FXのロスカットに関する貴重な判例

   2015/01/14

ロスカット裁判の前例があった

先日の記事で、松井証券のロスカット遅延による損害賠償訴訟を取り上げました。

>>松井証券に賠償命令~18秒の遅延は債務不履行~
>>松井証券社長、敗訴のコメントが意味するもの

実は、この判決(松井証券の敗訴)の前にも、類似の訴訟があったことがわかりました。アトランティック・ファイナンシャル・コーポレーションに対する、ロスカット遅延訴訟です。

聞いたことのない証券会社ですが、現在はフィリップ証券に事業譲渡し会社そのものは無くなっています。(2009年11月5日、フィリップ証券による買収)

裁判の結果は?

先に、結論から述べますが、この裁判(アトランティック・ファイナンシャル・コーポレーション遅延訴訟)は、原告の勝訴で終わりました。

つまり、ロスカット遅延によって発生した想定外の損失に対する賠償が、裁判によって認められたということです。

ロスカットが遅延したことは証券会社側の債務不履行であり、正しくロスカットが発動した場合の損金と、遅延によって生じた損金との差額分を、賠償するよう命じました。(東京地方裁判所平成20年7月16日判決)

松井証券裁判のケースと同様ですね。おそらく、この判例(アトランティック・ファイナンシャル・コーポレーション遅延訴訟)が、松井証券の裁判に影響を与えた可能性がありそうです。

事件の概要

では、今後のために事件の概要を振り返っておきましょう。

原告の強制ロスカットは、平成19年7月27日午前2時28分に発生しました。当時、原告は、36億3018万2000円の買建玉を保持していました。

その時の証拠金は8151万5940円、必要証拠金額は3630万1820円、そして預託証拠金額(純資産額)は907万5447円でした。

その後、為替レート変動により原告の評価損が7335万8000円になったため、有効証拠金額が815万7940円となり、預託証拠金額(907万円)を大きく割り込んでしまいました。(証拠金維持率に関するデータは不明です)

ところがこの時、証券会社のシステムにアクセスが急増したため、原告の建玉が大きく遅延してロスカットされてしまいました。その結果、ロスカットどころか、原告の証拠金は全て吹き飛び、さらに1000万円を超える不足金が発生してしまったのです。

おそらく、原告はパニックになったでしょうね。

本来、機能するはずのロスカットが発動されず、あっという間に1000万円以上の借金(不足金)を抱えてしまったわけです。

ロスカット機能が正常に発動していれば、レート変動があったとしても、原告の口座には900万円程度残るはずです。それが、1000万円の借金となったわけです。

損失額が預託証拠金を超える危険性

今回のケースも、レート変動による損失額が預託証拠金を大きく超えたケースですね。

原因は、アクセス集中による約定遅延(スリッページ)です。基本的に、どの証券会社も、強制ロスカットは絶対ではない、と規約に記載しています。つまり、強制ロスカット発動での損失額を保証しない、ということです。

最悪の場合、損失額が預託証拠金を上回るケースがあることを明言しています。その場合は、ユーザー側の借金になり、追証が発生します。

今回の裁判では、原告の追証が1000万円になってしまったケースです。この事態に納得のいかなかった原告が、証券会社に対して損害賠償訴訟を起こしたわけです。

ロスカットを正常に発動させなかったのは、業者側の債務不履行である

裁判の争点は複数ありました。

  • 証券会社はロスカット・ルールによる決済の義務を負うのか?
  • 証券会社はロスカット時の為替レートで反対売買(カバー取引)を成立させる義務はあるのか?
  • 決済遅延による顧客の損害は合法か?
  • 免責約款の説明は十分か?

判決は、証券会社の全面敗訴です。ロスカット・ルールの適切な発動は証券会社の義務であり、システムも様々な事態に対応出来るだけのものを用意するべきであるから、ロスカット・ルールが正しく発動されていれば確保されていたであろう証拠金の倍賞を証券会社に命じました。(東京地裁平成20年7月16日判決)

つまり、証券会社側の債務不履行責任を認めたわけです。裁判の詳細は、以下のサイトをご覧ください。

>>国民生活センター(インターネットによるFX取引のロスカット義務)

ちなみに、この判決は金融庁によるロスカットルールが義務付けられる前の出来事です。この判決が出た年(2009年)の8月1日に内閣府令が改定されました。同じタイミングでレバレッジ規制(25倍制限・経過措置あり)も義務付けられましたね。

システム遅延によるスリッページ問題は今後も続く

約定率100%でない限り、スリッページは必ず発生します。特に急激なレート変動等によるアクセス集中でサーバーに負荷がかかった場合は、大きくスリッページする可能性が高いです。

このときに、想定外のレートで約定されてしまい、損失を拡大することは、比較的よくあることです。

正しいロスカット(損切り)発動が証券会社の義務であったとしても、全ての証券会社が約定率100%を実現することは難しいように感じます。スリッページが嫌ならば、約定率100%の証券会社を利用するしかありません。

また、無謀なレバレッジをかけないということも大切です。私達投資家が自分で身を守るためには、適切な資金管理が重要になってきますね。

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