二択ゲームにおいて勝率80%は可能なのか?
ハイローバイナリーのシステムを提供するアルケミーシステムですが、その勝率は平均80%であるそうです。
宣伝サイトでは80%勝率というフレーズが何度も横田裕行氏の口頭から発せられています。言うまでもなく、平均80%の勝率というフレーズは、断定的判断の提供に当たる可能性が大きいため、購入者は「平均80%勝率」虚偽だった場合に、消費者契約法4条1項2号に基いて契約取り消しが可能です。消費者契約法4条1項2号では断定的判断を提供したうえで勧誘し消費者が誤認をした場合、その契約は取り消すことができるとしています。
それにしてもHigh&Lowの二択において勝率80%というのは本当にあり得るのでしょうか?二つのサイコロを使った半丁博打は、偶数(丁)が出るか奇数(半)が出るか、つまり二択に賭ける博打です。統計上は大数の法則により偶数と奇数の出目はそれぞれ50%に収束します。つまりゲームを続ければ続けるほど半丁それぞれの目が出る確率は50%に近づくわけです。
しかしこのゲームには参加料がかかります。いわゆるテラ銭と呼ばれるものです。このテラ銭が半丁博打の期待値をマイナスにしているのですね。この辺りのお話は以前の記事にも書きました。
バイナリーオプションの基本ルールも、昔からある半丁博打と何ら変わりありません。テラ銭を取られたうえで二択に賭けるゲームです。ちなみにバイナリーオプションにおけるテラ銭は、ペイアウト率という名目で間接的に取られています。
テラ銭の存によって期待値がマイナスである以上、二択ゲームの勝ち越しが困難になります。ゲームを続ければ続けるほど、テラ銭の存在によってあなたのお金はどんどん減っていきます。
勝ち越すためには、50%という二択の確率をなんとかして55%60%へと引き上げるための何らかの優位性(エッジ)が求められることになります。実際これまでに発売されてきたバイナリーオプション商材は、勝率の高さをセールスポイントにすることが多かったですね。
アルケミーシステムの平均勝率80%を考察する
横田裕行氏のアルケミーシステムは、これまでになく非常に高い勝率=平均勝率80%、を謳っています。80%の勝率とは、10回賭けて平均8回勝つということです。信じがたいです。
ハイローバイナリーは、一定時間後の「その瞬間」のレートを予測するゲームです。1分後、5分後、10分後、1時間後のレートが、現在のレートより上なのか下なのか?を当てるゲームですね。
ポイントは、一定時間後の「その一瞬」のレートを予測するという点です。例えば、ドル円が今現在100円だっとして、1分後に101円なのか、99円なのかを予測するわけですね。仮にHigh(つまり1分後に100円より高い)に賭けたとします。59秒までは102円(勝てるかも!)だっとしても、60秒後には99円(負けたー)になっている可能性もある、それが相場です。
もしかすると、61秒後にはまた101円に戻すかもしれません。61秒後であれば「勝ち」だったわけです。つまり、バイナリーオプションとは、相場のノイズを予測するゲームなのです。
ティックチャートをご覧になったことがありますか?レートが激しく小刻みに上下動しながらレートを形成しているのがよく分かるチャートです。この小刻みな上下動が相場のノイズです。瞬間瞬間の売り買いが描く小さな波です。バイナリーオプションは、この波の上下動を予測するという、非常に困難なゲームなのです。このことは1分後だけでなく、5分後でも10分後でも1時間後でも同じです。
はたして、このノイズを80%もの高確率で当てることなど、人間にできるのでしょうか?もしできると断言する人がいるのならば、相場を舐めているとしか思えません。
「1時間後の相場を予測することはFXでも同じでは?」と考える人は浅はかです。FXは、1時間後に決済しなければいけないというルールは存在しません。仮に1時間後にレートが逆方向に行っていたとしても、相場が戻るまで待つことも可能です。そもそもそこまで行く前になんらかの対処をすることができます。
バイナリーオプションを最大限に難しくしているのは、決済タイミングが予め決められている点なのです。1分後、5分後、10分後、1時間後、選ぶのは自由ですが、一度選べば、その決済タイミングは動かせません。
誰がどう見ても上昇トレンドにあるから、10分後は毎違いなくHighだろう!と思っても、その10分後の決済タイミングでたまたま下げる可能性があります。長期的に見れば上昇しているのに、決済タイミングの前後だけ下げてしまった、ということは頻繁にあります。
もいちど述べます。バイナリーオプションを最大限に難しくしているのは、決済タイミングが予め決められている点なのです。
どれほどトレードスキルがある人でも、決済タイミングを決められてしまうと、勝つことは困難になります。そもそもトレードスキルがある人は、バイナリーオプションなど絶対にやりません。FXで十分に稼げるからです。
さて、アルケミーシステムの勝率80%がどれほど不可思議であるか、これでご理解いただけたと思います。一定時間後の相場のノイズを8割の確率で当てることなど、神様でもない限り不可能です。
意図的なレート操作など、お手のもの
神様でもない限り不可能と述べましたが、人間にもできなくはありません。レートを意図的に操作できる人間であれば可能です。その瞬間(1分後、5分後…)のレートを意図的に動かし、その1秒後にまた元に戻せばよいのです。つまり胴元(ブローカー)ならば自由にレートを操作可能だということを意味します。
バイナリーオプションでは、投資家の勝ち=ブローカーの負け、となります。勝つ投資家が増えれば増えるほど、ブローカー側の利益は少なくなります。ブローカーとしては、お客をそこそこ勝たせつつ、トータルではブローカー側が少し多めに勝っているというバランスが理想です。
バイナリーオプションの収益構造については以下の記事をお読み下さい。
当然ですが、ブローカーは常にハイ・ローの賭けの割合をチェックしています。そしてどちらを勝たせれば、バランスが取れるか?を瞬時に算出することができます。基本的には掛け金が少ない方にペイアウトさせれば、ブローカーは損をしません。そしてレート操作は造作も無いのです。この辺は金融工学者やシステムエンジニアがアルゴリズムを組んで、自動的にブローカーの利益が漸増するようなシステムにしていると考えられます。
意図的なレート操作は、バイナリーオプションと非常に親和性が高いといえます。お客に勝ったり負けたりを繰り返させながら、できるだけ長く遊んでお金を落としてもらうことが、ブローカーの真の狙いです。
ご覧のとおり、これはゲーム(娯楽)なのです。
自動売買でないかぎり、心が折れる
持論ですが、勝率を売り物にするツール・手法は、自動売買でないかぎり運用は難しいと考えています。アルケミーシステムなどのように、スマホやPCをポチポチ押しながら手動で売買をおこなうスタイルで、なおかつその都度勝ち負けに一喜一憂するようなトレードでは、仮に高勝率であったとしても、強いマインドが保てません。連敗したときに不信感が増大し、継続運用が困難になります。
バイナリーオプションはギャンブルなので、そもそもお金が増えるかどうかは、運です。その運を楽しむくらいにしておくことが無難です。カジノのゲームと同じなのです。カジノで本気でお金を増やそうとしている人など、ほとんどいません。皆、楽しむことが目的です。
バイナリーオプションは、身近で楽しめる娯楽であり、ギャンブルだというこうです。
勝率80%などと言われると、お金が増やせると勘違いし欲深くなります。そこが落とし穴であることを肝に命じておくべきです。