日3時40分に運命の瞬間を迎えます。上の動画では0分50秒あたりから。
ドル円は一時88円前半をつけるほどの大暴落(約8円の下落)を起こしたのです。FX市場ではトレーダーの阿鼻叫喚がコダマし、数え切れないほどの退場者を出しました。このときはドルの暴落だけでなく、クロス円が軒並み大暴落しています。
この時は、million(ミリオン)とbillion(ビリオン)を誤ってディーラーが入力したことによってNYダウが下落したらしいというウワサが流れました。つまり暴落の原因は「誤発注」らしいということです。
犯人はイギリスの先物トレーダー(逮捕)
「誤発注」とされていた大暴落が忘れ去られようとしていた5年後の2015年4月22日、1人のイギリス先物トレーダーが瞬間暴落(Flash crash)の黒幕として逮捕されました。
「あの」大暴落の黒幕が逮捕される
2010年5月6日、日本では連休明けで投資家達が「さあ、取引を再開するか」と気を引き締めていた日。この日、NY株式市場でダウ工業平均が一瞬で約1,000ドルも暴落するという大事件が起こった。しかしこの時は真の原因が分からないまま、市場関係者も「誤発注があったのではないか」という推測だけ述べるに留まり、この事件はやがて忘れられていった。
(中略)
しかしそれから5年を経た今日になり、この暴落の黒幕だった人物がついに逮捕される。逮捕されたのはナビンダー・シン・サラオという36歳のイギリス人トレーダーだった。
では一体どのようなメカニズムで、トレーダーの行為が暴落を引き起こしたのか?サラオ容疑者は、いわゆる「見せ玉」行為を行うことで暴落を起こしたというのだ。見せ玉行為とは株価操縦を狙って、場中に約定させる意思のない大量の買いや売り注文を出す行為を指す。その時出される注文を見せ玉と呼ぶ。こういった行為はどの株式市場でも原則禁止となっているが、完全には取り締まれていない。
サラオ容疑者は暴落の日以前から見せ玉行為を行っており、累計で日本円で数十億円もの利益を得ていたという。そして5月6日に行った見せ玉行為によって、ダウ工業平均が1,000ドルも暴落する事態が起こったのだ。
引用:iFOREX
逮捕までに5年も要した点が解せませんが、とりあえずこの事件はたったひとりのトレーダーによって引き起こされたこととされて幕を引かれたのです。
今回のポンド大暴落も、誤発注なのか、それとも誰かが意図して引き起こした事件なのか、今後の捜査の進展が気になるところです。