『色彩マスターFX』検証とレビュー
テクニカル分析の誤謬(ごびゅう)
FXといえばテクニカル、テクニカルといえばFX。FX業界ではいつの時代もテクニカル分析がもてはやされます。FXトレーダーならば誰しも一度はテクニカル分析の可能性に目をか輝かせ、そして落胆します。
テクニカル分析は、過去データ(値動き)から規則性を見出し、将来の値動きを予測する手法です。しかし、大半のテクニカル分析は全く当てになりません。なぜなら過去データを元に見出した規則性が、ほとんど未来に通用しないからです。そもそも相場が完全に(100%)ランダムならば、過去データを元にしたテクニカル分析など何に役にも立ちません。
テクニカル分析がはた目に有効に見える理由は、「当たることもあるから」です。100%外れるわけではなく確率で言えば50%前後で当たる可能性があるため、一見テクニカル分析が有効に作用したように見えるわけです。とてもやっかいですね。しかし、これは相場がランダム性を有するのであれば、当然のことです。当たることもあれば外れることもあるわけです。
FX商材において”テクニカル一辺倒”のツールやノウハウも同様です。当たることもあれば、外れることもある。しかしFX商材では、売るためにバックテスト結果を良く見せる必要があります。そのため過剰なカーブフィッティングが行われます。最終的に、実践では全く使えないゴミのような商材が完成することになります。
商品としての完成度を高めるために過剰なカーブフィッティングがおこなわれ、その結果実践では使えないストラテジーになってしまう…よくあるパターンです。
わずかな”規則性”は存在する
テクニカル分析が全く無意味だとは思いません。つまり相場が100%ランダムであるとは考えていないということです。あらゆる相場に言えることですが、大半の場面においてチャートはランダムウォークですが、そこにはわずかながら規則性が存在します。
特定の時間帯や特定の動きに対してわずかな規則性が存在し、その規則性を見定めることでトレードに優位性が出現するわけです。しかしその規則性は流動的であり、テクニカル一辺倒では到底捉えきれません。当然ファンダメンタルズ分析を交えた裁量判断が不可欠となります。
過去データに基づいたテクニカル一辺倒では決して得ることのできない優位性を、裁量トレードによって手にすることができると考えています。
テクニカルに傾倒した『色彩マスターFX』をレビュー
今回レビューする『色彩マスターFX』は、テクニカルに傾倒したFX商材です。はたしてテクニカル分析の誤謬(ごびゅう)から抜け出せているのでしょうか?
『色彩マスターFX』でできること
一昔前にはやった”色合わせ”ツールだ
まずは『色彩マスターFX』のツールをご覧ください。
おそらくVQ(VOLATILITY QUALITY)的なテクニカルの短期・長期、そして平均足の短期・長期、さらにATR的な連続したドット、これらの色が同色かつ同方向へそろったときに仕掛けるというストラテジーに見受けられます。
この手の色合わせツールは、一昔前にはやりましたね。複数のテクニカルの同調、そしてMTF(マルチタイムフレーム)で長期足への同調タイミングを見計らって短期足で仕掛けるというスタイルです。
裁量は入らないようですね。ほぼ無裁量です。
トレード時間は3枠(各市場のオープニングを狙う)
『色彩マスターFX』ではトレード時間を3つの時間帯に絞っています。
- 8時〜11時
- 16時〜19時
- 22時から翌2時
東京市場、ロンドン市場、NY市場のオープニング時間が狙い目ということになります。各市場オープンと同時にボラティリティが高まります。そのタイミングでトレンド方向に仕掛けるというストラテジーでしょう。
『色彩マスターFX』の欠点
まず『色彩マスターFX』のデメリットについて解説します。以下の欠点が許容できない人は買うべきではないでしょう。
時代遅れを感じさせる”色合わせストラテジー”
『色彩マスターFX』の主要ロジックは、一昔前に流行った「色合わせテクニカル」です。2000年前半頃に、海外フォーラムで多く見かけた記憶があります。2018年に改めて「色合わせツール」が登場したことに、逆に新鮮味を感じます。
しかしご存知のように「色合わせツール」はもはや化石です。現代のトレードは、通貨間の強弱をチェックしたりトラップトレードで効率的な仕掛けを行ったり、プライスアクションに注目したりと、かなり進化し奥行きが深くなっています。
単なるテクニカルの「色合わせ」だけでは、もはやトレードの優位性が確保できるとは誰も考えていないでしょう。
単純な数学的処理をしたテクニカル分析を”AI”と呼ぶことに違和感しかない
『色彩マスターFX』の販売ページにはやたらと”AI”という文字が登場します。AIとはartificial intelligenceの略で、つまり人工知能のことです。『色彩マスターFX』は超高性能AIトレードシステムらしいですが、まさかインジケーターごときに人工知能が入っているとは到底思えません。テクニカル分析は、たんに膨大な過去データを集計し数学的処理をして傾向を導き出したものにすぎません。そこに予測能力など存在しません。トレーダーが勝手にバイアスをかけているだけです。
なんでもかんでもAIというコピーをつけるのは、もう止めにしませんか?
- 時代遅れを感じさせる”色合わせストラテジー”
- 単純な数学的処理をしたテクニカル分析を”AI”と呼ぶことに違和感しかない
『色彩マスターFX』総合評価
【結論】テクニカル分析は単なる統計にすぎず、そこにトレーダーの”バイアス”が入ることで優位性があるかのような錯覚をしてしまうやっかいな代物だ
より高度で奥の深い分析が主流になりつつある時代においてテクニカル分析のみ(一辺倒)というストラテジーは”過去の遺物”になりつつある
正直なところ、『色彩マスターFX』は10年前のツールという印象が拭えません。複数のテクニカルの色合わせで仕掛けるというスタイルはもはや過去の遺物です。何度も述べますが、テクニカル分析は、膨大な過去データを集計し数学的処理をして偏向を導き出したものにすぎません。相場の大半がランダムである以上、過去の傾向が未来にも通用すると考えることのほうが危険です。
最近の海外フォーラムやFX商材をみると、一昔前に比べて分析手法がかなり高度化しています。これは単なるテクニカルでは勝てないということの裏付けでもあります。
わずかな優位性を求めて分析手法が複雑化・高度化しているのが、ここ数年の相場なのです。そしてそのわずかな優位性ですら常に流動的です。昨日まで有効だった手法が今日は通用しない…そんなことが日常茶飯事です。
初心者はテクニカル一辺倒からの脱却こそが、中級トレーダーへの道であることを肝に銘じておくべきです。
- 時代遅れを感じさせる”色合わせストラテジー”
- 単純な数学的処理をしたテクニカル分析を”AI”と呼ぶことに違和感しかない
『色彩マスターFX』を購入するべき人
- 一昔前の”色合わせテクニカル”に興味がある人
『色彩マスターFX』を購入してはいけない人
- テクニカル一辺倒からの脱却を目指している人
- 相場はランダムウォークであると考えている人