20億円の被害を出したファンド事件、いまだ未解決のまま…
タレントの塩谷瞬も3000万円の被害にあったとして話題になった「早雲キャピタルファンド事件」。
- 元エリート証券マンの失墜。なぜ彼は想定被害額20億円とされる事件を起こしたのか?
「早雲キャピタルファンド」は月利1.5%を掲げ、20億円もの出資金を集めた「私募ファンド」(プライベートファンド)です。
「私募ファンド」とは50名未満の投資家から資金を集めて運用する小さなファンドのことです。金融機関などが募集する「公募ファンド」に比べて運用の制限がほとんどなく、自由な運用形態が可能となっているファンドです。
月利1.5%を掲げてスタートした「早雲キャピタルファンド」ですが、2017年に配当が停止。複数の投資家から損害賠償訴訟を起こされ、最終的に賠償金1800万円を支払う判決がでています。前後して金融庁から業務改善命令(2016年)、その後業務廃止命令(2018年)を受けます。
現時点で刑事事件にまで至っていませんが、ファンド運営会社「匠マネジメント」代表の逮捕は間近であるとのうわさが広がっています。
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杜撰なファンド運営に誰もが驚いた
裁判を通じてファンド運営の実態が明らかになるにつれ、その「杜撰」な運営に誰もが驚くことになります。当初は「日経225オプション取引」をメインとして運営していて、目標利回りも達成していた「早雲キャピタルファンド」でしたが、東日本大震災により巨額の損失を出してしまいます。
震災での損失を境に、「日経225オプション取引」から「ブラジルレアル建て債権」にほぼ全額を突っ込むという「賭け」に出ます。ところが、その「賭け」が裏目に出ることに。レアルの暴落が止まらず配当の遅延、そして停止。
さらに「私募ファンド」だったにもかかわらず、法の目をかいくぐって50名を超える出資者を集めていたことから金融商品取引法にも抵触することになり、行政処分も受けてしまいます。
とにかく踏んだり蹴ったりの酷い「私募ファンド」だったわけです。
ファンド代表は「超エリート金融マン」だった
私募ファンドにもかかわらず20億円もの資金を集めることができた理由ですが、「匠マネジメント」代表であるS氏の輝かしい経歴も大きく影響したと思われます。
大和証券で飛ぶ鳥を落とす勢いでセールスを上げていたS氏は、40歳という若さで立川支店長に就任します。その後は阿倍野支店や自由が丘支店の支店長を歴任し、不動の実績を築き上げてきました。まさに金融界のエリートです。
その後独立して「匠マネジメント」を立ち上げ、私募ファンド「早雲キャピタル」をスタートさせるわけです。
しかし、「早雲キャピタル」の実態は、先に挙げたとおり杜撰(ずさん)のひとことです。
相次ぐ「私募ファンド」トラブル
私募ファンドですから、その運用体制などについては運用者による裁量の自由度が高くハイリスク・ハイリターンであることが多いです。
高利回りをうたう私募ファンドが配当の遅延・停止を引き起こしたり、返金に応じないなどのトラブルも絶えません。法の制約もゆるいため、ファンドへの勧誘方法も雑であり、口約束で元本保証をするなどして後々揉めることも…
私募ファンドはそもそも、ある程度の投資経験のある人々を対象にした金融商品です。そのことを知らずに知人からの紹介で出資する人も少なくありません。運用会社の信用力の見極め、ファンドの取引内容を十分に理解できないならば、私募ファンドに投資するべきではありません。より慎重な判断が求められます。
「私募ファンド」は他人任せの投資です。投資先を自分で選択するという投資における最重要課題を放棄しているわけです。それで「ダマサれた!」「老後の資金がなくなった!」「お金を返せ!」などとわめいてもある意味自業自得です。
投資は、自らが投資先を選択し決断する必要があります。目標利回りを想定し、対するリスクを計算して把握し、自身にとって最適なポートフォリオを組むこと。その過程を怠った結果が、「投資詐欺被害者」を生むのです。
あなたは「ギャンブル」がしたいのですか?それとも「投資」がしたいのですか?